改めて考える「勝つ」とは何か?

 「勝つ」の定義

「勝つ」とは、競技などで相手に勝利すること。

つまり、ある種ルールあってのものなので、ルールに違反しないことが最低条件になる。

例えば、ある陸上選手と走りで競い合っていた時に、どうしても勝ちたい選手が方向転換してどこかに走り出し、「相手が追って来れないから自分の勝ちだ!」と言い出したとしよう。

本来なら、そんな滑稽な話に解釈もないのだが、「世の中」では意外と多い問題だ。

真っ当に「ゴールに到着しないと勝ちにはならない」と言ったとしても、それで気づき「しまった!」と後悔する人はむしろ少ない。

中には「誰が決めた?」と言い出して、「ゴール」の設定から疑い出すだろう。

世の中の大人、100人中100人がルールを守って暮らせたら、本当は社会の公的サービスをうんと減らすことができる。

むしろ、さらに良くなるために無駄なく予算を使えるだろう。

でも一定数は、ルールを維持するために消費され、残りが本来の目的に使われる。

つまり「勝つ」と言っても、それを実現させるにはいろんな準備や課題が含まれていて、「ルールに従って行うこと」が困難な場合もある。

個々の能力を向上させたとしても、その社会基盤が不安定なら、当然ながら「勝者」を決めることもできない。

なぜなら、ルールそのものがあやふやで、双方が「勝った」と主張するからだ。

「敗者」になったとしても、そこから新たに学ぶこともできないし、場合によってはそもそもの試合が消滅してしまうこともある。

「基礎」あっての「応用」という考え方

「基礎」というのは、「簡単」という意味ではない。

「応用」ができる人で、「基礎」はできない人がするものと勘違いしてしまう。

「基礎」というのは、「勝つ」ために習得するシンプルなトレーニングだ。

つまり、「習得ポイント」が明確で、その部分だけを集中的に学んでいる。

料理で、チャーハンを炒める時にフライパンを前後に振って、ご飯を上手に返しているのを見たことがあるだろう。

テクニックという言い方もできるが、フライパンの基本的な使い方とも言える。

包丁は食材を切るために使うが、切り方にはいくつもの種類があって、作りたい料理に合わせて切り方も変える。

「切る」を包丁の使い方での「基礎」と思う人もいるけれど、包丁の使い方の基礎は様々な切り方を覚えて、いろんな料理に活かせることを理解するまでを指している。

「野菜炒め」は、初心者にも作れる料理だろう。

しかし、野菜の大きさや厚みにも、最適なサイズが存在し、それから逸脱してしまうと、見た目も食感も損なわれる。

つまり料理が下手とは、「基礎」となる基準を持っていないことで起こる。

料理本や料理サイトには、いろんなレシピが掲載されているが、基礎が分からないと「適宜」と言われても困惑するだろう。

かと言って、「基礎」を学びたいと思っても、意外とどれが基礎なのか自分では分からなくて、気づけば「応用」部分に目が行ってしまう。

なかなか成果が見られないパターンに多い失敗だ。

「基礎」が完全に身につけば、超一流にはなれなくても、「セミプロ」くらいにはなれる。

こみちは仕事場で若い人たちがどんどん成果は発揮する中で、「基礎」を繰り返して来た。

3倍とか5倍も大差をつけられていたから、「おっさんは使えない」と呆れられていただろう。

自分でも、「なぜにこんなにも不器用なのか?」と思っていた。

しかし、貫くことで段々と基礎が実になって行く。

一連の作業の中で得意とするパートができて、完全度を決める精度と効率が一変する。

どう頑張っても30分掛かる作業が25分になって、さらに20分、18分と、基礎が出来上がる度に時間が短縮されて行く。

気づけば、若い人の作業とほぼ同じくらいになっていたし、基礎ができているから、どうすればさらに時短できるのかも分かる。

では、基礎を学ぶことが難しいのかと考えると、実はそうでもない。

つまりそれを学ぶ場所が「学校」で、正しい指導を受けられれば、多くの人が基礎を習得できるだろう。

「勝つ」とは何か?

ルールを守ることができるところから考えると、「勝つ」ためには基礎が必須だ。

独自の解釈で勝ったと言い張るだけでは、本当に「勝つ」ことにはならない。

でも、基礎を学ぶことができない人も多く、でも勝ちにこだわるから、「独自の解釈」が横行する。

そのことを価値観の多様性と呼んでいるのではない。

価値観の多様性とは、基礎からどう発展させるのかという話だからだ。

応用っぽいことをして、できる風に満足するよりも、地道でも基礎を身につけてしまえばミスも減るし、身体への負担も少なくできる。

長く続けることができるし、ストレスも減らせる。

作業スピードを柔軟に変化させられると、例えば試合で競うような場面でも、その時々に応じたスピードを発揮できるので、簡単には負けない選手になれる。

ずっと勝ち続けることは、別の意味で難しいことだが、いつも負けてしまうということも同様に大きな原因があるからこそ起こっている。

それはきっと「基礎」を見直すことで改善される部分もあるはずだから、できない自分を責める前に、どんなことをどんな風に取り組んで来たのか見直してみるといいだろう。