上手く行く時行かない時

 利用者はずっとそこにいる!?

休みが終わり介護施設に行けば、利用者たちの様子が一変していることがある。

無性に絡んでくるし、説明しても反応が鈍かったりで、とにかく時間を消費させられるのだ。

タイムスケジュールはどんどんずれ込むし、最近入った新人はまだ成長が見られずに、利用者の名前と顔が一致しないと言い出す。

簡単なお茶配りでも、人によって好みが違うし、心身機能の観点からとろみ剤を使うケースもある。

まだ覚えられなくても仕方ないと思う一方で、何か指示すると「それで良いですか?」と疑問や反論が返ってくる。

もちろん、疑問を聞くことは大切だ。

でも、タイミングや時期というものがある。

まして、今回が初めてではないのだろうから、今さら提供したいサービスの目的や意図、その効果や期待度まで、全て伝えるには時間が無さすぎる。

でも、熱湯で入れたお茶を出そうとしていて、「温度は確認したの?」と訊けば、「利用者さんが大丈夫だと言ってました」と答えてくる。

確かに大半のことを自分でできる利用者もいる。

しかし、まだ顔と名前が一致していないくらいで、利用者の言った言葉で熱湯を出すことに戸惑いを感じないことがビックリだった。

でも、この感覚の違いというのは、年齢や性別には無関係で、若くても察することができる人もいるし、中高年になってもできない人は存在する。

「これは危険そうだォ!」

という感覚がないと、介護現場のあらゆる場面を状況別に覚えるしかないからだ。

実を言えば、こみちもそのタイプで、これまでに何度も失敗しそうになったことがある。

でも幸いに大きな事故は起きていないし、利用者を危険にさらしてしまったこともない。

ただ、これで良いだろうと思ったオムツ交換が不適切だったことで、次回入った時に漏れていたりしたのだ。

これだって、「起こるはずがない!」と思う人にとれば、不適切な交換方法を信じられないと感じるだろう。

利用者は毎日、施設にいて、介護士たちをつぶさに観察している。

グダグダと絡んでくる利用者に少し根負けして、無意識にため息をついてしまった。

「そんなに迷惑ですか?」

すぐさま、認知機能が低下していると診断される利用者から指摘される。

認知機能の低下という表現をするが、全ての事柄がそうなるのではない。

日常生活でよく使いそうな認知が劣って来たに過ぎないのだ。

だから、疲れたこみちを見て「頑張り過ぎる!」と言ってくれたり、「なんでいつもそうなんですか?」と声掛けしない態度を見て、向こうから言ったりする。

思わず笑ってしまいそうになるほど、介護士のことをよく観察している。

施設で活躍する介護士とは?

業界未経験の介護士が、ベテラン介護士同等に働けるはずはない。

でも、1日の経験を次の日に活かせる働き方なら、初心者でもできるはずだ。

その一つが、タイムスケジュールを作ること。

何時になったら何をしなければいけないかを自分で知ることだ。

不慣れな時は時間が掛かるのも仕方ないだろう。

しかし、「だから遅くてもいい」のではなくて、そこで「どんなやり方をしなければいけないか」を復習することだ。

一回目に作った虎の巻よりも、2回目3回目となるほど使い勝手の良いものができる。

それは、改めて書く必要がないことや、詳しく書いておかないと忘れてしまうことが判別できるようになるからだ。

本来なら、初日に出勤した新人介護士に、仕事を覚えてもらえるように「マニュアル」を作っておけば良い。

それがないなら、自分できちんと作るしかないのだが、どうやらそうやって仕事を覚えるのは稀みたいだ。

「名前を覚えていないので!」

それをはっきり言い返されると、次の言葉が出ない。

なぜなら、きっと、お茶出しやゴミ捨てくらいまで覚えても、移乗やオムツ交換までたどり着くのはずっと先のことだからだ。

半年間、ずっと時間を割いて教えたことに、「辞めます!」というのが多いからだ。

頑張ると言っていた前回の介護士も突然に病欠し、次の月には辞職してしまった。

残念というか、それぞれに事情があるのは構わない。

でも、教えてもらうだけ教えてもらって、いろんな人に時間を使わせて、理由も言わずに辞めてしまうケースが続くと、自分から勉強しない新人を見て、少し警戒してしまうのはどうしようもないことだ。

新人は、対等な間柄を求める以前に、自身が吸収したいことを教えてもらえるようにするべきだ。

教えてくれるのが当たり前ではないし、働いてくれて助かるのももっと先でないと実感できない。

でも、時間を割いて教えるのは、介護を学びたいと思うからで、自身もそうやって誰かの時間をもらったからだ。

とにかく、一回の勤務の間、誰からも指示されなくても自分でしなければいけないことが理解できるようになるまでは、メモを取りながら、仕事を覚えることに専念するべきだ。

「それって意味ありますか?」

いきなり、そんな質問が来ると、やはりため息も出る。

意味があるから教える訳で、できないから説明しているのに、いつの間にか「教えさせてもらうという立場」になっている。

でもね。本当はもう一歩踏み込んで、相手の意図や言葉の間違いを無視して、本質だけを見てあげればいいと知っている。

それって、まさに「介護」の仕事。

でも、それをして新人が仕事を覚えた時に、利用者の思いには気づいてあげられない人になってしまう。

だって、こちらの意図を理解しようとしないし、自分中心に考える習慣を変えないから。

本当に「介護」って奥が深いと思う。

相手の立場や気持ちに合わせて仕事を進めないと、もはや介護ではなくなってしまう。