こみちは人の心が読めるんです! みんなもそうでしょ!?の巻

初出勤だった新人スタッフの話

朝、配属先が分からないのか、エレベーターの使い方が分からないのか、一階のエントランスでウロウロしている人を見つけました。

介護施設には珍しい光景ではなく、こみちもそうでしたが、この3年で5人以上はそんな人を見たと思います。

それくらい介護施設にはいろんな人が入って来て、いつの間にか去って行くのです。

こみちが声を掛けようと思っていると、脇から現れた別の(このスタッフもこみちは名前を存じ上げない方)で、「どうしました?」と先に話しかけてくれました。

ウロウロしていた人は、多分60代くらいの女性です。

介護士として働くには、体力的に大丈夫なのかと思ってしまいました。

でも、中高年になっても働けるのが介護職の良いところなので、年齢を問わず働こうと思っているのはすごい勇気とやる気を感じます。

そして、脇から現れた人が声を掛け、振り返ったその相手を見て、こみちはその方がどんなタイプなのか気づいてしまいました。

少なくとも、その気づきはみんなも同じだと思っていたのですが、もしもそうではないとしたら、こみちがどんな風に思ったのか簡単に紹介しましょう。

少なくとも、こみちはあまり関わりたくないと思ってしまうタイプでした。

優しくしたり、良い顔をしたりすると、何かと面倒な話を持ちかける人に思えたのです。

「ここのエレベーターを使う時は…」

利用者が誤って乗り込まないように、エレベーターの扉は暗証番号を押さないと操作できません。

その説明が終わった時に、「助かりました!」と言ってはいたのですが、こみちは初めて聞いたのではないと感じました。

そう、ことあるごとにいろんな人から説明を求めるタイプなのです。

そしてこみちが働いるフロアから別のフロアに移動した時にも、偶然にその人が別のスタッフといるところに遭遇しました。

脇を通る時に聞こえて来たのは「じゃあ、お任せして良いですね!」というその人の声。

「ダメダメ。それはそっちで担当してください」と慌てた様子でスタッフが話していました。

そのスタッフとは何度か話したことがあるので、どんな人かある程度知っていますが、どちらという寡黙な方で、おしゃべり好きではありません。

親しい人や好きな話題なら別だと思いますが、たまに仕事上で話す相手なら、しっかりと距離を取りたいタイプでしょう。

そんな人が、どこか必死で対応しているように見えたのは、きっと新人さんの言動に振り回されていたからです。

「大変そうだ」

こみちは二人の姿を脇目に通り過ぎました。

そして3度目に会ったのがこみちの働くフロアです。

その新人さんはどうやら介護士ではなく、リネン交換をされる方らしく、でもこみちの配属先には別の方が来ているので、その方がどの部署を担当しているのかは分かりません。

こみちがいたところに近づいてきて「〇〇号室どこにありますか?」と聞くのです。

しかし、配属先以外の居室番号を知らないこみちは答えることができません。

「すいません。ここの配属ではないので分かりません」と返事をしたのです。

「あっそ!」

よくあることですが、こみちは人からある意味で「軽く」見られ、別の人には取らないような態度で接して来られることも多いのです。

「そういうタイプね」と思いながらも、こみちはその場を立ち去ろうとしました。

「すいません、〇〇号室は?」

すぐさま別のスタッフ見つけて声掛けしていたので、「なるほど」と思ってしまいました。

最初の1週間くらいはそんな方法も使えます。

しかし段々と周りのスタッフも素気なくなり、その時までに仕事を覚えて終えば良いのですが、まだ細かい部分を確認しないといけない場合には、働き難くなるでしょう。

それでなくても、見かけた配属先は人の入れ替えが早く、仲間として認められるまで時間が掛かるからです。

まして、「自分はこうだ!」というタイプは排除されるので、その人も長続きすれば良いのですが。

こみちは心が読めるというよりも、言動を見てその理由や背景と照合し、どうなって起こったのかを分析してしまうという癖の持ち主というのが正しい説明でしょう。

リネン交換や掃除スタッフも、これまで何人も出入りがありましたが、初日からグイグイ来るのは珍しいタイプです。

もしもその人が介護士だったら、利用者はその人に合わせなくてはいけません。

あまり介護士には向かないタイプでしょう。

リネン交換なら、その意味では淡々と作業できるので、一人作業が得意な人におすすめですが、ある程度は異業種のスタッフにも大人の対応をしておくべきです。

ウチの施設の採用担当者って、変わった人も拒まないところがあります。

だからこそ、こみちも採用されたのだと思うのですが。

こみちの場合、視覚や聴覚に加えて、例えば皮膚感覚など、相手と触れる部分が多くなるほど、相手の気持ちも深く伝わってきたりします。

何かを手渡された時に、また至近距離で目が合った時に、独特の雰囲気というか、想いが見えたりします。

時に悲しみのようなマイナス的な感覚は、こみちの気持ちにも強く伝わるので、精神が健康でないと受け止めることができません。

こちらから発していると大丈夫でも、発していないと集まってしまった時に、対処できなくなってしまいます。

まぁ、そんな風に感じながら生きているのがこみちです。

気持ちが分かりやすいと思う部分と、それ故に疲れてしまう部分があって、長時間の介護職は精神的も疲労が半端ありません。