「小手先」のテクニックも大切
生きる上で、「セーフ」と「アウト」は明確にジャッジされる。
「この書類だけど…」
納品した仕事を先方から指摘された時に、「今後は注意してね!」と言ってもらえれば、「セーフ」と判断された。
でも、実際は評価や信頼という面では「アウト」だったことを忘れてはいけない。
「いいよ。いいよ」
という言葉の裏には、必ずしも肯定的なものばかりではなくて、単純にその場を済ませてしまいたいだけということもある。
そんな場面で、ヘラヘラと「すいませ〜ん」などと戯けてしまえば、完全に評価は失墜してしまう。
だから、「小手先」のテクニックでギリギリアウトとギリギリセーフにしている人は、本当にそれで良いのかと自身の行動を見直してみよう。
なぜそんな風に思ったのか?
以前から話している通り、こみちは不器用だ。
要領が悪くて、何をしても人の何倍、何十倍と失敗する。
でも最近、仕事の方で確かな手応えを感じ始めた。
感覚的な言い方をすると、「レベル」が1つ上がったという感じだ。
つまり、それまで評価されていた部分と改善を求められていた部分が混雑し、その改善部分で評価が下がっていた。
しかしコツコツと修正している中で、ふと苦手な部分が上手にできるようになって、トータルの評価が一新された。
これまでの限界をまた1つ越えて、レベルアップできた。
実は小手先の修正方法を使えば、もっと短期間で評価を回復できた。
多くの同僚が、そのテクニックを使って成果を出している。
一方で、地道にトライアウトを繰り返し、成長してきたこみちは、その手法をあえて選ばずに、時間がかかる正攻法で問題解決に取り組んだ。
そしてその成果が現れて、今回の成長に繋がった。
仕事ができる人と思われたい。
不器用だとは思われたくない。
上手く稼ぎたい。
人はそれぞれいろんな思惑があって、できることなら美味しい所だけを上手に掴みたい。
もちろん、器用な人の中にはそんな風に仕事をこなし、涼しい顔で成果を出している人もいる。
ただ実際は、そんな風にサラッとこなす人を高評価しているケースは意外と少ない。
「結構、ミスしている」
「よく見ると雑だね」
「面倒なことはしないでしょう!?」
面と向かっては言われないが、評価する側からは結構な割合で、冷静な評価をしていたりする。
短期的な目標としては、器用な人ほど評価されるだろう。
しかし、年単位で考えると、一定レベルを超えた時点で評価ポイントは「信頼性」や「人柄」に重点が置かれている。
中高年が目指すべき「並」の領域とは?
例えば、介護の仕事を始めると、器用な人はオムツ交換もすぐにマスターできる。
一方で不器用なこみちみたいなタイプは、何度も教えてもらい、手順を間違えて二度手間になりながら、少しずつできるようになる。
一回の交換作業で、5人から10人くらいを担当し、それが一日の勤務で数回あるが、結論を言ってしまえば、「介護士として働きたい」なら大変でも積極的に作業をすることだ。
こみちの場合も、勤務していた3年の間で、一回も交換作業をしなかったという記憶がないほど、できる限り「オムツ交換」作業を志願した。
ベテラン勢が30分で終えられる状況で、不慣れなこみちは90分も掛かったことがある。
「もっと手際よくできないの?」
あまりに遅くて先輩からキツい注意も受けた。
でも、3年続けて分かるのは、上手くはないが、「オムツ交換作業」なら人並みにできるという自信が付いた。
一日10回として、単純計算で5000回以上こなしているはずだから、誰だってそこまで繰り返せば上手くもなるだろう。
何より覚えてしまえば、器用ですぐに覚えられたのかよりも、できることが評価される。
でもこの経験はとても大切で、資質やセンスがなかったとしても、それをカバーする練習によって、誰にだって「並」まではできるようになる。
それはつまり「プロ」ということ。
ただ、「一流」とか「カリスマ」のような選ばれし者にしか与えられない称号とは無縁だ。
でも「並」までくれば、それを仕事にして稼ぐことができるし、少なくとも同じ担当になった相手が困ることはない。
「これしかできない」
「アレは苦手」
と、作業によってできるできないが多いと、一緒に組んだ人は相手のレベルに合わせて、自分の担当を考えなければいけない。
「オムツ交換はまだ苦手で、入浴介助はまだ数回で」
そんなセリフを聞けば、「何ができるの?」となるし、「一人で全部するしかないのかも」と覚悟するしかない。
特に介護系の仕事は、ベテランもいれば、まだ経験の浅い新人もいる。
年齢や性別とは関係なく、どうしても当たりはずれの現場ができる。
「スタッフは多いのに、なんでこんなに大変なんだ?」とか、「今日は仕事がスムーズだ」という風に、同じ職場でも印象がまるで違う。
少なくとも「並」までくれば、とりあえず平均的な作業はできるから、不慣れな職場でも迷惑を掛けることも減らせる。
基礎があれば、それをベースに適応させられるから、それこそが「プロ」の仕事なのだろう。