中高年の仕事にある現実
久しぶりに仕事探しを兼ねて、近所のハローワークに足を運んでみました。
カウンター越しに、こみちの希望に合うような仕事を一緒に探してもらっていた時です。
隣りのパーティションから中高年の男性の声が聞こえてきます。
「朝8時からの仕事、サービス残業も嫌です。募集要項と実際が全然違っていました!」
そうです。
その男性は、前職で仕事を見つけて働き出したものの、自分の希望とは異なる職務に嫌悪感を抱き、すぐに退職してここに来ています。
条件を伝えて、希望に合った仕事を検索してもらっていて、こみちはすることがなくて、代わりにガッツリと聞こえる話に耳を傾けていたのでした。
理想の仕事にたどり着く条件
こみちのようにイラスト製作を第一候補とするなら、大前提として自分で描いた「イラスト」を最低でも3枚くらいは作っておきたいところでしょう。
できれば、異なるタッチで各3枚ということになります。
募集する会社によっては、「美大出身」ということよりも持ち込んだ「作品」を重視しているので、本格的に美術を学んでいなくても、イラストレーターなど絵を描く仕事に就くことはできるはずです。
つまり、採用に関しては面接官も、応募者に対して「会社内での活かし方」を見据えて話しています。
その意味では、「過去の経歴」以上に、「具体的な展開」が見通せるかが大切です。
例えば挿し絵として使われるイラストでは、「脇役感」が求められます。
パッと見た時に、そのイラストに目が行くというよりも、そこに書かれた文章をイメージできるような「雰囲気作り」に役立つことが大切です。
つまり、リアルな仕上げのイラストばかりが重要ではなく、下手ウマな砕けたイラストも有効です。
また雰囲気を2割3割ましで表現したようなイメージ優先のイラストが求められることもあるでしょう。
雑誌の紙面で言えば、油絵的な重い色調よりも、水彩画や鉛筆画を思い出させるくらい「淡い」方が好まれる印象です。
つまり、同じイラストでも、単体で評価する場合と挿し絵的に求めたい場合では描き方が異なります。
そこで、仕事でサンプル作りをする時に、全て「メイン」的な完成度の場合、面接官は仕事内容を理解しているのかを一度、疑って質問するかもしれません。
「雑誌作りで、最も大切だと感じることはなんですか?」
その中で答えて欲しいのは、「売上」や「読者の満足度」などで、イラストレーター自身の希望ではありません。
バットな答えの一つは、「(自分が)満足できるイラストを描いていきたい」というような内容でしょう。
ここから言えるのは、希望する職種に対してどこまで理解して応募しているのかが問われます。
例えば、スーパーマーケットでレジ打ちの仕事を募集していて、時間給だからとタラタラ作業していると、早く会計を済ませたい客はイライラします。
さらにその評価が定着すると、「あの店は時間が掛かる」と印象づけられ、他の店を選ぶ客も出てくるでしょう。
と言うのも、最近のレジなら、時間当たりにどれくらいの接客をこなしたのか簡単に調べられるので、一定期間が経過する頃、同期が昇給しても自分は据置きという評価に直面します。
理由は簡単で、報酬に対する仕事量が違うからです。
しかし、10円の差が生まれると、結果として何となく負い目を感じて、そこから上司のふとした振る舞いが、気になったりして、「自分が求められていない」と勝手に思ってしまうことも無いとは言えません。
ただ店側が求めているのは、しっかりと担当して欲しい仕事で成果を上げてくれる人材。
手が遅くても、いい意味で来店客に「ありがとうございました」と気持ちよく挨拶してくれたら、まだ評価も違うはずです。
なぜなら、「あの店は感じが悪い」とならないことが予想できるからです。
結局のところ、どんな仕事を始めるにも、自分が意識するのは同じで、「何をするべきか?」ということです。
この仕事は実現しないだろうと判断するのは、準備期間がどれくらいなのかに尽きます。
日ごろ本も読まない人が「作家」になろうと思っても、市場で求められるストーリーも文体も知らないのですから、いい作品が書けるはずはありません。
つまり、日本語の文章が書けることだけでは作家にはなれません。
どんな仕事だとしても、「できる」のは最低限の条件であって、そこからどれだけ積み上げられるかがポイントでしょう。
とは言え、なぜこみちのイラストが評価されないのか?
右のイラストは、Adoさんの「新世界」という曲を別の歌手が歌っているシーンを描いた下絵です。
下絵とは、最初の当たりをつける段階の作業で、最終的な完成度を予測するために仮でする色づけを指しています。
こみち自身、女性の肌質をリアルに描くのが苦手で、どちらかというと濃淡のはっきりした男性を描く方が楽です。
というのも、女性はお化粧をします。
お化粧は、微妙に変わる色調や濃淡の出来が大切で、それはつまり描く際もどこまで追えるかが問われます。
それ故に「肌質」も顔の位置で色味が激しく変化し、また繊細な違いが肝心です。
ちょうど、女性の左サイドから当たっている赤みのあるライトが、頬から回り込んで反射しています。
顔の立体感を損なわないようにしながら、当たっているライトまでを描けるかが問われます。
実際にアップにすると分かるのですが、例えば目元の凹凸感もそれほどリアルに描いている段階ではありません。
でも大雑把でもある程度方向性が合っていれば、「目元」っぽく見えないでしょうか。
ある意味、この試行錯誤段階を自分でする事で、表現の幅や描ける深さが自分なりにわかってきます。
その意味では、写真をなぞっても同じような絵を描くことができますが、それではその「写真」そっくりしか描けません。
それでは仕事にするにも、限界があります。