こみちの場合
こみちが思い出せる「限界」と思った仕事は、昔、CD/DVD をコンテンツ製作をしていた頃に、納期が実質二日というものでした。
二日というと、48時間。
コンテンツで作るべき画面も同じくらいの数で、作業ペースとして1時間ごとにイラスト、デザイン、テキスト入力、効果音まで含まれます。
よく、徹夜で仕事や勉強をするという話がありますが、仮眠やトイレ、食事の時間まで含めると一人で行うにはかなりハードな案件です。
でも、これは極端な例ですが、デザイン業界は多かれ少なかれこんな状況があります。
48時間後、作ったサンプルCDを持ってクライアントの元へ。
フラフラな足取りで会社に戻り、その後日に数カ所の修正や改善を行って納品となりました。
結局、その日の帰宅も夜になったという一件でした。
学生時代に、テスト勉強を全くしないで、急いで徹夜の一夜漬けで対応するという経験もありますが、48時間もノンストップでパソコン画面に向かい合い続けた仕事はその先もありません。
介護士の夜勤勤務ではどんなことが起こるのか?
まずこみちの感覚として、一人が視界で認識できる人数は50名程度でしょう。
さらに、個々の人がどんな表情や作業をしているのかを管理し把握できるレベルとなると、20名程度に落ちてしまいます。
まして、絶えず移動する相手では、その20名でも把握は困難です。
大雑把な目安として、車イスを使う利用者の大半は要介護3以上。
つまり、介護士が担当する介護現場で、平均の介護度が3とか4くらいの場合、トイレや食事さえ利用者一人ではできないことも考えられます。
一方で要介護5となる「寝たきり」の状態なら、介護士は一定のスケジュールで作業が可能です。
なぜなら、急変するリスクはありますが、勝手に移動するようなことは無いので、状況を把握するという意味では担当しやすいといえます。
しかし、その逆で要介護3以下となると、利用者の多くは自分で歩けます。
座っていて欲しい時に「座っていてください」と伝えて待っていられるかがポイントです。
実際に、認知機能が低下すると指示が通りません。
利用者の思いつきで立ち上がり、目の前の物を好き勝手にいじり始めます。
中には食べるべきではない物でも口に入れてしまうようなことが起こります。
それらを踏まえて、夜勤では担当する利用者の数と個々の介護度から想定されるリスクを踏まえて仕事しなければいけません。
多分、こみちが勤務している施設の現在の介護度は平均して3の後半だと思います。
要介護5の寝たきりが1割、要介護5で寝起きする利用者が2割、自分で寝起きできる利用者が2割、残りの5割は見守りや一部介助を必要としている利用者です。
加えて、物取られや徘徊の症状が見られる利用者が1割から2割含まれ、フロアの形状から視覚になってしまう場所に居られると、一人の介護士では管理、把握が困難です。
通常、各居室のベッド付近には介護士を呼び出し時に使う「コールボタン」があって、それが何をするものかを理解している利用者が、必要な時に使ってくれます。
しかし、管理や把握が必要な利用者の場合、コールを押す前にベッドから歩き出して、時にはトイレではない場所をトイレと思い込み、そのまま用足しすることも起こり得ます。
そこで、ベッドマットにセンサーが付いてものを使ったり、ベッドから降りたところにマットを敷くなどして、利用者の行動をセンサーで介護士に伝える装置も併用します。
さてさて、夕食を終えた後、利用者は個々の部屋に移動します。
つまり、日中のメインで使われる大きなフロアーには利用者がいません。
そして、例えば夜勤勤務を介護士3名で行う場合、1人が中央の管理室で待機し、事務作業をしている間に、残り2名は各部屋を巡回し、例えば利用者のトイレや着替えなどを行います。
夜間勤務中に、少なくとも3度のトイレ介助が行われます。
こみちの施設では約10名ほどを担当し、オムツ交換や離床させてトイレまで誘導します。
教科書的にはここまでですが、実際には声掛けしても起きない利用者や暴れる利用者もいます。
「オムツの交換です!」と伝えて、これから何が始まるのか理解できない場所、利用者はただただ襲われているという感覚で、力いっぱい暴れまくります。
