「男の出世」は女次第?
男であるこみちが、中高年と呼ばれる年代まで生きてきて気づいたのは「男は女次第で変わる」ということ。
先に断っておくと、「出世できる男」はどんな環境でも出世します。
ここで言っているのは、「自力では難しい男」の場合です。
センスのカケラもないこみちは、妻に用意してもらえなければ、予め決めていた2パターンの洋服を着回してしまうでしょう。
つまり、「それで十分だ」と思って、さらに深掘りすることがありません。
「最近、コレが流行っているらしい」
「コレ、使ってみたら?」
もしも妻からそんなアドバイスを受けられたら、無頓着なこみちでも「ヘェ〜」と関心を寄せられます。
たとえ方は不適切ですが、「独身男性」と「既婚男性」の違いは、女性から見た時の「雰囲気」でしょう。
きっと男のこみちにすれば、自分で情報を集められるタイプの男性は、オールラウンドにこなせる人で、どちらかというと疎いタイプの男性はいかに日常的に「世話を焼いて」もらっているかです。
「オシャレなネクタイですね!」
女性がそう声を掛けた時に、「デザインが好みだったんだ」なんて言える男性はもうここでは触れる必要もありません。
しかし、こみちのようなタイプなら、「そう? 妻が選んでくれたんだよ」となります。
つまりこみちが独身で自分で選ぶしかなければ、きっと女性から「オシャレですね」と言ってもらえるネクタイなど選べないでしょう。
いずれにしても男は女次第だということです。
「言って欲しいこと」「言って欲しくないこと」
「決心」ができている時には、もう言葉は求めていません。
むしろ、妻には「行ってらっしゃい!」で十分です。
でも、まだ迷っている状況の時には、「何か言って欲しい」のです。
例えばその状況で何も言ってくれなければ、ネクタイの場面と同じで選ぶには選んだけれど、それが最善だったのかは分かりません。
最も言ってはいけないのは、「マイナス思考」を提供すること。
「熱があるから大変でしょう!?」
「できなくても仕方ない」
など、実は迷いながらも決断しようとしている段階だったりすると、「妻は否定的なのか…」という情報に触れて、もう一度決断しなければいけません。
迷っている時なら尚更、決断できないでしょう。
つまり、煮え切らない男だからこそ、一定期間は距離を取って、一人で悩ませて欲しいのです。
でも本当に決断できないとか、決めかねてループしている時には、そっと様子を見て欲しいのです。
「どうした? 決められないの?」
その時はまだ自分の結論ではなく、男の気持ちに寄り添って欲しいのです。
両親の話
父親は甘えん坊です。
肝心な時に「男」になれません。
でも母親にとっては頼りにしたい「男」です。
同居が始まって、父親は仕事探しをしたことがありません。
働けるかどうかの前に、「働かなくてもいい」と思っています。
妻である母親は今でも仕事をしていて、夫である父親の身の回りの世話をしています。
父親の日課は、基本的にはテレビを観ることとご飯を食べることです。
時々、母親に言われて洗濯物を干したり、部屋の掃除をしているみたいですが、日常的に義務にはなっていません。
正直なところ、父親の姿は母親の子どもみたいな存在で、暑い日にはアイスクリームを買ってあげ、お腹が空いたら疲れていても料理を作ってあげています。
夫婦にはいろんな形があるので、どんな形でも夫婦が納得しているならそれは周りがとやかく言う話ではないでしょう。
ただ、時々母親は奇妙なことを言い出します。
「お父さん、腰が痛いからお風呂を洗えないみたいなの」
なぜ腰が痛くなったのでしょうか?
高齢者だからということならまだしも、一日中横になってテレビを観て疲れたという話なら、「腰痛」は言い訳です。
でも母親は「原因」ではなく「状態」だけで判断するので、「悪いけど、お風呂洗ってくれない?」と誰かに振ってきます。
時には予定を変更して時間を作り、風呂場を洗うことになります。
でも父親はその間もテレビを観ていたり、母親が買ってきたオヤツを食べていたりで、代わりに洗った理由が分かりません。
しかも母親も一緒になって父親とオヤツを食べていたりします。
「オヤツ食べたら?」
さんざん食べ尽くした残りを差し出して、誘われても嬉しくありません。
いつも父親は「楽で安全なところ」にいます。
それを求めているのは母親で、そのためなら子どもをダシに使うことも昔からです。
いつも作る朝食で、妻にだけ一品特別なおかずを個別の皿に乗せておきました。
妻が気づいて喜んでくれたらと思ってのことです。
しかし、なぜか妻は普通に食べ進めています。
「アレ、気づかなかった?」
こみちから聞いたしまいました。
「入って無かったよ」
「嘘だ! 皿が違う?」
勝手に皿を替えたのは母親でした。
理由は父親も好きだからということです。
自分で料理した時ならまだしも、皿をチェックして自分が欲しいものを先に取るというのは、ちょっと親でも信じられません。
しかもいつも座る席の前に皿を移動させていたにも関わらず、目を離すとすり替えてしまうのです。
「ごめんね。また今度作るから」
本当に男は女次第です。
もう少し母親が上手く対応できれば、父親だって動けたでしょう。
やる気を失せさせてしまう期間が長く続くと、もう父親は母親に甘えるだけになってしまいます。
「めまいがするみたい」「膝が痛いのね」
できない理由を先に認めてしまうので、そもそも決断できないタイプの父親など、動くはずもありません。
何もしない父親が悪いのか、させようとしない母親が悪いのか。
結局、全てを救えないこみちが悪いのかもしれません。