改めて「介護老人保健施設」の役割を掘り下げる!?

 介護老人保健施設とは

介護施設と言っても、その目的によっていくつかに分類されます。

その中でも介護老人保健施設が担うのは、医療に関する処置を受けた高齢者が自宅に戻る際に生じた機能低下を回復させる機関と言えるでしょう。

実際、施設に入所される利用者の多くはリハビリを高頻度で提供されますが、それは急性期を過ぎて回復期に入るからです。

この時期には改善の見込みが高いこともあって、理学療法士や作業療法士の資格を有する機能回復を担う専門家が対応します。

ざっくりと調べたところ、これらの資格を取得するには500万円程度の学費に加えて、三年以上の通学などが必要で、実際に勤務する施設で採用に関する調査をしたところ、40代で未経験からの採用はそれなりに厳しいと教えてくれました。

もちろん不可能ではありませんが、中高年の場合は将来的な意味で進むメリットをどう個人として考えるか問われそうです。

つまり、機能回復の専門家がやり甲斐感じられるのは、この回復期でどれだけしっかりと機能回復させられるかで、病状にもよりますが概ね60日から180日の期間が対象となります。

介護士として入所者を観察する限りでは、3ヶ月超えると在宅復帰率はかなり低下し、入所前から既に退所時期を予め想定しているようなケースでなければ、老健施設の主目的である機能回復は機能維持に変わり、特別養護老人ホームと役割が被ります。

つまり、施設を終の住処と考えて、いかに心地よく暮らせるかが重視され、在宅復帰しても家族の支援が得られない場合には仮に施設を退所されてもそのまま特養ホームなどで移動されるケースも少なくありません。

中には、老健で数年を過ごされる方もいますが、多くは特養ホームに行って馴染めずに戻ってきたようなケースなどで、長期化した利用者の機能が在宅復帰レベルに回復したという話はかなりレアでしょう。

そうなると、改めて老健の役割を機能回復型のリハビリに位置付ける再確認が必要です。

介護老人保健施設の特養化している!?

特別養護老人ホームや有料老人ホームは、入所にさまざまな条件が含まれます。

その意味では介護老人保健施設を利用することは比較的容易にできるでしょう。

そんなことも関係しているのか、コロナ禍という状況もあるからなのか、老健の役割はとても幅広く、本来の在宅復帰がとても難しい利用者が入所されるケースが目立ちます。

特に問題視されるのは、利用者家族との打ち合わせでしょう。

実際、高齢者が自宅に住むとなれば、それまでよりも家族の負担が増加します。

介護施設を丸ひと月利用した場合に、月額で10万円程度の費用が必要ですが、それ以上の金額を稼ぐことができる家族であれば、「在宅復帰」が進まないこともあるでしょう。

実際に介護士として働いて感じるのは、高齢者特有のリズムで、それに合わせるのは精神的な疲労も少なくありません。

しかも介護士は一回の勤務が8時間程度ですが、在宅になると24時間になるので、その辺の問題も施設が入所に応じる際に取り決めるべきことでしょう。

ただ、施設としては対応に慣れた利用者を長期継続させる方が手間も減ることから、在宅復帰とは言いつつも、長期化してしまう状況は無くなりません。

初めて介護士になる人へ

こみちが数ある介護施設の中から老健を最初に選んだ理由は、さまざまな事情で施設を利用することになった高齢者に接することができると考えたからです。

もっとも、こみちの場合は介護士そのものを生涯の仕事としたいのではなく、今のように記事を書かせてもらい、介護業界やこれから介護サービスを利用したい高齢者などを対象に情報発信できたらと考えているからでした。

しかし、実際に働いて感じることは、老健でさえ在宅復帰できるケースは少なく、利用者を長期的に預かることが増えています。

つまり、老健が特養化しているのです。

そのために、例えばこみちのような理由で老健を仕事先に選んでも、大半の利用者が半年を超えている事実や数年を超えているケースも少なくありません。

まして、在宅復帰への取り組みに積極的でなければ、老健を初めての勤務先に選ぶメリットは看護師などの専門職の仕事ぶりを見ることができるくらいになります。

とは言え、医療的な知識を有している看護師も、看護師となってどのような経歴を経ているかがポイントで、一般的には大学病院で専門的な医療ケアに触れ、その後はもう少し小規模な病院に移るなどして、年齢に合わせた勤務を選択しているようです。

その後、老健などの介護施設を選ぶ看護師となるのがよく見かけるパターンです。

中には大学で資格を取得し、そのまま老健に来ている看護師もしましたが、現場経験がほとんど無いので、言われた業務をこなすことしかできません。

何より多くの患者に触れていなければ、看護師も介護士と考えることはそう違わないのでしょう。

それでも、看護師などの他職種を知ることで、「介護」の現実を知ることができます。

もしも最初にグループホームなどで働く場合、認知症の利用者と触れる機会が増えるはずですが、介護士の仕事が家族の代行にならないようにしなければいけません。

というのは、タイプによって異なりますが、認知症の利用者は目が離せません。

座っていると思えば、急に歩き出したり、他人に絡んでいったりして、医療的なケアが必要な高齢者の介護とは異なります。

もちろん、老健には認知症の利用者もいますから、グループホームで働くことに向いているのかも分かるでしょう。

身勝手な言い方をするなら、一年くらい老健で働くと、自分がどんな介護士に向いているかも理解できるので、その時点で老健に残ってもいいし、グループホームや特養、さらには病院の介護部門という選択肢も出てきます。

中には、看護師の学校や機能回復士などを目指して、学校に通う人もいるくらいです。

個人的には、中高年ならまずは仕事をひと通り覚えて、本業又は副業として、どちらが理想的か考えましょう。

というのも、介護士の仕事はとても体力を求められるので、一般的なサラリーマンで週5回勤務する以上に疲労感を覚えるからです。

特にシフト制勤務なので、早朝や深夜勤務もある職場なら、生活リズムさえまちまちになります。

そこで、介護経験を活かした仕事として、介護タクシーや施設専属のドライバーなどもその後の仕事先として考えてもいいはずです。