介護サービスを必要としている人々
実際に介護施設で働いてみて確信したことは、介護サービスを必要としている人たちが「特別」ではないこと。
むしろ、加齢による老化現象によって、想定される症状を抱えた人々なのです。
中高年になって、疲れたと感じることはありませんか。
中高年になって、物忘れをしやすくなったと感じたりしませんか?
若いつもりでいても、生きている限りは段々と老けていきます。
そのスピードや始まる時期は人それぞれです。
中には病気一つしたことがない元気はつらつの人が、急に体調を崩して亡くなってしまうことだってあり得ます。
それは、加齢や寿命が、その個人によって異なり、場合によって必要となる支援も様々なのです。
コロナウイルスで家族を会えない時期を迎えた
コロナウイルス対策として、外部との接触を減らす目的で、家族との面会や訪問が禁止となりました。
最近では、ガラス戸越しに面会できるようになりましたが、手と手を触れ合うことは難しいままです。
しかし、その頻度は月に一回程度と、以前に比べて圧倒的に少なくなりました。
そのような背景から、多くの利用者に心の変化が見られるようになったのです。
「寂しい」という感情だけではない!
利用者の様子を見て言えることは、「寂しい」という感覚だけではないようです。
というのも、利用者の中には自分が施設に入っている「理由」を自覚している方も少なくありません。
中には、「ここで最期を迎えたい!」とまで言う利用者も少なくないのです。
もちろん、誰だって自分の暮らしていた自宅に帰りたいはずです。
その希望以上に、自身の家族に迷惑を掛けたくないという配慮も働いています。
「いっしょに暮らしましょう!」
そんな風に言ってくれたら、「嬉しいけど、私はココが気に入っているの」と答える利用者もいるでしょう。
でもそこで、「どうかいっしょに暮らしてくれませんか?」と言ったなら、「迷惑じゃないの?」と本音が見えてくるはずです。
それくらい入所している利用者たちは、家族を思って「施設暮らし」を選んだ人たちでもあります。
実際、家族との距離ができたことで、利用者の中には「孤独」を感じる人が増えました。
もちろん、寂しいと口にしたり、帰りますと言い出したりする人もいますが、多くはグッと感情を押し殺して耐えているのです。
これまで、一週間に一回会っていた人や、1ヶ月に一回会っていた人など、頻度こそ異なりますが、定期的に家族との時間を保ってきました。
ところがコロナウイルスが発生したことで、半年以上も家族と会っていない利用者もたくさんいます。
会わなかったことで、無表情に見えたり、意味不明な言動を発したり、利用者によって現れる症状は様々です。
ある利用者が意味不明な話をし始めました。
身内に出た不幸を聞き、今すぐにでも実家に帰らなくてはと言うのです。
身内はすでに他界した人で、実家には誰も住んでいないと確認しています。
でも、利用者は「帰りたい!」と訴え、聞く耳すら持ちません。
表情も急変して、何より目つきが違います。
その時は、一度いつものフロアを離れて、二人きりになった時に「帰りたい」理由を教えてもらいました。
帰らなくてはいけない理由を否定することはしません。
ただ、ただ不思議なもので、利用者も話しながらある時点で辻褄が合い、「家族から連絡が来たら教えてほしい」と言ってくれたのです。
「急いで帰ると言っても、この身体では難しいから…」
そこには、表面的な理由ばかりではなく、利用者の根底にある感情も含めて、自分なりの納得ができたようでした。
そんな場面に出くわすと、介護士という仕事がどれだけ奥深い感情を観察しながら行うべきか分かるでしょう。
コロナウイルスが発生したことで、今回の件以外にもいろんなところで、利用者の感情が揺るがされてしまったのです。