「ユニットケア」は本当に高価なのか?

 「ユニットケア」って何だ?

「ユニットケア」とは、従来型と呼ばれていたケアと異なる介護方法です。

その違いは建物の内部構造にあり、「ユニット型」の場合には中央の大きなフロアを囲むように個室が配置されています。

その配置によって、入所者は自身の居室とフロアを行き来することが簡単にできます。

一方、従来型の場合、例えば個室だとしても、その個室は他の居室同様に廊下に出ることに変わりがなく、例えるならホテルの客室のようなイメージです。

介護スタッフ側から見たユニット型と従来型の違いは、ユニット型が10名程度のグループを構成し、個々の性格や抱えているケアの方針に従って柔軟にきめ細やかな対応が可能になります。

当然ですが、従来型が60名や80名、時には100名にも及ぶ大所帯を多くのスタッフが一斉に介護するのに比べて、ユニット型では少数のスタッフがありとあらゆるケアを限られた人数で応対しなければいけません。

そのために、従来型なら「オムツ交換」のグループや入浴担当」のグループなど、限られた介護スキルだけに特化しやすい反面、ユニット型では何でもこなせるスタッフを配置する必要があります。

月額の利用料金として、ユニット型の場合、従来型よりも3万円くらいの差がありますが、入所者にすれば、馴染みのスタッフに対応してもらえますし、些細な注文にも応じてくれることを考えると、決して割高とは言えないでしょう。

具体的に

ある利用者が、別エリアにある棟から移動して来ました。

暴言や暴力行為が見られ、そのエリアでは応対が難しいと判断されたからです。

こみちが勤務しているのは「ユニット型」エリアで、10名の利用者を担当します。

10名しかいませんから、個々の性格や好み、生活習慣などもそれだけ深く熟知しています。

さらに言えば、施設としても利用料金が高い「ユニット型」を優先的に受け入れることもあり、空き部屋がなかなかないのも特徴です。

新たに入所された人がいた居室も、前日まで別の方が使用していました。

家族との連携で、自宅での介護に挑戦することが決まり、退所となったのです。

現役介護士の立場から判断すると、利用者の状態は「オムツの着用」や「自力での食事」など、生活レベル(ADLとも言いますが)がどこまで可能かが重要です。

入所された時に少なくとも歩くことができた利用者が、入所後の生活で車椅子や寝たきりになっていたら、一概には言えないものの、その施設でのケアが十分に機能していないとも考えられるでしょう。

事実、暴言や暴力があるとされた利用者ですが、今は大人しく、とても穏やかな表情で過ごされています。

最も、人の性格は、入所した数日では判断が難しく、そのでの暮らしに馴染んだ頃になって新たに分かることも多いのです。

例外がないとは言えませんが、大勢の利用者を大勢のスタッフで担当する場合、スタッフは決められた作業をいかに効率的に熟せるかを気にしています。

担当している作業以外のことを利用者から訴えられても、本音としては応じる時間的な余裕がありません。

特に経験の浅いスタッフの場合、先輩たちからの目もあって、持ち分を消化させることにどうしてもこだわるからです。

一方、ユニット型のスタッフは、同時に数種類の作業を抱えることも多く、オムツ交換を終えたら、すぐにレクリエーションの担当になったり、配膳やゴミ捨て、物品の補充、そして利用者からの要望などなどをこなします。

例えば、こみち場合、食事の準備から食事介助、口腔ケア、寝かせ、体位変換、排せつ、ゴミ捨て、レクリエーション、体操、掃除、物品補充、リネン交換、目薬や爪切り、入浴介助、記録、ざっと思いつくだけでもいろんなことを担います。

ただこれらは項目を挙げたに過ぎず、実際には個々の利用者のこだわりや癖、性格に合わせて例えばトイレ誘導にしても声掛けの仕方から手順まで同じケアはありません。

そこがユニットケアのやりがいでもあり、肉体的にも精神的にも疲労しやすい大変な部分です。

従来型のイメージは立ち食いそば!?

ユニット型のスタッフから見ると、従来型の利用者はいつも「立ち食いそば」で食事している感覚です。

実際、詳しくユニット型と従来型での食材が異なるのか比較したことはありませんが、ユニット型での食事を提供する場合、「お待たせいたしました」とか「〇〇でございます」など、利用者の名前に加えてひと言を添えて配膳します。

冷めたお茶を取り替えることはもちろんですが、体質的に問題がなければ、事前に持参された飲み物を提供することも珍しくありません。

また、配膳された料理が冷たく感じた時など、必要があればレンジで再加熱することもあります。

特に夏場などは、冷たい麦茶や温かい緑茶など、利用者の好みに応じて提供します。

その点が月額数万円の価格差として現れ、従来型の場合には決められたお茶の提供しかありません。

ささっと手軽に空腹を満たすことができる「立ち食いそば」を例に挙げたのは、従来型ケアの画一されたサービスを表したかったからです。

例えば、ユニット型を利用する場合、月額15万円から20万円だとして、同じ内容が従来型なら10万円から12万円までで受けられるので有れば、確かに経済的負担を抑えたい事情があれば嬉しいポイントです。

しかし、特養と有料老人ホームとの金額構成が、「家賃の有無」によって生じているのとは異なり、ユニット型と従来型では明らかにスタッフのサービスは異なります。

仮に従来型配属のスタッフがユニット型同様のサービスを担うとしたら、それこそ無尽蔵な体力と卓越された介護スキル、さらに熱意が無ければ継続させることが難しいでしょう。