利用者の生き甲斐に介護士はどう向き合うのか?

 介護士としての本音

こみちの仕事ぶりは、決して才能に溢れたものではない。

しかしながら、「アレ?」と感じたことを少なくできた時はいい仕事になってきた。

その意味で目下の懸案は、ある利用者との関わりにある。

その利用者は背中間狭窄症を患っていて、時折り腰痛を理由に離床を拒む。

それも一回ではなく、時に一日中だったりもする。

数ヶ月前から、自力でのトイレが難しく、介護士による排せつ介助も始まっているが、人を選ぶし、それさえも拒否することがある。

認知機能の低下も見られるが、こみち自身は少し違和感を持っていて、それが「アレ?」の要因だ。

というのも、コロナ禍の影響もあり、家族との面会が制限されることで、利用者の様子は随分と変化した。

何より、スタッフのやる気も減っている。

つまり、「アレ?」を感じていないのか、利用者の変化に無関心で、何か行動を起こすスタッフが見つからない。

スタッフの仕事ぶりに厳しい先輩も、最近は規則を守っているかに終始し、利用者の変化には疎くなった。

なぜに介助を拒むのか。離床を拒むのか。

こみちとしては、実際に寝たきりの利用者もいるから、起きて来ないことを問題視しているわけではない。

ただ、痛みを訴える利用者がいた時に、例えば改善できない痛みなのか、それとも痛みそのものが認知機能低下と関連するものなのかということだ。

介護士は立場上、医療的ケアに意見することはできない。

しかし、看護師にしてもその利用者の行動を追えているように思えないし、そこから発生する問題に一応の答えを持っているとも思えない。

つまり、何か起きた時に平気で「なぜ、報告しなかったのか?」と言い出しそうな側面もある。

かと言って、これまでにも時折り報告や相談を持ち掛けるが、看護師の返事はいつも不明瞭なものだ。

それこそ、部外者のこみちに説明する義務はない。

しかしこみちとしては、こんな風に考えてしまう。

そもそも論として、その利用者がなぜに今の介護施設に入ることになったのか。

医療機関でも100%の患者を治すことはできないし、望んでも叶えられないこともある。

それが、介護施設になれば医療ケアの限界値も低く、それだけ割り切ることを迫られる。

治療の余地が残されているなら、より病院に近い所で、できる限りの処置や痛みの緩和を目指す方がいいように思える。

週に数回の頻度で、痛みを理由に離床しない時間が、こみちには勿体無いと思えてしまう。

それこそ、どうするべきかは「介護の難しい部分」でもあるから、介護士が安易に答えを見つけられるものではない。

何より、もう90歳迎える年齢であることから、痛みを抑える薬を控える必要性と、服薬による内臓の負担とを比べた時に、痛みを伴いながら生活することを選んだ背景が気になる。

利用者自身は服薬を望んでいて、できるなら病院での正式な治療を訴えている。

それはつまり、完治するか否かではなく、現状を受け入れているのではないということ。

にも関わらず、対応に動き出さないのはなぜだろうか。

何より、こみちが当事者だったら、改善できるならして欲しいし、できないなら理由を知りたい。

そして気になるのは、利用者が頻繁に不満を訴えていることを家族は知っているのかということ。

残念な話だが、明確には言わないが、利用者を肯定的に思っていない家族がいることも事実だ。

看取り段階になっても連絡をして来ない家族もいるし、時に自分は悪くないをアピールしたがる家族もいて、こみちとしては「そこか?」と思うけれど、いろいろと事情もあるだろうから過敏に反応はしない。

もしもこみちの親だとしたら、まずは現状の確認をしたいし、治らないならそのこととどう付き合っていくかを本人や家族を含めて相談するだろう。

服薬を控えることを選び、その結果として痛みが頻発しても、それが希望なら介護士としてはそれらを前提に介護を提供する。

当然に思える段階も、現場の介護士には伝わらないことが多い。

というのも、施設勤務の看護師は、介護士の立場を下に感じているし、言っても理解できないと信じている。

ただ、「医療とはこんなものだ」と思い込んでいる看護師は、その理由や根拠に疑問を持たない。

何より、看護科と医学部の違いがあるとすれば、「根拠」への理解ではないかと感じている。

看護師が独断で治療が行えないのは、医療行為が許されても、医療的な決断をする知識や資格がないからではないだろうか。

それはつまり、看護師が介護士に思うように、医師からすれば医学を専門に学んでいない看護師に判断できないと考えるのと同じだ。

正直な話、勤務している介護施設はどうもおかしい所がある。

少なくとも、その違和感の根源がいくつもあるからだ。

その度に施設としての見解を聞きたいが、実際の所は施設もよく分かっていないのだろう。

つまり、どう対処するべきかに困惑し、又は放棄していると思ってしまう。

それこそ本気で介護するつもりなら、医学に関する知識から学ぶべきだ。

医師や看護師が考える思考を追わない限り、実際のところ、歩み寄ることができない。

間違えていても、看護師は介護士の意見を聞き入れないのはいつものことで、それが看護師資格や医学部での教育を示さないと、現場さえ変えることは難しい。