介護士を続けながら「社労士」を狙うのはありか?

 そもそも「社労士」の魅力とは?

社労士の得意分野は、労務や社会保険の業務となります。

つまり、企業と労働者を雇用契約によって繋ぎ、健全に働ける労働環境を整えたり、行政への関連書類を作成、提出することです。

当たり前の大前提として、有資格者になったからと言って「仕事」が向こうからやって来る訳ではありません。

どうやって「仕事」にありつくのかが最も大切です。つまり、営業力がないと、折角の資格も有効にかつ効率的に活用することはできません。

実際、企業の総務や人事部にいて、ふらっと現れた社労士と名乗る人物に仕事を振りたいと思う人は少ないでしょう。

つまり、社労士の試験を受ける人で、まだこの「営業」の部分を考えていない人は、資格を取ると言う根本的な意味や目的を考えるべきです。

例えば、司法試験を突破して弁護士になったら、社会の中で無敵になれるのではなく、むしろ「法律」の価値や意味を一般人以上に考えて、どのように扱うことが必要なのかをより深く理解しなければいけません。

一方で、社労士の資格を取得すれば、将来的に社労士事務所を構えることができるので、サラリーマンではなく個人事業主や法人化して社長になることができます。

派遣会社を設立する?

例えば、介護士や介護士になりたい人材をあつめて育成し、介護施設へと斡旋するような人材派遣会社を設立したいような場合、「派遣元責任者」の講習が必要です。

「派遣元責任者」として講習を受けるには、いくつかの条件の中からどれかを満たしていることが必要で、その中でも割とクリア出来そうなものが「民営職業紹介事業」の従業員として三年以上働いた人があります。

派遣会社の従業員として三年働くことを指しているなら、有益の職歴となるのではないでしょうか。

つまり、ここで労務系に強い社労士の資格を活かすために、「介護士」の現場経験を極めるよりも、派遣会社の従業員を経て、さらに「介護士の仕事を理解している」立場になることで、起業のチャンスが生れるかも知れません。

ここまでの話を聞くと、なんだかとても壮大なビジネスに思うでしょう。

しかし、社労士の知識を持っていれば、例えば介護施設と介護系研修を提供している会社の双方に働きかけ、あとは働きたい人を集めることができれば、十分に採算は取れるからです。

介護業界の現状

介護施設の人材不足は顕著で、その業務を考えると5年を超えるような長期労働にメリットが少ないからです。

もっとも、労務費をしっかりと捻出する施設であれば話も違いますが、普通に考えて勤務五年後の年収は、異業種ほどの期待は難しいでしょう。

もしも本当にそうだとしたら、老い先短い中高年の雇用ならまだしも、20代の採用は余程の強い動機でもない限り、介護士として働き続けるのはおすすめしません。

まだ若い人(30歳まで)で介護系を考えるなら、生活の安定のために介護士として働き出したとして、3年後に介護福祉士を目指すよりも、夜学で学べる作業療法士や理学療法士の学校に3年通って資格を取ることの方がいいでしょう。

仮に月収だけを比較した場合、金額が同じくらいでも介護士の基本は「夜勤」が含まれます。

つまり、朝出勤して夕方に帰ると言う働き方ではなく、シフトによって早朝もあれば、夕方から出勤して翌朝までと言うような変則業務だからです。

まだ30代までなら体力もあるので負担に感じませんが、中高年になってからは変則業務がなおさらきつく感じます。

若い人なら、介護士を貫くよりも、看護師を含めた他職種の福祉系資格をおすすめしたいです。

一方で、中高年の方で就活に行き詰まっているなら、年齢不問も多い介護施設を検討して欲しいと思うのです。

社労士の期待

これから社労士の資格を取得したら、事務所を開設して安泰だと思う人は勉強をやめた方がいいでしょう。

一方で、社労士の得意としている労働問題に深掘りすることで、例えば介護業界の諸問題に切り込んで行くことはできます。

法律や行政への手続き、労務管理をベースに、介護施設と介護士の双方が利益を受けられる方法を模索して欲しいのです。

病院などでは一定期間、看護助手などで働いてくれた人に看護師資格の道を設けていたりしますが、これと同じようなことを介護施設でもできないかと思うのです。

その大きな理由は、介護士の社会的地位が今もなお低いからです。

ただ、実際に介護施設で働くスタッフの視線がどこに向いているのかを考えると、看護師や作業療法士のように3年以上の専門教育を受けた人と、現場経験だけで取れる介護福祉士では社会的に扱いが異なるのはやむを得ないのかも知れません。

そこには「介護士の役割」が不明瞭なことが要因ですが、これから介護士の地位向上を図る一方で、各スタッフに対しては異業種資格への道を拓いて欲しいのもあります。

それが社労士でなければできないと言う話ではありませんが、労務系の知識をフル活用し、介護業界の発展につながればいいと思うからです。