高齢者の一人暮らしに学ぶ
80代になった叔母がどういう経緯で入院に至ったのか、実はまだよく分かっていません。
それくらい、こみちたち家族と叔母との関係は希薄でした。
しかし、叔母は父にとっては唯一の兄妹なので、父を介する形でこみちとも関係が生まれました。
数日前、こみちは父の行動に立腹し、少なくとも叔母に対して筋を通して欲しいと告げたのです。
何より、叔母は独身で子どももいませんから、突然の入院となれば身内の誰かが動くことになります。
大人の事情というもののありますが、今までに色々な形で助けられたはずですから父も「誠意」を見せるべきでしょう。
さてさて、最近の悩みは「退院後の暮らし」です。
何より、今まで通り一人暮らしを続けられるまでに回復しているのか。
こみちが叔母の退院前までに面会を希望している大きな理由でもあります。
しかしながら、病院の対応はコロナを理由として面会に応じてくれないという父からの話でした。
ここでも難しいと思うのは、「会えるか会えないか」ではなく、「一人暮らしできるか否か?」な訳ですが、父が病院に電話で確認したこともあり、「会えないらしい」という答えで打つ手を失ってしまったことです。
一方で、病院からの提案は関連する施設への移動で、「早めに答えが欲しい」という催促だというのです。
ここで、介護士として施設で働くこみちとしては、大きく2つのストーリーが浮かんでいて、リハビリを積極的に取り入れ、完全な一人暮らしは難しくとも体調や家族の予定が合えば外泊もできる環境を残すという選択肢(希望は老健)か、安心して暮らせる施設を選ぶという選択肢(希望は特養か有料)です。
そこで、例えば特別養護老人ホームを終の住処と考えた時、待機人数がどれだけいるのかを調べてみると、計算上は軽く2年から3年くらいの待ちになってしまいます。
しかし、ある施設に電話で聞いてみると、その順番は申し込み順ではなく、事情によって多少の前後はあると言います。
つまり、どれだけ緊急性ややむを得ない事情があるのかによって、入所までの期間は変動するということでしょう。
ただ、実際に介護士として働いてみて、介護施設の良し悪しはスタッフに尽きると実感します。
一般的な施設選びでは、施設の装備や食事、リハビリサービスの有無など、見える評価で決定するしかありません。
それだけに、施設は入所してみなければ、本人にとって合う合わないは分からないというのが本音です。
話は戻りますが、叔母の現状を確認できないまま、退院後の暮らしを決めることがどれだけ難しいのか想像できるでしょう。
少なくとも、呼びかけに応えられるのか、オムツではなくトイレを自分で使えるのか、食事は一人でもできるのかなどなど、最低限のことが分からなければその後の生活も決めようがありません。
まして、介護保険制度の仕組みを始めて説明される多くの家族にとっては、老健や特養という施設の違いさえ知らないこともあるでしょう。
さらには、先日訪れた叔母の住まいの片付けもしなければいけません。
入院するまで暮らしていたので、生活がそのままになっているからです。
つまり、水光熱費の支払いや各種支払いの状況さえこみちたちは知らないので、それこそ1つずつ確認するしかありません。
まして、特養や有料に入るとしたら今の住まいを残すのかどうかも問題ですし、現段階ではお世話になっている地域包括支援センターの担当者とも繋がっていたいので、「住民票の所在地」も動かすべきではないのかとも悩みます。
施設への入所が決まれば、そこで新たなケアマネが付いてくれますから、そこ時までは担当者を変えずに相談できたらと思ってもいます。
場合によっては、都内の施設だけでなく、近県の施設も視野に入れて探していかないと年末年始を挟む時期と重なり、すぐに入所できるかも分かりません。
叔母の場合には、現役時代にしっかりと働いていたこともあって、厚生年金の受給もあるので、その分は施設選びもまだ広く考えられます。
その上で、ユニット型や従来型のケアを検討することになりますが、優先順位としては受け入れてくれる施設を探すことに尽きるというのが本音です。
そして、叔母自身がその現実を受け入れてくれるのかはもっと大きな問題で、仮に一人暮らしを譲らないとなれば、それこそADL次第で、平屋の物件やサ高住を探すこともあるでしょう。
しかし、現実的には病院からも急かされているような印象で、まだ認定調査の結果も示されていないだけに、実際のところ、誰が主体者として動いているのかが掴めません。
どちらかと言うと父もあまり積極的ではありませんから、場合によっては病院が案内する施設へとサービス内容も理解できないまま移動することだってあり得ます。
それでもいいという雰囲気すら父からは感じるだけに、こみちとしては一度でも叔母の現状を確認してみたいと思ってしまいます。
病院で簡単に撮影した映像でも、電話での肉声でも、何らかの形でと思いますが触れてみたいと言うのがこみちの気持ちです。
しかし、父を介する以上は病院の担当者にそこまで踏み込んだ交渉は難しく感じます。
介護士の仕事としてならまだしも、父と叔母の関係を重視するなら、父に交渉してもらうのが良いのかもしれません。
その結果として、仮に最善の策ではなかったとしても、それは「運命」として受け止めるしかないのでしょう。
となると、こみちとしては良さそうな施設を探すことくらいしか出来ず、叔母の様子も退院後の目処も見えないままに流れを受け入れるしかなくなります。
介護度さえいつ頃に出されるものかも知らされていないので、施設選びができるのも一週間なのか一ヶ月なのかも分からずに、様々な問題だけが停滞したまま時を過ごしていると言うのが実情です。
あっという間に一週間が経過していると言う印象で、叔母が清潔に扱われているのかも気になりつつ、ADLや廃用症候群などになっていないのかも心配です。
正直言って、家族が大切な存在だと病院や施設に示していかないと、相手も人なので事前の気構えが変わります。
リハビリをして再び健康的な生活に戻るのも、このまま寝たきりになりオムツが離せないまま、食事量も減少すると言うことも無いとは言えません。
それを決定するのは、家族ですし、預かってもらっている病院や施設スタッフの対応でしょう。
情報を提供するだけでは父もイメージできないみたいで、今日もいつもと変わることなくテレビを見て過ごすのです。
「病院には連絡したの?」
「まだ向こうから掛かって来ない」
「向こうから?」
叔母の今後を決めるのは、もちろん叔母自身ではありますが、父がその手助けをする役目と理解していないのか、病院からの連絡を待つスタンスが抜けません。
このままでは病院の勧めに従って施設も決まり、叔母の状況も分からないまま時が来て最期の連絡を受けると言う流れに進みそうです。
それでいいと言う父の気持ちは、「ただもう面倒くさい」という一心なのかもしれません。
父には、その内自分自身のことにもなるのだからと言っても、どこか自分は違うと思っていることに驚かされます。
「オムツになったら、面倒みれないから施設だよ」
でも、そんな風にならないと思っている根拠を聞かせて欲しいくらいです。