介護士だからこそ見極めたい「介護施設」の経営方針

 介護施設は「病院の受け皿」それとも「高齢者向けホテル」!?

介護施設と言っても、実はとても種類が豊富です。

それは、利用する高齢者の健康状態や懐事情、家族からの支援など、様々な要素が絡んでいるからです。

例えば、持病の治療で一時的に健康状態が低下した高齢者は、病院での治療を終えてすぐに自宅での生活を始めることが困難だったりします。

そのような場合に、利用したいのが、介護老人保健施設(通称老健)です。

先に紹介しておくと、巷では「老健は3ヶ月しか使えない」と思われていますが、それはケアプランの継続期間の話で、実際には数年老健を利用されている人も少なくありません。

中には五年を超えて継続されている方もいるので、一般的に「終の住処」として考えられている「特養」と機能的に被っている側面もあります。

老健の場合には、医師が在中していたり、利用者に対する看護師資格を持ったスタッフが多いなど、特養に比べてより「病院」に近い施設とも言えるでしょう。

一方で、例えば「有料老人ホーム」の特徴は、高級ホテル同様の接遇と多彩なもてなしが設定されていること。

言い換えば、今までの生活を維持しながら、介護施設でも「自分らしく」を実現したいなら、「有料」一択と言っても過言ではありません。

と言うのも、実際に介護施設で働いてみると、とにかくスタッフの担う仕事は多彩です。

通常のスタッフであれば、何もしないで3分と立ち尽くしてはいないでしょう。

与えられた仕事に加えて、利用者からの要望に対応していると、同時に複数の仕事を抱えながら、忙しなく働き回っているからです。

介護士として働く場合、ここが一つのポイントにもなるのですが、介護士は看護師の補助スタッフなのか、ホテルマンのような客をもてなすスタッフなのかでも大きく役目が変わります。

端的に言えば、地方都市の介護施設ではどうしてもホテルマンのような役目にはなり得ません。

それは時間的な意味合いからしても、利用者と十分に向き合える時間が取りづらいからです。

現役の介護士でもあるこみちの場合、利用者とのそんな時間を捻出するために、通常業務を普段以上のスピードでこなします。

スタッフの中には、一つの仕事として利用者との大変を考える人もいますが、誰かが30分も利用者と話混んでいますと、残されたスタッフがさらに仕事を抱えてしまい、ますます他の利用者には対応できません。

つまり、そこを緩和するには余剰スタッフをどこまで配置できるに掛かってくるのですが、介護保険制度によって収益を維持している施設ほど、現場はどこも似たような境遇となってしまうでしょう。

有料老人ホームのように、利用代金を介護報酬に加えて、オプション料金として徴収しない限り、介護施設の接遇は現場スタッフの努力や負担で補われています。

高齢者は何を考えて生きているのか?

老化現象により、若い頃とは動作が緩慢になってしまいます。

新たに何かを始めるのも、容易ではありません。

しかし、これまでの生活で当たり前だったことは、基本的に高齢者になっても維持されます。

その最たる部分が「知識」でしょう。

実際、読書をしたり、絵を描いたり、または社会情勢について話たりすることが好きな利用も少なくありません。

一例ですが、「司馬遼太郎のこの国のかたち、読んだ?」と話を振ってくる利用者がいます。

じゃあ、別のスタッフにも同じような話をするのかというと、そうではありません。

つまり、対応できると利用者が分かるとスタッフには様々な話が集まって来て、逆に作業はしても寄り添いをしないと精神的なケアはしないことになります。

もちろん、聞かれたことに得意げになって長々と話すことを相手が期待している訳ではありませんから、そこはホテルマンのような役目である程度のポイントを話したら「どうなんですか?」と相手に振って話をしてもらうように心がけます。

「なるほど、そうなんですね!」

上手に話を聞くためには、もちろんその本を読んでいなければいけませんし、それに加えて展開される方向性や関連した情報があってこそ、相手に心地よい応対ができます。

しかし、現実的にはそこまで知識や経験を持っているなら、介護士として働く以外の選択肢も出てくるでしょう。

なんらかの理由があるなら別ですが、そこがつまり「介護士不足」の根源にもなっています。

一方で、全ての高齢者がインテリとは限りません。

しかし、現役世代だった頃には、人それぞれの趣味を持っていて、例えば歌などは割と馴染みがあるはずです。

施設などでも定期的にカラオケをしますが、選曲はもちろん、我々とは異なる時代の歌も多く、ある意味で歌うこと以外に当時の歌謡曲をマスターしなければ、一緒に楽しむことは難しいでしょう。

それはつまり酒の席で、一人が呑んで、もう一つがシラフでは、呑んでいてもつまらないからです。

手拍子だけで、歌えと勧められても、利用者もなかなか歌う気にはなれません。

だからといって、セミプロ並みの歌唱力でスタッフが先人をきれば、後に続き難いことも理解するべきです。

程よいところでメインを譲る配慮までして、介護士の仕事なのです。

そのあたりはホテルマン的な要素でしょう。

つまり、「歌の時間」と言うだけの認識では、例えば看護師の補助スタッフと変わりません。

しかし、歌えるし、その時代の歌や時代背景にも精通していて、話題を触れるところまでもてなせれば、もう一種のエンターテイメントで介護士の技となります。

歌が好きでも人まで歌うのは恥ずかしいと言う人に、「歌え、歌え」と急かしたら、もうカラオケの時間が負担になります。

ストレスを与えることが介護ではないので、それこそ介護現場の力量が見えます。

これから自身の親などを施設に預けたいなら、レクリエーションの時間を見学させてもらってもいいでしょう。

ポイントは、「利用者のためになっているか?」、そして「スタッフもそれを理解して働いているか?」でしょう。

例えば、その輪に加わらないスタッフが、白けた表情で別の仕事をしているとしたら、スタッフ間の関係や利用者との信頼関係に積極的ではない表れだからです。

多くの場合、利用者はそんな応対を非難しませんが、我慢していないかと言うとそうとは限りません。

サービス業として考えると、お叱りを受けるべき対応ですし、病院と同じような施設と考えればそれも仕方ないと利用者の方で思ってしまうでしょう。

でもそれは「医療技術」と言うバックボーンに対する敬意が含まれているのであって、個人的には介護施設で働く看護師を含めたスタッフは、サービス業であることを理解するべきです。