第34回介護福祉士国家試験対策 「認知症の理解」を勉強する パート2

 「認知症の理解」を学習するために

認知症は、介護保険法5条の2には「脳血管疾患、アルツハイマー病、その他の要因に基づく脳の器質的な変化により日常生活に支障が生じる程度にまで記憶機能及びその他の認知機能が低下した状態」と定められています。

余談ですが、「便秘」の種類でも機能性便秘が水分不足などで蠕動運動が不足するのに対し、器質性便秘では腫瘍などの原因から腸そのものが変化してしまうことで起こると説明されます。

つまり、認知症についても、脳で起こる血管の損傷やアルツハイマー(脳神経が変性する)などによって、発症前の状態とは異なる器質的変化が起こり、それが原因で日常生活に支障するほどの認知機能が低下してしまうことと解釈できます。

さらに言えば、中高年になると物忘れが増えますが、器質的変化を伴わない場合で日常生活の支障に至らない程度であれば、認知症ではないということでしょう。

認知症ケアの基本

ウェルズの介護原則に従うなら、先ずは残存機能と喪失機能の部類が不可欠とされます。

その上で、回復見込みがある機能については回復へのアプローチで、すでに喪失された機能についてはその使用を抑え、さらに残存機能については積極的に活用しながらケアを継続させます。

というのも、廃用性萎縮や廃用性症候群などは、日常的に活用されないことで喪失していく機能を指し、筋力や関節などの機能低下から、褥瘡や拘縮などの問題に発展しないことが必要だからです。

認知症の基本

認知症は現時点で回復の見込みがない病気として位置づけられています。

当初は認知機能の低下が招く問題の克服が主たるテーマとされてきましたが、そこから認知機能が低下した本人を主体とし、彼らを取り巻く背景を理解したケアへと変化してきました。

パーソン・センタード・ケアの役割

そもそもの話として、物事の理解や把握は個人によって異なります。

ある情報を得た時に、単なる一情報として理解する人もいれば、関連する情報と照らすことでさらなる意味や価値を見出すこともあるからです。

つまり、視野の広さや経験値、認識に対する理解度などが複合的に関わり、我々自身もまた日常生活で得た情報を活かしながら生きています。

その意味では、認知機能の低下によって何らかの部分で以前とは異なることが起こり、時にはそれが一般的には理解し難い行動に思えたりするかもしれません。

しかしながら、当の本人にすれば、与えられた情報を残された機能を活かして処理した結果、その行動に到ったわけです。

つまり、介護士が頭ごなしに「それは違います!」と制しても、認知症の利用者にはただただ困惑招く行動にしか見えません。

その意味で、「誰にとって正しい行動なのか?」を考え、最終的には利用者本人のQOLに反映させられることが必要です。

覚えておきたい認識症の種類

アルツハイマー型認識症

血管性認知症

レビー小体型認知症

前頭側頭型認知症

以上四つを四大認知症と呼びます。

認知症の特徴的な心理と行動

認知症と診断される人は、幾つかの特徴的な心理状態を持ち合わせています。

そのいくつかを紹介すると、不快感、焦燥感、不安感、被害感、混乱、感情の変化、自発性の低下と言われます。

必ずしも全ての人に同じような特徴が見られるとは限りませんが、脳の機能の一部が使得ない状態になった時に、それらの感情が芽生えやすいということです。

作話といって、認知機能が低下した利用者の中には、いろいろな作り話をする人がいます。

その内容は様々ですが、作り話をしてしまう背景もまた認知機能の低下から起こる影響が含まれていると考えられるでしょう。

どのような記憶から失われてしまうのか?

一番最初に疑われる記憶は、エピソード機能と呼ばれるものです。

つまり、日常生活に起こった出来事が無かったものとして失われるもので、昨夜のおかずのメニューということもあれば、夕飯そのものということもあります。

介護施設でも、湯上がりの利用者に「お風呂から出て来たんですか?」と尋ねて、「入っていない」と答えることも珍しくありません。

次に失われてしまうのが、意味記憶と呼ばれる一般的には「知識」とも言われる内容です。

九九の計算だったり、漢字だったりします。

最後に忘れてしまうのが、手続き記憶と呼ばれる動作の手順に関する記憶です。

箸が持てないとか、ドアノブを回して開けられないとか、以前ならできた手順も忘れてしまいます。

その他の特徴「見当識障害」

見当識障害とは、生活におけるポジションのことです。

例えば、今いる場所やおおよその時間、対面した相手など、正確ではないにしても大体の感覚として認識しているものを指します。

この見当識障害も認知機能の低下によって顕著に見られる特徴です。

実際の介護現場では、「2時にお願いします」と言っただけでは利用者が理解できません。

なぜなら、今が何時なのか、2時間経過するとはどこで確認できるのかと、なってしまうからです。

認知症といえば「中核症状」

見当識障害をはじめとした記憶障害や失語などの機能障害を中核症状と呼びます。

また、BPSDとも呼ばれる心理症状には認知症の人が抱く感情(不快感や不安感など)や行動を指します。

つまり、根底には中核症状があって、それに関連してBPSD(心理症状)が横たわります。

妄想や幻覚、精神不安が結びつけば、物取られのような特有の特徴が現れるのかもしれません。

また、誤認することで焦ってしまう場合には、介護者による声掛けによって穏やかに暮らせることもあるでしょう。