「介護」が大変になる理由

 「自立」とは何か?

介護業界で働いている人なら、「自立」とか「個人の尊重」という理念を耳にしているでしょう。

介護業界未経験だった頃のこみちは、「介護職って何?」という疑問からのスタートでした。

考えてみれば、人の人生は様々で、地域や文化、社会的責任も異なる中で年を重ねて老いて行きます。

その中で「介護」が必要となり、介護業界が介護保険制度に従ってサービスを提供し、その実作業を介護スタッフが担います。

つまり、「介護」には大きく2つの解釈があって、1つが「自立」などに伴う中での「介護」で、もう一つが介護業界としての「介護」になります。

在宅介護で、家族が介護すると大変になるのは、「自立」に伴う介護を行うからでしょう。

具体的に、家族同士の場合、気心知れた相手であり、甘えやすい関係でもあるので、より曖昧な関係の中で「介護」が行われます。

一方で介護業界における介護では、タイムスケジュールのような指針があって、介護スタッフはその流れの中でサービスを提供するので、いわゆる家族の介護ほど親身な存在ではありません。

少なくとも勤務時間の中でサービスを提供していて、時間外になっても帰れない業界のあるあるは、改善されるべき課題と考えられます。

その意味では、家族の介護はそこも含めての介護になるので、依存度が高い場合には、介護提供者のプライベートを奪いかねません。

何事にも「好み」というものはあり、時に「何でもいい」という選択肢でも、「いい塩梅」があるからで、本当にどうなってもいいとは思っていないでしょう。

「自立」に関しても同様で、「理想的な自分」や「暮らし」があるからこそ、そこに向けて努力を続けて来たというのが「現役時代」だったはず。

そこから行動力や判断力などの低下を機に介護を受ける立場になると、「自立」と言っても現役時代そのままを期待するのは困難でしょう。

そうなれば、この記事の振り出しに戻りますが、「介護職の仕事」も様々な暮らしの延長線上の役割で、決してできなかった理想の実現ではありません。

なぜなら、「温めたい」「ジュースを飲みたい」など、ふと思う理想はいくらでもあって、それを全て叶えることを介護と解釈すると、とてもではありませんが支援は限界を迎えます。

かと言って「我慢すること」が介護の根底なのかというとそうではなく、「現状を理解して、未来を一緒に考えること」が「自立」と言えるはずです。

言ってしまえば、介護施設の体制と望む介護にあまりにも差がある場合には、施設に改善を求めるよりも施設選びをやり直すことも視野に入れるべきでしょう。

介護スタッフの立場にすれば、事前に与えられた業務がタイムスケジュールに沿ってたくさんあって、「朝食は自分のペースでゆったりと食したい」と言われても、それに応える余裕がなければ介護現場ではどうにも叶えられないからです。

しかし、在宅での家族による介護では、それらが無制限に期待できてしまうので、相互の理解や目指すべき介護の方針がより親密に話合わなければ、段々とストレスが蓄積されて不満ばかりが膨らみます。

自分本位な人間を介護するのは大変!?

自分のことを最優先で考えるタイプの人は、一定数いるでしょう。

選択肢があったら、誰かに譲るという考えよりも、自分の好みに照らして選ぶでしょう。

しかし、そんな選択肢が何度も巡って来た時に、いつもハズレを誰かが引いてしまっていたら、その人は不満を感じます。

一方で、自分本位な人は相手の気持ちを考える前に自分の好みで行動するので、不満に気づいても行動を変えることはできません。

できるなら自分本位ではありませんから。

社会では、それに耐えられない人は自分本位な人とは距離を置き、もしかすると縁を切ってしまうかも知れません。

そしてまた別の人が現れて、自分本位な人との関係に直面します。

行動力があって、自分本位でも人間関係を構築し続けられればいいのですが、老いて介護が必要になって時に人間関係が家族だけになると、家族のストレスや不満は蓄積される一方です。

デイサービスなど、社会との繋がりを絶やさないことで、自分本位な性格を直すことはできなくても、家族の負担を分散できるので試して欲しい選択になります。

できることをしているといういう意識は、時に自分も対応な存在で、介護されているとは思わないのも自分本位な考えから導けます。

やりやすいことを先に選び、困難なことを残して誰かに代わってもらう。

そんな行動に感謝するのは難しく、「同じだけ負担しているから負い目はない」という意識になることもあります。

ひと口に「自立」と言っても、その中身はとても幅広く、時に話合えば解決できるようなものでもありません。

特に自分本位に生きて来たタイプが、結果を残すことなく介護されるようになると要求はそのままに自分でも出していない結果を期待します。

「アレをして欲しい」「これが欲しい」

現役時代にはできなかったことを介護という支援に求めるので、家族の負担は大きくなります。