「老化」とは何か? 40歳を超えたら考えるべきこと

 「老化」現象とは何か?

高齢者がレジの支払いで、なかなか小銭を出せずにもたもたしてしまう場面を見ないだろうか。

「もたついてしまう」という行動は、処理速度に関係すると思うけれど、もう少し掘り下げれば「見えなくなっている」とも言える。

「見えない」とは、視覚的に認識しないこともあるが、同時に処理するべき時に片方だけや途中までということも含まれる。

高齢になってからのライフスタイルの見直し

現役時代を終えて、老後生活を迎えた時に、ライフスタイルを見直そうと思っても負担が大きい。

なぜなら、老化現象によって、変化に弱くなっていて、根本的な改善がとても苦手になるからだ。

つまり、人生観や生き甲斐のようなものを、老後になって作り出すのは難しく、現役時代に完結させていないことは、ほとんど後からカバーできないと思った方がいい。

趣味を楽しむにしても、趣味を探す所からでは難しいから、老後生活に入る五年くらい前には少しずつでも始めた方がいいだろう。

特に男性で、これまで料理などの家事を担っていなかった人は、最低でも米を炊いたり、目玉焼きを焼いたりくらいはマスターするべきだし、トイレやお風呂掃除、洗濯物を洗って干して畳むくらいは覚えておかないと、老後になってから部屋がぐちゃぐちゃになる。

片付けの基本は、出した元の場所にしまうということだけど、元の場所が整理されていなければやはり片付けは難しい。

「物を並べる」ことを片付けと誤解すれば、壁沿いに物が置かれて、確かに部屋の中央は何もないけれど、スッキリした生活環境とはちょっと異なる。

なぜなら、整理整頓のために棚や箱を買って、スッキリする環境づくりから見直すのはハードルも高い。

なぜそうなってしまうのかを考えると、例えば家具やインテリアの雑誌を手に取り、「おしゃれに暮らす」とはそもそもどんなことを指し、そのために何を学んで理解を深める必要があるのかという領域まで話が広がらない。

受動的な生活が染み付いてしまうと、食べる物も見るものも不具合に感じることもない。

毎日、何も変わらない生活は、同じ料理を食べ続けるくらい退屈だ。

「変わらないこと」が悪いのか?

質素で倹約した暮らしと「変わらない生活」は全く意味が違う。

例えば、玉子が1つあった時に、目玉焼きという選択肢しかなければ、「変わらない生活」になってしまう。

でも同じ目玉焼きでも、焼き方は様々だし、加えて別の食材も使えば料理名は無限に広がる。

これは整理整頓と同じで、現状の環境で考える前に、棚や箱などを買い揃え、並べるだけではなく、使いやすい収納に目を向けることだ。

何も考えず、適当に棚を買ってしまうと、実際に部屋に置くとサイズが合わなくて、収納しきれない物を脇に置くことになる。

結局は、整理整頓と同じで、料理でも掃除でも趣味でも、段々と考えることが狭くなれば、できることは減るし、中途半端になりやすい。

「変わらない生活」が悪いのではなく、「変わる必要がある生活」をしていることに注意したい。

誰かがフォローして維持できる生活は、一見すると問題ないように見える。

でも、さらに歳を重ねると変化に対応できないから、それこそフォローする量を増やすか、生活の質を落とすしかなくなってしまう。

40歳を迎えたら

社会人一年生は、学生生活を抜けて社会で生きることを学び始める。

半人前と呼ばれる期間を経て、一人前と呼ばれることになるけれど、一人前になるということは、何か責任や義務を果たせる存在という意味だけではなく、変化に対して新たに意識を持つことでもある。

つまり、一人前になったことで、その状況を肯定されたことになる。

しかしながら、段々と年月を経て高齢化すると、体力的にも気力的にも現役時代のようにはことが運ばない。

つまり、一人前として手に入れた物が、どんどん少なくなっていき、若い頃とは違う自分に気づいて来る。

減ったものを取り返すことも大切だけど、絶対に失ってはいけないものと、状況次第で手放しても仕方ないことを早い段階で分けられたら、加齢も怖くはない。

その意識が乏しいまま、老後に生活を大きく見直すことや、大切になる知識や経験、価値観を捨ててしまっても、新たに取り返すのは簡単ではない。

40歳を超えて、会社で責任あるポストを担っていたとしても、例えば会社の看板に助けられていたり、同僚や部下の支えで維持できた部分も多い。

じゃあ、自分だけで考えた時に、どれくらいのことができるだろうか。

それに応じられる知識や経験は身についただろうか。

料理で言う所の「手順」は割と仕事でも覚えられる。

しかし、レシピの開発や食材集めまで含むと、慣れたつもりの作業も実はよく知らない部分が見えてくる。

40歳を超えた頃から、一人前である自分を全面的に肯定するだけでなく、本当は何が分かっていてできるのかをもう一度見直しておきたい。

意外と営業マンの苦労や経理の知識など、仕事と言っても限られた部分だけしか知らないことも多いからだ。

特に老後、どう生きていたいのかを考えることで、現役世代の内に意識することも明確になる。