介護業界の問題点 現役介護士が自身の今後を考える指針にするために

 介護事業で儲けるには

その秘訣はたった一つで、「手間を惜しむ」こと。

「惜しまない」のではなく、「惜しむ」ことだ。

それに基づいた介護施設の運営では、アピールポイントを立地の利便性や施設の設備面でアピールし、入所者を集めることだろう。

また、介護スタッフの募集に於いては、年収ベースの報酬で魅力をアピールすることだ。

例えば年収400万円以上、年間休日120日以上という条件は介護職ならかなり魅力的に感じる。

しかし、異業種の大手企業なら、正直なところそれほど高待遇という印象は受けない。

完全週休2日に、年末年始、大型連休、お盆休み、さらに有給休暇を加えれば、120日以上は確実に超えてしまう。

しかも、昇給の有る無しやボーナスの金額を考えると、年収400万円という数字が労働に見合うのかは、介護職しか知らない人と知っている人とでは感覚が違うだろう。

大手企業の正社員を目指すなら、知名度のある大学を卒業しなければいけないだろうし、入社試験を受けるにしても年齢制限があるはずだ。

中高年から選択できる方法ではないので、介護職と単純に待遇面を比較しても意味がない。

ただ、中高年からの仕事探しという意味でも、仕事での経験を活かしていけるのかはとても重要で、難易度の高い、手間の掛かる仕事を覚えても昇給しないのなら段々とモチベーションが下がってしまう。

介護の仕事は、繰り返しが多いから、自分から進んで取り組むというシステムを作らない限り、スタッフは手間を掛けたりはしない。

施設が儲けるには、手間を掛けないことだと言った。

しかし、それは「施設」の話であって、従業員にどれだけ手間を掛けさせるのかで施設の評判も上げることができる。

例えば、月収25万円の固定給として、ボーナスは夏と冬で50万円ずつとした場合、年収は400万円になる。

しかし、基本給20万円に皆勤賞5万円とすれば、従業員は覚悟して休みを取るしかない。

さらに、基本給15万円、皆勤賞5万円、研修参加加点2万円、役職手当て2万円、資格手当て1万円といった具合に、基本給をできるだけ低くして、ノルマを達成すると加点されるシステムにすれば、同じ月収だとしても従業員は見えない内にコントロールされてしまう。

その意味では、求人募集する施設がどのような名目で振り分けているのかを見るだけでも、意図や狙いが分かる。

一方で、そんなシステムを逆手に取れば、施設が求める人材に近づければ、よりしっかりと稼げるとも言える。

ちなみに、こみちが勤務している施設で、毎月提出が義務付けられているレポートを集計し、金賞をはじめ、様々な賞を企画しているという。

金賞が一万円だとして、年間で12回のレポートを自宅で制作するとしたら、時給換算でいくらになるだろうか。

でも、金賞を取れば「一万円」もらえるとなれば、何か得した気分にならないだろうか。

介護現場で、対応がとても困難な利用者の排せつ介助をしたとしよう。

そんな利用者を10人担当したからと言っても、施設から評価されることはない。

なぜなら、できるかできないかで言えば、「できる」からだ。

実際には大変でも、「できる」と思われていることは評価されるポイントにはならない。

例えば、異業種のサラリーマンで、今回新たなプロジェクトを立ち上げることになり、そのスケジュール管理を担当するような場合、会社は管理の大変さを理解していない。

つまり、実際にはそれほどではなくても、アピール次第ではとても難しいことを成し遂げたようにも写る。

ところが、介護現場の仕事で、初めての仕事を介護スタッフが担当するのはほとんどなく、だからこそ介護職が高く評価されることは稀なのだ。

実際、介護スタッフの中には、上司や看護師などにアピールしやすい仕事だけを選り好みして担当する強者さえいる。

そして、その人が、ボーナスの査定がとても良いことを後から知って驚いた。

その意味では、利用者のニーズを掘り起こして対応する介護職は、利用者から支持されてもそこに評価システムが無ければ、報酬アップには繋がらない。

頑張るスタッフを評価する施設は良い施設なのか?

正直、良い施設とは、条件的に受け入れが困難な利用者も積極的に受け止めてくれるところだろう。

例えば、ヤル気や向上心のあるスタッフを評価するシステムを導入し、昇給制度を取り入れても収益を圧迫してしまう。

そこが異業種との大きな差とも言える。

自ずと、施設経営では、高い収益に繋がる利用者を受け入れ、それをサポートしてくれる介護スタッフを確保することだ。

大きな事故やトラブルを起こさないで、利用者やその家族から価値ある存在となることを目指せばいい。

一方で、スタッフの立場では、常勤スタッフを目指すべきか、パートスタッフを選ぶかがポイントになる。

最近の雇用制度から、多くのスタッフは社会保険に加入できる。

両者の違いで大きなものは、ボーナスではないだろうか。

常勤スタッフで例えば一回の支給が20万くらいだとして、パートスタッフになると3万円とか5万円となる。

一方で、休みの日を指定できたり、夜勤を拒否することもできるのがパートスタッフのメリットで、例えば日中の勤務だけということもできる。

一年間、月当たり3日は指定できても、残り5日は施設側から指定されるという働き方を選ぶ代わりに、年間でボーナスがトータル40万円支払われるとしたら納得できるだろうか。

そもそも稼ぐために働くなら、介護職なのかという疑問もある。

年収400万円を支払ってくれる介護職は都市部にはあっても、地方都市ではそうはいかない。

それは、異業種の平均年収との開きも関係してくるだろう。

中高年の場合には採用されるかがポイントだが、介護職として早朝から夜、又は深夜まで働くことを考えると、他に割の良い仕事はあるはずだ。

それくらい介護職は楽では無いし、稼ぎやすいシステムだとは思わない。

ただ、今になれば慣れているので、新たに別の会社で勤めるのも大変だと思ってしまう。

身動きが取れなくなる前に、自分の望む方向を見つけることを忘れてはいけないだろう。