職場移転に伴って
多分、4月くらいに働いている会社が移転する。
とは言え、こみちはその会社の正社員でも、パートでもアルバイトでもない。
仕事をもらって、作業し、納品する末端の請負だ。
だから、その会社内情をある程度は知っていて、でも勤務している訳ではないから、適度に距離もある。
人付き合いが苦手なこみちなので、そのくらいの関係で十分にも思える。
中高年のこみちよりも、その会社の社長は若い人で、従業員たちは流石に子どもよりも上の世代で、30代前半から20代後半が多い。
こみちが出勤した時に接するのは、ある程度決まった人で、作業して帰るまでそれ以外の人とも挨拶くらいしか交わすことがない。
黙々と仕事をする方が合っている。
しかしながら、職場移転で現場スタッフが慌ただしく、その理由は新規採用した新人の研修を始めたからだ。
指導役の一人、こみちが働き始めた時にお世話になった人は、とても人を乗せるのが上手い。
こみちも上手く乗せられて、ベラベラと喋ったし、今も研修中の新人たちはその人に話をよくしている。
特に雑談の中から、話題の選び方や展開、最後のオチまでを知ると、その人の隠された性格まで短時間でわかってしまう。
面白いなと思ったのは、上手く乗せられて前職での武勇伝を語った人が、研修が進む中で段々と口数が減ってしまったことだ。
そんな光景を何度も見ていて、結果的に新人が辞めてしまうケースが多い。
その人も上手く乗せていることを気づいていないのか、相手が段々と居られない状況を作ってしまう。
優しさが厳しさになる典型例だろう。
そんな光景を見ながら、こみちも同じような状況を経験し、今に至っている。
こみちと前後して働き始めた人たちもいたが、今は随分と減ってしまった。
理由は同じではないと思うけれど、入れ替わりが激しい。
その意味では、仕事内容にも慣れているし、黙々と自分の仕事をするだけだから、こみちには都合がいい。
それこそ、仕事を持ち帰り、家でもすればいいのだけれど、全ての作業をパソコン一台で賄えないから、完全に自宅ですることは難しい。
もっと他人とも距離を詰めて、人間関係に積極的になれたら人生も違うのだろうけど、どこかで人嫌いな一面もある。
職場の人たちからは、きっと変な奴として映っているだろう。
そう思われてしまうのは毎度のことだから、あまり深く気にしても仕方がないことだ。