決断しない両親
今の暮らしを続けたい両親は、何か大切なことがあっても、「決断しない」ことが多い。
身近なことで言えば、「炊飯器を買う」という話がこみち家で起きた時だ。
年始の特別セールで売り出された炊飯器があって、金額も手ごろだったので両親が揃った時に「買い換えないか?」と相談した。
そんな時、決まってお金を出したくない父親はだんまりする。
母親も渋くて、「まだ使えるし…」と否定的だ。
実はこの話題、今使っている電気ポットを「ケトル」に変えるという話をした時と同じ展開なのだ。
その時に母親が言ったのは、「実家に新しいケトルがあるから持って来る」ということだった。
そして、話はあれから一歩も進んでいないし、「ケトルは?」と問い掛けた時に「何の話?」と返って来るのも分かっている。
話を炊飯器に戻そう。
面白いのは、今回のケースで母親はその量販店に行ったそうだ。
「まだ売っていた?」
正月のセールだがら、薄々はセールが終わっていることも想像できたけど、そう話を振った。
「炊飯器も売っていたよ。色もいろいろあって、黒とかも良さそうだったわね」
「セール品はあった?」
「それは分からないけど、レンジとかも売っていたし…」
ここで勘のいい人なら気づくだろうが、母親は決断しない。
量販店に行って、商品をいろいろと眺めて終わる。
しかも値段を気にしているのに、セール期間中は渋い顔で話にも乗って来なかった。
その時に決断すれば2万円で買えたのに、タイミングをずらすから倍の4万円になってしまう。
日ごろ10円をケチって、安い物をガソリンを使ってわざわざ買ってしまう母親だけに、損得勘定しているようでしていない。
夕飯を妻と食べる時に
夫婦仲が特に悪い訳ではないが、時間を使っておしゃべりするのはもっぱら食事の時だ。
仕事での話や世間話などが多い。
「〇〇なことがあったの」
最近は妻の話を聞くようにして、それで少しでもストレス発散になればと考えている。
ところが、母親がそこに入ってくる。
「〇〇ってどうなんだろうね!」
夫婦だけの空間に、全く気づかない母親なのだ。
「そうだね」
夫婦での話題を中断し、母親の話に相づちを打つ。
その内、母親は近くに座り込み、さらに喋り出す。
その時、こみち自身は「今必要?」と内心で思っている。
喋りたいのかもしれないが、夫婦の貴重な時間だということも理解して欲しい。
その一方で、話すことが「認知症」予防に繋がるとも思っている。
昨晩はなぜか父親も上機嫌で、「晩飯は〇〇だぞ」とキッチンの周りでウロウロして前に立ちはだかる。
その時、改めて父親の顔を見て、想像よりも老けたなと感じた。
妙に笑った父親が、怖いとも感じたくらいだ。
多分というか、ほぼ確実に、両親は多くの解決するべき終活をしないままになるだろう。
それこそ炊飯器やケトルのことだけではなく、実家の片付けさえしないままになると思う。
自分から介護施設に入るとも言わないだろうし、そんな決断もできない。
「今のままでいい」と言いながら、最初に決めた家事の分担もできなくなっている。
まだ仕事を続ける母親だが、準備するのも以前より倍くらい時間が掛かっている。
しかも、父親はテレビの前で居眠りしているのだから、母親も切なくなってしまうだろう。
もう両親は人生が詰んでいる。
何もできない父親だけになったら、それこそ叔母同様に施設行きだろう。
かと言って、母親も認知症になってしまう前兆がある。
ある日、突然に訳の分からないことを言い出したら要注意だ。
夫婦の会話中に割り込んでしまうのも、それだけ状況判断が鈍くなっている証拠だろう。
残念ながら、そんな両親の生活リズムに合わせていると、こみち自身もそれを跳ね除けるパワーはなくて、何かしたいけれどそこにはウロウロする両親がタイミングを逃すくらい長く邪魔をする。
昨晩はイライラのスイッチが入ってしまった。
不毛な生活を続けることしかできなくて、こみち自身も人生を詰み始めていると強く感じてしまう。