介護保険制度はなぜ始まったのか?
そもそも老人向けの福祉政策が日本国内で始まったのは1960年代のことです。
1962年に訪問介護、1963年に特別養護老人ホームが創設されました。
1970年には高齢化率が7.1%に、ちょうど1960年の5.7%から1.4ポイント増加しています。
さらに1973年の「老人医療無料化」が始まったこともあり、社会的には老人医療費の増加が懸念されていました。
1970年代は、ショートステイやデイサービスなども始まり、自宅で暮らしながらも必要に応じて「介護支援」を受けるという流れが作られます。
1980年には、高齢化率も9.1%に増加し、過去10年の増加分と比較してもその割合が高まっていると分かります。
そこで1982年には、無料だった老人医療費を撤廃し、老人保健法が作られます。
医療費の一部負担を高齢者にも求めることで、健康的な生活や介護予防への意識を社会的に浸透させる意図もあったのでしょう。
1990年、高齢化率は10%を超えます。つまり10人に一人が65歳以上となりました。
1990年には福祉八法が改正され、これまで国が主導して来た福祉政策の一部が地方自治体、市区町村へと移譲されたのです。
1997年には、行政による措置制度をから方向転換することになり、「介護保険法」が成立しました。
2000年に、現行の介護サービスが行われる根拠でもある「介護保険制度」が施行されたのです。
まず、医療分野と介護分野を切り離さなければ、無料化に伴い高齢者の長期的な医療機関でも入院が増加しました。
また、介護分野においても、行政主導だった頃は希望者に対する収入調査などもあり、精神的にも制度の利用に抵抗感があります。
同時に行政主導で行われるので、市場の競争原理が働かず、合理的なサービスなどの意識も薄れていたでしょう。
介護保険制度で何を目指したか?
ポイントは3つあり、「自立支援」「利用者本位」「社会保険制度」です。
介護保険制度が誕生する前、老人医療費が無料化されていた時代もありました。
当然、何か気になることがあれば病院に足を運んでいたことでしょう。
時には自宅でも十分に療養できるケースでも、専門家の診察や看護を受けたいと思う人が増加したかも知れません。
そこで、社会保険制度とすることで、これまでのように行政もサポートするけれど、利用した割合に応じて医療費の負担を求めるように改めました。
増加の一途を辿る老人医療費を抑えたい狙いもあったはずです。
そして、そのことから、これまでのようにサービスを受けるだけの存在から、自身で積極的にサービスを選択し、自立を促すことも社会的な目標になりました。
そうすることで、65歳を過ぎても健康的に生活できる人を増やそうとしたのです。
つまり、介護保険制度の狙いは、「介護士がわざわざ利用者にしてあげている」でもなく「利用者に何度もしてあげること」でもありません。
なぜ、この利用者はこのサービスを利用したいのかを汲み取り、その目的に沿って介護施設や介護士は寄り添うことが重要です。
トイレに行きたいと訴えた利用者に対して
例えば、一人でトイレまで歩き、そこで用を足せる人ばかりが施設を利用しているのではありません。
場合によっては、トイレまで車イスや手を引いて誘導し、衣類を脱着もしっかりと声掛けしなければ困難なケースも少なくないのです。
また、衣類の脱着時など、手すりが設置されていても心身機能の低下があれば、立ち上がることが難しい場合もあります。
介護士としては、忙しい業務の中で利用者の安全配慮も求められます。
特定の利用者から度重なるトイレ利用の希望を受けた時、それにどこまで応じられるかは介護現場でもよく起こる問題点です。
行くのがいいのか、行かなくてもいいのか。
ポイントは介護保険制度の設立意図から考えます。
つまり、利用者の自立を支えることが介護士の職務であり、利用者は自らサービスを選択し希望することが認めれています。
「トイレ利用というサービスを申し出た」とした時、自立支援も目的に含まれることから、自分らしい生活を維持する行為は介護現場で尊重されるべきです。
しかし医療費無料化のように、利用者の希望に何でも応えるだけの介護費用は社会保険制度が開始されたとしても賄いきれません。
つまり、利用者の自立を支える立場ではあっても、すべてに応じることが難しいことも過去の制度で学んできました。
結果、行くべきか行かなくてもいいのかという答えは、現場の状況次第となります。
しかしながら、自立支援という目的を踏まえて、「今は行けない」理由を明確に説明する義務はあるでしょう。
「行かなくてもいい!」とか、「あとで連れて行きます!」と介護士の立場を優先して、「支援しない理由」を伝えないのはNGです。
やはり、原則としては誘導ありきで、でも人員の問題もあって全てを支えることは難しいという場合に、利用者の要求を拒むことができると考えるべきではないでしょうか。
介護士同士でおしゃべりしたり、標準的な時間をはるかにオーバーして記録の記載を優先した働き方は、介護士の職務を誤認していると判断されても仕方ありません。
措置制度の頃は、利用者が自動的に割り振られていたのですが、介護保険制度になり、利用者と契約を交わすことで介護施設はサービスを提供し報酬を得ることになりました。
時に利用者を「お客様」と呼んだりするのは、一般的な消費者とは異なり、サービスの一部しか支払っていないとしても、施設としては分け隔てなく受け入れる立場となったのです。
その意味では、介護施設が提供するサービスを入所前にしっかりと確認するのも利用者に求められることです。
よくあることとして、「眠い時にも寝かせてもらえない」とか、「レクリエーションの不参加が認められない」などがあります。
施設によっては、どこか措置制度を思わせる強制ぶりで、利用者に強制することがあって、例えば利用者から「このようなサービスは求めていない」と訴えられた時に強制を撤廃することが必要でしょう。
だからと言って、「退所は自由ですよ!」と利用者やその家族の事情を逆手に取っているような言葉は、介護保険制度と目的からも外れてしまいます。
実際、利用者が入所するまでの労力はとても大きく、少々の不満では施設を変更できない背景もあります。
そう考えると、介護現場での介護士の振る舞いは、利用者が訴えれないことに見越してはいけないはずです。
ただ実際、現場では忙しくなるとヒステリックに「こっちだって忙しいの!!」と絶叫している介護士を見かけます。
頑張ろうと思っても、意図を理解して効率的に動ける介護士ばかりではありません。
その意味では、施設からの指導や勉強会などが不可欠と言えるでしょう。