介護施設の入所者目線で分かったこと

 貴方は自宅にこもっていられますか?

難しい話は抜きにして、単純に部屋にどれくらいの期間、こもっていられるだろうか。

一年以上はこもっていられると答えた人の中には、自身でも気づいていない「将来の約束」や「守られた暮らし」が永遠に続くと思っていないだろうか。

例えば、就活時に職歴を求められた時に、3年以上のブランクがあれば面接官はきっと「この時期は何をしていましたか?」と質問してくるだろう。

その時に3年制の学校に通って資格を取得したと答えた時と、家にこもって何もしていなかったと答えた時では、受ける印象が異なることは想像できる。

一方で、「家にこもっていたこと」には違いないが、例えば独立を考えて挑戦したが上手くいかなかったと答えた場合も、先の2つとまた異なる印象を受ける。

つまり、「状態」としては同じでも、「目的」が異なれば受ける印象はまるで違うということ。

高齢者になってからの施設入所が意味するもの

これはこみち自身の経験であるが、入所して3ヶ月以内で退所しなければ、利用者は在宅復帰は絶望的だ。

そして、それ以上の期間になった利用者の多くは、「帰ることができない理由」を抱えている。

利用者自身の健康状態ということもあるが、家族との関係や自宅の環境など様々な理由で帰ることが困難なのだ。

例えば、歩ける人なら、1時間ほどで4キロくらいは移動できる。

車の運転ができるなら、1時間で30キロ以上移動するだろうか。

車イスの人はどうか。

体力的な意味で考えるとそうとは限らないが、例えば介護施設に暮らす利用者の場合、1日の移動距離が1キロにも満たないことも珍しくはない。

つまり、それだけ同じ景色を四六時中見ていることになり、例えば我々介護スタッフとは異なる視点で世の中を感じている。

それは我々が自宅にこもった時と同じで、家の中だけしか見ないで過ごすことは穏やかさが得られる一方で、変化や刺激には乏しいことになる。

現代なら、部屋にいてもパソコンで世界中の人と話せるし、ゲームなどを通じて遊び交友を深めることもできる。

もちろん、家にいても仕事はできるし、サラリーマン並みに稼ぐことも夢ではない。

問題があるとするなら、「変化しない暮らし」に価値を見出せるのかだろう。

それこそ、YouTube を使えば、料理をするだけ、ペットを飼うだけ、話をするだけでも稼ぐことは可能で、場合によってはその収入がサラリーマン以上になることもある。

一方で、介護施設で暮らし利用者にもいろいろなタイプがいて、一日中ほとんど動かない人がいれば、リハビリを熱しに取り組む人や、趣味を楽しむ人もいる。

とはいえ、施設で暮らす利用者は、別の施設へと移動することもあるが、数年後には今以上に狭い領域で生活を送っている。

つまり、それまでの間を自分らしく施設で過ごすということだ。

例えば、介護スタッフが外の世界をあれこれと話聞かせて、それを励みに彼らが退所できるなら意味がある。

しかし、何らかの理由で在宅復帰が不可能になった人に、「外の魅力」を伝えることは時に酷な結果を強いる。

ドアが閉まっていること。

自分のテーブルに専用のティッシュが置いてあること。

言えばスタッフが迅速にトイレまで誘導してくれること。

他にもいろいろとあるが、利用者になるとそれまでとは異なることが気になってくる。

それだけ、人は置かれた状況で見ている世界も違う。

20代からの介護職

他部署ではあるが、半月前から急に若いスタッフが大量に増員された。

中には20代前半の若者もいる。

介護職として経験を積み、利用者が求める食事やトイレ、入浴などの技術を身につければ、介護士として働くことができるだろう。

しかし、実際に未経験から始めて気づいたことは、介護士という働き方だけでは5年くらいで限界を迎える。

その理由は、介護士として提供した「介護サービス」で利用者の何か変わるのかと考えるからだろう。

例えば、入所した利用者が在宅復帰できる場合の条件に気づいた時、その条件が介護士の働き方では補えないものだと気づく。

つまり、どんなに施設で利用者のためにと頑張っても、それは在宅復帰には繋がらず、言い換えれば施設での暮らしに夢を与えることはできない。

例えば、介護スタッフとして入所すると、勤務経験に応じて介護福祉士やケアマネへと昇格できる。

しかし、ケアマネはケアプランを作る責任者ではあるが、その職種になった人は介護士以外にも看護士や理学療法士などの出身者もいる。

介護スタッフあがりのケアマネは、現場経験からケアプランを立てることになるが、看護師や理学療法士はまた異なる経験を元にケアプランを立てるだろう。

当たり前のことを言っているのではなく、介護スタッフの仕事で利用者の在宅復帰ができないことを思い出せば、介護士あがりでケアマネになっても経験をそのままに活かせない。

ケアプランを立てる時に「在宅復帰」はそもそものテリトリーには存在しないことで、どうしても施設内での安心安全な暮らしを利用者に体感してもらうような介護サービスにまとめてしまう。

できない理由は、利用者とその家族との関係にあるからだ。

その意味では、介護士ばかりではなく、看護士や理学療法士の場合も変わらないように感じてしまう。

例えば、理学療法士としての経験は、高齢者介護で必要なADLの改善に繋がる。

大きなポイントは、これから「できること」を理解している点だ。

介護士としての経験は利用者の日常生活を支えるために必要なスキルではあるが、どこまでストロングポイントにできるかが分からない。

それはつまり、介護士として働き続けた時に多くの人が考えることでもある。

現場経験が5年10年と長くなった時に、介護士としては十分に働けるとしても、そこからさらに一歩を踏み出すためのルートが「ケアマネ」に限られてしまう。

そのケアマネでも、他の看護士や理学療法士をバックボーンに持つ人たちと同等に活躍するなら、場合によっては看護士資格や理学療法士の資格取得を目指す方が良かったりする。

中高年ならまた割り切りもあるが、20代から介護士となると描ける夢もケアマネだけではないだろう。