「地域包括支援センター」の役割ってなんだ? 実践編

 介護福祉士試験対策として

2000年から動き始めた介護保険制度も、社会構造の変化に合わせて3年毎に見直されています。

そして、2005年の法改正では独居高齢者や認知症高齢者の増加、在宅支援、介護と医療の連携という課題に対応する形で、「地域包括支援センター」は創設されました。

それにより「地域包括支援センター」だけではなく、「地域密着型サービス」なども動き出し、例えばこれまで在宅ケアか施設ケアかという二択だった支援方法が、両者を流動的に活用するような、そして介護に頼らない予防策に対しても目が行き届くようになったのです。

地域包括支援センターは、地域の中学校の設置数同様に約2〜3万人程度の人口をカバーするエリア毎に設置しています。

設置者となるのは、市町村とそれらから委託された者と定められていて、4つの大きな課題に対応します。

その4つとは、介護予防、介護保険制度外を含む高齢者の生活相談と支援、虐待や権利擁護、ケアマネへの支援です。

地域包括支援センターの実情を考える!?

在宅と施設の流動的サービスを踏まえた時に、在宅には居宅系ケアマネが、施設には施設系ケアマネをケアプランの担い手として立てることになる現行の介護保険制度では、どうしても両者をシームレスに移動したような連携に支障が生じます。

そこで、地域包括支援センターという両者を統括するようなポジションを創設することで、両ケアマネへの支援も容易になると考えられるでしょう。

また、利用者の立場で考えれば、介護保険制度では利用者の自立支援や個人の尊厳などを重んじることもあり、受動的なサービスではなく能動的に受けられるサービスを目指していて、それはつまり、高齢になっても「どう生きたいか?」を利用者自らが選択できる環境を整えています。

そして、地域包括支援センターの役割は単純な介護保険制度の運営者ではなく、保険外となるような高齢者の相談や支援も含み、具体的には独居で暮らす高齢者の生活サポートや支援策の提示などにも及ぶでしょう。

しかし、考えてみれば、ひとりの地域包括支援センターのスタッフが日に5人の相談に応じたとしても、月に関われる相談件数は150人程度でしかありません。

また、一回の相談で解決するような問題もあれば、預貯金の少ない生活困難者などの入所先を探すような問題になれば、かなりの仕事量を割かなければいけません。

つまり、現状65歳以上の高齢者は総人口の30%近くいるので、各地域包括支援センターが支える高齢者も計算上は8000人とか1万人規模に及びます。

もちろん、同時に全ての高齢者が支援の対象になる訳ではありませんが、慢性的な人材不足の中で地域包括支援センターが稼働していることに変わりはないでしょう。

一般的な介護サービスを提供する介護スタッフのように、ある程度決まった作業を繰り返すのとは異なり、権利擁護のような法的問題になれば、高齢者の人生を大きく左右するような分岐点を迎えます。

また、高齢者支援では、遠方の家族との連絡や調整も起こり得るので、一方的に事務的な処理が難しいという側面も含まれるでしょう。

まとめ

こみち自身も実務者研修を受講した時に、「地域包括支援センター」の存在を初めて知りました。

そして、テキストで読んだ時には分からなかった「役割」について、ケアマネや介護施設の種類と目的、さらに高齢者の日常や老化といった複合的な理解が深まるに連れて、「地域包括支援センター」に託された課題にも気付かされました。

さらには、支援センターのスタッフが、保健師や社会福祉士、主任ケアマネなど、医療や介護、社会(行政)のエキスパート集団で、何より課題が複雑な個々の事案を懸命に対処してくれる存在であることも理解できます。

膨らみ続ける医療、介護費用を抑えながら、行き場を無くした高齢者が社会からこぼれ落ちないように支える難しさは、言葉では言い表せないでしょう。

しかし、今はまだ家族と共に暮らして居る中高年の方々も、いずれは老いて配偶者を先に失い、独居高齢者となるかもしれません。

そんな時には、地域包括支援センターのスタッフがいてくれることで助かることも多く、また地域との付き合いや社会との関係を含めて、介護士ではなくても考えるべき社会問題と言えるでしょう。