金曜日夜10時45分から放送されている人生模様
民放にも街を散策したドキュメンタリー番組はいくつもあります。
しかし、NHK 72時間の特徴は、旅をする人ではなく、そこに居る人たちだということ。
2022年7月16日に放送された「浅草・演芸場 人生は笑いとともに」では、浅草にある演芸ホールに焦点を合わせ、そこに集まる人々を取材していました。
浅草演劇ホールでは、落語、漫才、手品などいろんな出し物で客を楽しませてくれます。
そこを訪れる客は30代から50、60、それ以上の幅広い年代で、そこに足を運んだ背景を語ってくれました。
特にこみちと同じ中高年世代は、仕事、親の介護、自身の老後など、人生の終着点が見え始め、多くのことに悩んでいます。
それだけに、何もかもを忘れて笑える「寄せ」の存在は、単なる芸事ではなく、人が生きるために昔から大きな役割を担っていたことに気付かされます。
最近であれば、YouTube やNetflixなど、日常生活から少し休憩する方法はたくさんあります。
しかし、浅草演劇ホールのような場所は、そこに「足を運ぶ」という一見すると不便にも感じますが、でもその空気感は特別な場所です。
そして、例えば出演している「落語家」に対しても、ネタの上手い下手ではなく、壇上と客席とを包む一体感はその場所でしか感じることができません。
一方、「ネタ」で笑いを届ける演者に注目すると、前座と呼ばれる駆け出しからベテランとなった真打になるまでに、師匠からさまざまなことを学び、人としても芸事をする人としても成長していきます。
番組の中で、18歳の前座となった青年が、ホールの控え室で先輩方のために準備をしているシーンがありました。
テーブルを用意し、お茶の用意と下積みです。
しかしその光景を見て感じたのは、こみちが同じ18歳の時に青年のようにテキパキと動けただろうかということ。
「教えられたこと」だけをしている意識では勤まりません。
なぜなら、「下積み」は我慢の時代ではなく、自分を磨く一歩となっているからです。
前座である青年も、まだ早い順番で舞台に出ます。
そこでまだ1ヶ月ほどの稽古で身につけた話芸を披露するのですが、確かに真打と比較すればまだまだ若い部分もありますが、客の前に出て15分を一人でもてなすのは誰にでもできることではありません。
特に「何でもあり」ではなく「自身の芸」であることに大きな意味と価値があります。
上には上が…
YouTube を使えば、やり方次第で大金を稼いでいる人もいます。
そんな彼らも、見てもらう「努力」や「工夫」をしてそこまで来たはずです。
同様に、「芸」の世界もパッと出て人気が出るということはありません。
先に紹介した前座の青年も、5年10年と経験を重ねて、客に愛される落語家になるでしょう。
現代の風潮として、下積みをもったいない時間と感じる人もいますが、時を掛けて身につけたものは、それだけ長く自分の支えとなってくれるはずです。
中高年になって感じることの1つに、「若い人が羨ましい」がありますが、単に見た目の若さということではなく、何かに没頭できる「時間が残されている」こともあります。
事実、今から3年の下積みというのは覚悟だけでなく、目や耳、手先など老化現象によって難しくなることも多分にあって、「今」が当たり前ではないことを強く感じます。
昨日と同じ今日を過ごすことでさえ簡単ではないことを知り、さらに下積みまでできるのだろうかという感覚があります。
選ぶのは、簡単ですぐに効果が現れることばかり。
仕事探しでも、これから語学、資格を新たに身につける覚悟は誰にでもできることではありません。
だからこそ、一流の芸を身につけた演者が、どれだけ素晴らしい存在で、そんな彼らに触れたくて人は寄せに足を運ぶのでしょう。