オモロウマい店「珉珉」のご夫婦から学ぶ話

 残念ながら閉店された「珉珉」ですが

「騒ぐんじゃないよ」というセリフがトレードマークにもなった鈴子さんは、珉珉という中華料理屋を夫の宏と55年に渡り茨城県の日立市で営んできた。

オモロウマい店の一つとして何回かに放送されたのだが、回を追うごとに料理人の宏さんとの夫婦仲睦まじい関係に考えることが多かった。

放送で見る限り、その中華料理屋は広い店ではない。

しかし、近所の方々から愛されて来た店で、客が支払う時に鈴子ママが「騒ぐんじゃないよ」といつもの決めゼリフを呟き、少し多めのお釣りを握らせる。

金額が多いと知り、客は一瞬困惑するのだが、そんなことお構いなしで鈴子ママはそのお釣りを手渡すのだ。

一見すると、「オマケ」が好きな鈴子ママにも見える。

しかし、長く仕事を続けて来た夫の宏さんの体調不良もあって店を閉めることに決めたのは、昨年のことで、それから完全な閉店までの経緯も放映されていた、

テレビ放送の反響も重なり、店には多くの人が詰めかけている。

町の小さな中華店は、どんな場所にもだいたいはあって、こみちも幼い頃、実家に住んでいた時に近所の店でよく中華ラーメンの配達をお願いしたものだ。

都内にある人気店のラーメンとどちらが美味いのかという話ではない。

ラップで汁がこぼれないようにし、岡持で運ばれるラーメンはそれこそお袋の味に似ている。

しかし、珉珉はテレビ放送されて、どこにでもある町の中華料理屋ではなくなった。

誤解なく言っておくと、テレビで放送されたからではない。

鈴子ママと宏さんの誠実な人柄が、多くの方々に感動を与えたからだ。

特に最終日、店を閉めた後の夫婦が、これまでの思い出を語る場面で、「明日、店を開けないのが不思議だね」と話す。

55年という長い期間、いろんなことがあっただろう二人には、閉店となってもまだどこか実感できないような、それでいて何かから解放されたような時間がある。

なぜ、珉珉はこんなにも長く愛された店だったのだろう?

個人事業主を目指したら、やはり売上が気になるし、利益率や客単価を考えて、店の経営をするだろう。

そのためには、マーケティングやコスパ、客に飽きられない戦略が欲しくなる。

しかし、55年のいう長い期間、愛され続けた店は、もちろん客を満足させる料理もあったとは思うが、それと同じくらい鈴子ママの気立の良さがあったからに違いない。

そして、そんな鈴子ママでいられたのは、厨房で仕事をしている宏さんの存在があったからだ。

店を閉めた夜、宏さんが急に鈴子ママのことを労い、そしていつも頑張ってくれたことを感謝する。

そんな話をいきなり聞かされた鈴子ママだが、夫の宏さんが居たからだといい、どちらもが相手を思いやっている。

例えば、腹を空かせて店に入り、まぁまぁ美味いラーメンが出されて、それを誰かが付けたテレビでも観ながら啜ったとしても、そのラーメンや店主のことを改めて意識したりはいないだろう。

まぁ、値段の割に美味かったと思うかもしれないが、店はだいたいがそんなものだ。

でも何度か通っていると、どんな人が作っているのか、運んでくれるのかが分かって来る。

気づけば、店でラーメンを啜っている間、日常を忘れて、ひと時の癒しを感じていることに気づく。

そう感じると、もう他の店の料理と比べてはいなくて、あの雰囲気を感じたくてまた店へと足を運んでしまう。

そんな風に書くと、なんだか簡単に聞こえてしまうが、会社を5年、10年と維持させるのは誰にでもできることではない。

その間にはいろんなことが起きて、店を続けられないことだって起こる。

そんなトラブルがあった時に、店は意外と脆く潰れてしまう。

でも珉珉は、そんなトラブルにも屈することなく、55年続いてきた。

とても穏やかで、笑顔が素敵なお二人だが、この55年という時間はとても重く、偉大なことだ。

なのにそんな素振りを一切見せることなく、宏さんも鈴子ママも普段通り笑顔を見せる。

こみちはなぜ成功者に成れないのか?

二人を見て思う。

数ヶ月や数年で、成功するかしないかを判断するには、まだまだ努力した時間が短い。

きっと口にはしないけれど、泣きたくなるほどの出来事だってあったはずだ。

努力もたくさんされただろう。

そんな風に思えると、結果を求めるのはいいけれど、焦りすぎてはいけないと気付かされる。

それだけの努力や想いを込めて来たのか。

笑っている人と悩んでいる人。

両者は全く異なる人生だったわけではない。

途中までほとんど同じで、ある時に差が現れる。

そのある時こそ、「継続」していたからこそ巡って来た分岐点だろう。

誰かと比べるのではなく、自分に正直に向き合って、その一歩ずつの歩みを知ってもらえたら、いつかは少しずつでも興味や関心を持って、声を掛けてくれる人ができるだろう。

ご夫婦の姿を見て、本当に大切なことを教えられたように思う。

できることに少しプラスしながら、その誠実さを続けることで、珉珉のような笑いに包まれた空間が築かれるのだろう。

お疲れ様でした。

そして、いつまでも末長くお元気で。

機会があれば、オモロウマい店で放送された「珉珉」という店のお二人をyoutube などで探してご覧いただきたい。