もしかすると以前も書いたように思うけど
こみちが好きで乗っていたスズキのジムニー。
現行車の人気に驚いてもいた。
本当に愛らしい車だけれど、完璧な車ではなかった。
燃費の悪さ。軽自動車とは思えない小回りの悪さ。乗り心地も長距離ドライブも苦手。
もう一つの趣味だったバイクも、最後まで乗り続けたのはシングルエンジンのセロー。
トコトコという表現が似合うのんびりと走るのが得意なバイクだ。
こみちにとって、若い頃の趣味はツーリングで、学生時代はスケッチブックをバイクの後部席に縛り付け、旅先を巡りながらスケッチするのが楽しかった。
青森、新潟、仙台と、目をつぶった時に今でも覚えている景色が全国各地にある。
しかし、茨城県の筑波山にはなぜか縁がなかった。
正確に言えば、若い頃には何度も訪れている。
学生時代の仲間たちと「走りに行こう」と話した時に候補地としてあがっていたからだ。
ところが、ジムニーに乗っていた10数年の間、なぜか筑波山に近づくことができなかった。
いつだったか、「筑波山にでも行こうか?」と、社会人になっていたある休日に思い立ったことがある。
国道6号を北に進み、筑波大近くの大きな通りを過ぎれば目的地が目の前に見えて来る。
しかし、茨城県内に入って急に聞いたこともないような「爆音」が車内に響いた。
キーと鳴り続ける金属音は、エンジンか前輪の辺りから発生しているようだった。
このまま走り続けたら、ボンネットが開いてエンジンが爆発でもしてしまうという感覚さえあった。
もう既に筑波山は見えている。
でも故障した車で帰宅できるのか心配になっていて、路肩に止めて車外に出た後、車体を外から調べてみることにした。
特別変わった点はない。
エンジンルームから煙も出ていないし、破損している部品も異常に熱くなった様子も見られない。
「とりあえず帰ろう」
Uターンをして、筑波山から遠ざかって進み始めた。
家まで壊れずに持って欲しいと思いながら。
しかししばらくして気がつく。
そうさっきの爆音はどこに行ったのか。
全く音が鳴らないのだ。
いつもと同じ。ジムニーはトコトコと走れていた。
そんな不思議なことはあって、特に意識はしなかったけれど、ジムニーでは筑波山に行くことが二度となかった。
それは一昨日のこと
ジムニーに乗っていた時も、まだ交際中の関係だった妻が助手席にいた。
そして、一昨日、妻からLINEで「筑波山に行かないか?」と誘われた。
あの出来事を忘れた訳ではない。でも、偶然だろうと思う気持ちもあった。
その日、妻が愛車で帰宅した時、「車が壊れた」と言って来た。
サイドミラーが折り畳んだまま開かないというのだ。
「いつ?」
会社から帰ろうと思って、動かしたら。
朝はちゃんと動いていたらしい。
何より、「筑波山に行きたいなぁ」と思っていたそうだ。
結局、昨日は休日だったけれど、ディーラーに修理をしてもらうためにかなりの時間を使った。
しかも部品が無くて、後日の修理が決まり、予約だけして休みが終わったという感じだ。
偶然が重なることなど、決して珍しいものではない。
今回だってたまたま二回とも車に異変が起こっただけで、しかもその内容は別だし、そこに特別な意味を結びつけることの方が変だ。
しかし、事実としては、妻と一緒に筑波山に行くことを決めると、車が故障してしまう。
「嫌われているのかなぁ? まだ近づいては行けないのかも」
いい意味として考えて、タイミング的に合っていないと解釈し、時期が来れば行ける時が来るだろうと話し合った。
「カフカの城みたいだね」
そんなことを言う妻に、「前も言ってなかった?」と返した。
今回は、近づくことができない場所があるという話でした。