もちろん、そうならようにするテクニックもありますが、慣れるまではなかなか大変です。というのも、ある意味で「従わせる」行為なので、介護で尊重される「自立支援」との齟齬が起こるからです。
ある介護士は「そうしないと管理できない」と言うでしょう。
またある介護士は「自立を尊重しながら」と自身に困難なハードルを課すかもしれません。
一方で、まだ意思表示が可能な利用者から話を聞くと、施設生活に対して根底から幸福を感じている人は知りませんし、少なくとも自身の置かれた立場を理解し、家族への負担を軽減させるために入所していることを理解しています。
つまり、暴言を吐く介護士にも逆らわないのは、相手が怖いとか介護してもらっているという気持ちよりも、家族に迷惑が掛かると思って我慢しているケースが大半です。
それに気づきた時に、力で行う介護を排除したいと思うようになりました。
しかし、介護士に課せられる作業はとても多く、ゆっくりと対話して促すことは時間的にも難しいのが現状です。
暴れる利用者相手に、どうオムツ交換を効率的に行えるかが、夜間勤務の介護士には求められます。
時にはいつもなら自分で行えるトイレでミスをして、トイレの床を汚してしまうことだって起こります。
そうなると、もちろん介護士が汚れた衣類を着替えさせ、身体も拭き、そしてトイレも掃除します。
長くとも30分以内ですべてを終えなければ、次の仕事に間に合いません。
時には連チャンで2回、3回と立て続けに起こる夜もあるほどです。
そんな激務を朝まで行い、多くの介護施設では「夜勤手当て」としていつもの賃金に追加で5千円から1万円程度を支払ってくれます。
時間給1000円の賃金で働く介護士なら、一回16時間の夜勤勤務で2万円以上稼げる計算です。
もっともカウントとしては2日勤務なので、1日1万円と思えばそれが高額かは個人の感覚でしょう。
中高年の介護士が、それこそ16時間をハードにフラフラで働いて、8時間あたり1万円の報酬はありがたい話です。
しかし、5年後も同じようにできるとは思えません。
つまり、どこかで働き方を見直さないといけない時期が来るはずです。
中には60代でも夜勤勤務を続けているスタッフがいます。
しかし、その年代になってしまうと、もう仕事を見直すにも難しく、その手間を考えたら定年まで働くという選択肢になるでしょう。
中高年目指すべき仕事の見つけ方
これから中高年が仕事を探すなら、まず継続可能なことが条件です。
60代から仕事を探すとか、70代から探すとなってしまうと、もう一般的な雇用ではなく、誰かの計らいで手伝いをするというような仕事でもないと身体の負担も大きくなります。
まして、この年代で転倒し骨折でもすれば歩行が困難になります。
すると、今まで見てきた利用者の立場に近く、仕事をするというよりもどう介護されるのかを考えなくてはいけません。
おすすめは、ダブル、トリプルワークです。
いろんな仕事をすることで、自分の得意な部分で働き、苦手な作業を減らせるからです。
こみちの場合、文章やイラスト、映像の分野に力を注ぎたいと思うようになりました。
手法やテーマはまだ模索中ですが、その分野が長く続けられると思うからです。
一方で、介護士としてはどっぷりと浸かるのではなく、施設なら週に数回、他、訪問やボランティアでも良いと思います。
ボランティアでも、それを製作に活かせる流れがあるなら、ネタにもなるからです。
というのも、介護のスタートとなる「初任者研修」を終えて、ほとんど介護現場での勤務をしていないライターが、「介護業界は…」と利用者やその家族、そして介護士の現状を正確に記事にはできないと思います。
確かに制度はそうかも知れないけれど、現実はそうなってはいないということも多々あり、それがなぜそうなっているのかも根底を知らなければ気づくはずもありません。
そこを一般論で語り続けるのは難しいので、例えばライターという仕事をする時も、「文章が書ける」ことがすべてとは思っていません。
むしろ、足で稼ぐ部分も多く、介護なら介護、車なら車と得意とする分野を主体にしなければ、なんでも上部だけは書けるというスタンスではそのうち仕事がなくなります。
実際、そんな風にしてきた時期もあったので、こみちは「介護」を自身の得意分野に加えたいと目論んでもいます。