中高年になって「マンガ」や「アイドル」にハマる理由

中高年になって変化した「思考」

厳密に言うと「中高年になった」からではなく、「平成、令和」の時代に思考が変化した。

今の中高年の世代は、こみち同様に「昭和」時代に多感な時を過ごし、人格形成のベース部分もその時に構築されただろう。

テレビで紹介されていたが、電話を切る時の擬音が「ガチャン」ではなく、「ピッ」という電子音になってしまったのも、ある意味で時代の変化を感じる一端だ。

インフラや生活様式が変化すると、我々の生活もそれに順応する形で変化する。

それこそ、昭和時代を今もなお引きずって生きていると、「時代の変化」に気づき難い傾向がある。

仕事は「真面目に」という考え方が我々の世代にあったとすると、今は「真面目だけではダメだ」という考え方が広がる。

これから就活したいと思った時に、我々の意識の中には昭和時代の常識が今もなお残っていないだろうか。

例えば「終身雇用」という制度が一般的だった昭和時代、新卒で決める「会社」が老いるまでの収入源だった。

その会社のために働き、もっと言えば家族に近い存在で共に生きていくことでもある。

そんな終身雇用制度が崩壊し、今は本業の他に副業を持ち、さらに個人事業主やフリーランスとして働く人も増えた。

かつては限られた分野でしか期待できなかった働き方も、時代の変化によって様変わりしたことになる。

NHKで放送されている「72時間」で、都内のレンタル店が紹介されていた。

マンガ本が100円前後で借りられるとあって、そこを訪れる人々にインタビューする内容だ。

こみち自身は、マンガがほとんど読まないが、そこを訪れた人の話から想像すると、マンガで非日常を感じ、いるはずのない理想的な人に出会えるところに魅力があるという。

人生が一本道だとしたら、マンガを読むことでいろんな人生を体験できて、今の生活では満たされないものを補っているという。

「夢を持つ」ということは素晴らしい。

でも、大人になれば次第に世の中の現実も見えてくる。

子どもの頃に描いた夢など、叶うはずもないことを知るのかもしれない。

言い換えると、終身雇用制度が存在した時代なら、「なぜ生きるのか?」など考えなくても、会社に行って家に帰るという暮らしで生きられる。

でも今は、生きるために働き、でもそこに生き甲斐があるとも限らない。

そんな中で生き抜くためには、現実では満たされない理想的な世界観が必要だ。

映画や小説、そして漫画という存在が、現代社会でどれだけ大きいのか分かる。

「アイドル」という言葉から何を連想するのか?

ネガティブな、例えば「歌が下手」というようなイメージをアイドルに持っていたなら、是非現代のアイドルたちに注目して欲しい。

それこそ中高年になるまでこみちはアイドルにハマったことがなかった。

歌を聴く時はミュージシャンの歌だったし、演技を見る時は俳優たちだった。

お笑い芸人が高学歴化し、アイドルがバラエティー番組に出るようにもなって、それこそ「何ができる」時代から「何でもできる」時代に変化している。

実際、アイドルはカッコいいし、可愛い子が前提だ。

その上で、それぞれの個性を見つけて活躍の場を広げている。

中には容姿に定評があっても、その後、自身の魅力を引き出せずに売れなかった人も多く、逆をを言えばアイドルとしては平均的な容姿だとしても、歌唱力や演技力、バラエティーやもっといろんな分野で才能を開花させる人も多い。

人気のアイドルグループともなれば、新規メンバーを募るオーディションは数万人規模になるという。

その中から、一名とか、数名という狭き門を突破する人が、アイドルとしてデビューできる。

確か東大の合格者が、トータルで3000人とか4000人だったから、選ばれることがどれだけ凄いことなのか分かるだろう。

しかもデビューしてから、さらに厳しいレッスンを受けて、プライベートまで制限して、活躍のチャンスを掴んでいく。

そもそも論として、一般人のこみちなど、そのスタート地点にすら立つことができない。

つまり、我々にとって「夢を叶える」ということが果たせなかったとしても、それで人生が終わってしまうというものではないのだ。

なぜなら、数万人の中から選ばれた人だとしても、夢を掴めるとは限らないからだ。

それだけ厳しい条件の中で、さらにいろんなものを制限し、その結果として「夢を叶える」という可能性に賭けられる。

多くのアイドルたちが、10代の後半から20代前半で、その頃こみちが何を考えて生きていたのかを思い返したら、全く何も考えず、呑気に生きていたように思う。

結局、アイドルになるくらい容姿端麗な人は世の中にもたくさんいるだろう。

でも実際に、その世界に身を置き、ライバルたちと競い合いながら売れて行くことができるかは、全く別の次元だったりする。

時代劇と現代ドラマに出演し、さらに所属するグループでの活動を同時にこなしているトップアイドルたちは、我々一般人の想像を遥かに超える多忙さだ。

そんな凄さを、こみちは中高年になって気づいたということだ。

今の自分に何か不満があるとするなら、それはもう自業自得以外の何者でもない。

なぜなら、世間にはアイドルをして頑張る人たちがいるように、それぞれが何かを犠牲にして、夢を掴もうと頑張っているのだ。

そこまでやり切っても、叶わないことを考えると、「なんで自分だけ」という不満は出て来ない。

変わっていける自分。変わることができる環境。

それを自分で見つけることをしなければ、いつも憧れるだけで終わってしまうだろう。

正直、中高年になって気づくのは遅過ぎた。

でもまだ何かできることを探すことは見つけられる。

「アイドル」という存在を意識して、自身の人生も大きく変わった気がする。