第34回介護福祉士国家試験対策 「認知症の理解」を勉強する パート4

 認知症の理解をさらに深めるために その2

認知症の治療

国内における代表的な認知症の種類を「パート3」で確認しましたが、今回は認知症の治療をアルツハイマー型認知症と血管性認知症を例に確認します。

治療法としては、主に薬物療法と非薬物療法に分かれます。

薬物療法

アルツハイマー型認知症の場合

国内で認可されている治療薬は、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンの4種類です。

アルツハイマー型認知症は、海馬の病変により、記憶障害としてエピソード記憶など日常の出来事を忘れてしまうことから症状が始まります。

その後は側頭葉や頭頂葉へと神経変性が拡大します。

側頭葉には聴覚、言語、頭頂葉には知覚、認知の神経組織があるので、BPSD(行動、心理症状)として現れるでしょう。

例えば、アルツハイマー型認知症と診断された脳内では、アセチルコリンが低下しています。

アセチルコリンとは、神経伝達物質であることから、アルツハイマー型認知症になった脳内での伝達経路が低下しているとも言えます。

そこで、治療薬の1つ、ドネペジルは国内最初に臨床されましたが、低下したアセチルコリンを賦活(ふかつ、活力を与える)させ、服薬開始直後には食欲不振、下痢、便秘、焦燥感、易怒性(イラつく)などの副作用が見られます。

血管性認知症は、脳卒中で起こった脳内の障害が原因となり、前頭葉の変性から運動機能障害を招きます。

そして、血管性認知症の中核症状に効果が期待できる国内での治療薬はまだありません。

しかし、食欲不振やせん妄、めまいなどの症状に対して、個別的に服薬する対処療法が行われます。

非薬物療法

まず認知症が中核症状と呼ばれる根源とそこから発生する行動、心理症状とに分けられます。

薬物療法が中核症状に対するもので、非薬物療法は行動、心理症状に対するものです。

つまり、認知症ゆえに現れる不穏や攻撃的行動ごとに対策を講じます。

心理療法も非薬物療法の1つですが、対話や訓練などを介して症状の緩和につなげるものです。

認知症に限らず、高齢者の心理学的支援方法としてポピュラーなものとして回想法があります。

過去の記憶を振り返ることで、記憶や思い出を呼び起こし、自身の人生を整理し直すことで、主体的になれるというものです。

他には音楽療法もあります。

アクティヴィティケアとは、残存機能を活かした生活を心がけ、主体的に生活できるように支援するものです。

ふさぎ込みやすいなどの生活習慣を改善することにもつながります。

認知症の人に対するアセスメント(情報収集、課題把握)方法

先に結論から触れるとすれば、認知症の人だからと言って特別な対処法がある訳ではありません。

むしろ、原理原則に戻り、「高齢者福祉における介護とは何か?」を再確認することでしょう。

つまり、介護保険制度が定められた背景に立ち返れば、個人の尊重や自立支援という目的を目指した介護サービスを介護士は理解し、進んでいくことになるのです。

その意味では、認知症の人にもまた発症前の暮らしや生き方、生きる目的があったはずです。

しかし、発症によって困難なことも増え、生きる上での取捨選択を強いられてきた部分もあったことでしょう。

そこで、アセスメントを行う場合には、先入観を持ち過ぎないことも大切ですし、認知症の症状に応じたポイントを新たに追加します。

具体的には、肉体的精神的な苦痛感じないこと、コミュニケーションが維持されていること、日常生活において自立できるように取り組んでいること、環境に馴染み安全で安心を感じていること、本人にとっての高い生活の質や意思を尊重した権利擁護が果たされていること、家族の健康や社会的な意味での介護環境が整備されていることなどが挙げられます。

また、認知症による中核症状やBPSDばかりに着目せずに、例えば本人の生活歴を知ることで、現状だけでは気づかなかった事実の裏づけができることもあります。

さらには、その支援の輪を介護施設のような限られた環境だけに留めずに、社会との結びつきの中からも得られる工夫が不可欠です。

そこで、例えば地域包括支援センターでは、第一号介護予防支援事業の他にも、総合的な相談支援、権利擁護、ケアマネジメント在宅医療・介護、認知症総合支援と幅広い業務を担っています。

「地域ケア会議」という発想

地域ケア会議とは、地域に住む人々がその地で住み続けられるように、生活面で起こった問題やその予防策などを地域包括支援センター役目自治体が主催者となって、各関係者と意見交換を行うものです。

話合わせる内容によって、会議のメンバーも調整しながら、高齢者になっても必要な支援を受けて住みなれた場所で暮らし続けられるようにと取り組みます。

さらには、インフォーマルサポートやチームケアを活かします。

家族や近隣住民、友人知人、民生委員、ボランティアなどのインフォーマルサポートによって、公的なサービスでは補いきれない細かな部分にまで触れながら、高齢者福祉をチームとして支えます。

以上をもって、認知症の理解に関する学習を終えることにしましょう。