以前とは違う心境…
思えば、今の製造の仕事も、諸先輩方のテクニックや若いスタッフの吸収力の早さなどに触れ、中高年になったこみちは至る場面で勉強させてもらいました。
少なくともDTPのオペレーターとして、デザインの仕事に関わった頃と似た感覚です。
一方で、20代、30代と歳を重ねて、職場も変わりながら、一人のオペレーターから営業、ディレクションと仕事の役割も変化しました。
40代になると、製作の現場から離れて、米作りを手伝い、さらには介護へと進み、介護福祉士の資格も取得できました。
そう考えると、こみちはいろんな職業を経験した部類かもしれません。
でも仕事に対する根底はいつも同じで、基本の知識や技術の取得に始まり、サービスや製品の品質向上、さらにコスパや市場のニーズ、経営へと発展します。
その点で言えば、約一年くらい勤めた今の製造の仕事で、少し意識の変化も起こりました。
先々月までは、職場での製品の品質向上と品質管理を心がけて、担当した作業で一定水準以上の成果を目指して働いていました。
ところが先月あたりから、「正社員」ではない請負という立場から感じる焦ったさも職場に感じます。
若いスタッフの多い職場で活気があるのはとても良いことですが、ただ新規のスタッフの離職率がとても高いのです。
約一年くらいの間に3名から5名くらいの人、担当部署以外まで含めるとさらに数は増えるのですが、それくらいたくさんの人が入職しては辞めてしまいました。
介護職における離職原因として、経験がまだ浅い入職後半年までなら、扱う仕事への戸惑いもあるでしょう。
しかし、それ以降は仕事そのものよりも、職場での人間関係や働きやすさ、仕事への達成感などが増えるでしょう。
つまり、製造現場でも同じことが言えて、「ものづくりに関わりたい」と思っても、実際に扱えば戸惑いはあるはずです。
そしてある程度仕事の手順に慣れた頃から、自身の仕事ぶりが十分な質なのか考えるようになってきます。
というのも、先輩達の製作物がどれだけの品質なのか判断できるようになりますし、それに対する自身の未熟さも感覚的にではなく、実感として見えるからです。
例えば一流のデザイン事務所と三流の事務所があったとして、クライアントの種類や仕事内容に違いがあるのはもちろんですが、現場内の感覚として「やりがい」に差が出てきます。
具体的には、100時間で80%の完成度になる作業があった時に、あと30時間を費やして95%まで引き上げて、売上高を2倍にできるのが一流のデザイン事務所です。
一方で、三流の事務所では、80時間で80%の完成度を量産したいと目指すのです。
そこで働いた時に、一流のデザイン事務所では、才能の限界や取り組み方の抜本的な見直しをデザイナーたちに問うでしょう。
同様に三流の事務所では、アウトプットが多くなり、時間に追われてインプットが不足して、作っていても毎回似たパターンになってしまいます。
作っていても新鮮味がなくなり、ただ継続しているだけだと思うとそろそろ限界でしょう。
中高年が仕事探しをした時に起こることでもありますが、自身で起業しない限り、誰かが描いたビジネスモデルに沿って働くことになります。
仕事に真剣に取り組むほど、改善点や更なる高品質化に必要なことが分かって来るはずです。
しかし、勤めている以上は、例えば現場を仕切る管理者の意識を変えることはできません。
中高年の労働者で多いのは、「そこそこ」を目指して働くスタイルです。
つまり、一流と三流があった時に、そこが一流の会社だとしても、中高年の労働者に与えられる仕事は、どうしても三流的になりやすいのです。
「もっとこうしたい!」とか、「部材の品質を上げてもらえたら」とか、会社全体で考えた時に、精度の低い部材が多いとどうしても「ある程度の品質」でまとめてしまいます。
多分、業界全体が求められるニーズを考えると、一人の作業員が思う高品質化など合わないのかもしれません。
それだけ、昔とはいろいろ変わってしまったということでしょう。
事実、5年の下積みが活かせるのかと言われて、「活かせる」とは言い切れないのが実情です。
その意味では、3年の経験はある意味でベテランの域で、そこからいかにモチベーションを維持するのかが大切になるのでしょう。