嫁と父親の関係性

 珍しく嫁から言われたこと

こみちの身勝手で、妻には不便を掛けている。

それが、両親との同居である。

仕事をしていない父親は、基本的に朝から晩までテレビを見て過ごす。

こみちが仕事で家を空け、妻が休みの日だと日中は父親と二人きりになることもある。

休みの日でも割と外出することがある妻だが、それでもリビングを陣取る父親がいれば、昼食時は顔を合わせることもあるだろう。

二人の関係がどうなのか。それこそ改めて考えたこともなかったが、妻から言われた言葉で「やっぱりか!?」と思ってしまった。

「無視されている」と。

ある意味、父親が嫁に気を使って、遠慮しているとも言えなくはないが、その日初めて顔を合わせた時も挨拶することもなく去ってしまうらしい。

「別に気にしていない」と言ってはくれたが、そもそも同居していなければ、気にすることもなかったことだろう。

息子のこみちから見ても、父親はズルいと感じることが多い。

外面がよくて、近所の人は想像もできないと思うが、ヘトヘトになっている母親をさらにこき使う態度だから、もう少し優しくできないものかと思ってしまう。

とは言え、世代間の意識が大きく異なるから、母親も改善して欲しいなら気持ちをはっきりと伝えるべきだ。

今でも母親は「大事な旦那様」という感覚で接しているのを見ているから、わざわざ両親の関係性にまで首を突っ込むつもりもない。

妻にすれば「私なら離婚する」と言っていて、確かに母親は何がそんなに幸せなのかと思うこともある。

老体でも外で働き、父親のために昼飯の用意までして出掛ける母親を見て、「よく尽くすなぁ」と思う一方で、そんな態度が父親を今の感じにしているのだろう。

家に帰ってひと息つく間もなく、「飯は?」と言われてしまう母親。

確かに夫婦の関係が対等になったこみちたちにすれば、母親の生き方にも疑問を感じるだろう。

思えば、四人が笑って夕飯を食べることもなくなった。

父親は腹が空けば勝手に食べてしまうし、こみちたちはどこか時間をずらしてしまう習慣ができた。

妻と父親が二人で話している姿も、しばらく見ていない。

「全然、こっちからは話し掛けないし」と。

互いが居ない人として感じているのだろう。

根本的に関係を改善することなどできないから、それこそ大人の対応で、それっぽく振る舞ってもらうしかない。

年が明けたら、四人の暮らし方をもう一度話し合うしかないだろう。

テレビを見ているだけとは言え、父親がずっと家にいることで、折角の休みでも妻は羽を伸ばせない。

あまり文句を言わない嫁だから、実は本音では気にしているのだろう。

かと言って、同居を解消すれば、母親に負担が押し寄せ、その内、倒れてしまうまで頑張るだろう。

母親が潰れたら、父親の世話を誰がするのか。