職歴やキャリア形成が教えてくれる人間関係
介護施設の内情というよりも、人間同士のキャリアがどんな風に構築されて行くのか、それを感じさせる出来事があったので紹介してみたいと思います。
実は、こみちが勤務している介護施設で、看護師の離職が進んでいます。
こみちは介護士であり、看護師の離職理由も詳しくは知りません。
ただ、何らかの理由があって、施設を離れることにした看護師たちが重なったということです。
ある日、こみちは昼休憩を取るために施設に併設された社員食堂に来ていました。
コロナウイルスの影響に配慮して、以前よりも広くゆったりと配置されたテーブル席に腰掛け食事を始めます。
すると、隣りテーブルに腰掛けていたのは、こみちも知っている看護師とその隣りには同じユニフォームを着た女性が座っています。
仕事関係で、介護士が看護師と関わる機会はかなりあります。
本来なら、利用者を中心に関連する専門職が連携する形式が取られますが、まだまだ看護師と介護士には見えない上下関係が残っています。
仕事で関わることがある看護師は、こみちよりも一回り以上若く40前後に見えます。
いつかの会話で、大学生の子どももいると聞いたように思います。
そんな看護師ですが、介護士の間では「恐い」と評判です。
何かをお願いした時に、「理由は?」とか、「量は?」とか、早口での質問に一瞬、口籠っていますからです。
その意味では、女性同士の方が気を使うのか、こみちはそこまで強く言われたことはありません。
ただ、施設において、介護士の担う利用者の日常生活と看護師が担う利用者の生命や健康では、役割がまるで異なります。
感じるプレッシャーも違うでしょう。
そんな看護師が、新しく入職した看護師に、施設の内情を先輩として説明しているところでした。
「大変でしょ!?」
「そこまでやれないから!」
明らかに先輩として、言葉はフランクで、新しく看護師の声は聞こえませんが、時々うなずく姿が見えました。
「もう地獄ですよ!」
実際にそう感じていることを言葉として伝えているのかも知れませんが、もしもこみちが入職した側なら、「何ヶ月、働けるだろうか?」と不安になってしまうでしょう。
「辞めなければいいけれど…」
知らない所で働くのは、誰でも不安です。
まして、看護師は利用者の健康を守る人ですから、咄嗟の判断もできなければいけません。
その後、再び
新しい看護師と仕事で関わる機会はありませんが、廊下などで挨拶することが何度かありました。
優しそうな笑顔で、「お疲れ様です」と声を掛けてくれました。
年齢は40代50代といった所でしょうか。
食堂のいつもの席に腰掛けて食事していると、恐いと評判の看護師が入ってきました。
入職した看護師の隣りが空席だったこともあって、二人が以前と同じように並んで座っています。
こみちは一度、二人から注意を逸らしました。
ところが、それからしばらくして、二人を見るようになったのは、この施設では先輩となる看護師の言葉使いに変化が起きていたからでした。
「私、看護師としての経験が…」
そんな風に話し出したかと思うと、新しく入職した看護師は「そうなの?」と以前と変わらない様子で、しかしどこか見守るような雰囲気を感じました。
というのも、こみちが勤務している介護施設は、スタッフにとって自由度の高い面もありますが、施設側から積極的に課題を突きつけられるような所もありません。
それは、施設の方針や運営に関心を持つ人にとっては、少し物足りなく感じる部分でもあります。
つまり、スキルを身につけたいと感じていた看護師にとって、今の施設ではなく、かつて勤務していた時の経験で働くような場合、少しの不安と慣れていくしかない環境だったということです。
もちろん、それはこみちが感じたことで視界に入った二人の会話を全て聞いたからではありません。
ですが、先輩だったはずの看護師が、どこか自身のキャリアを打ち明けるようになった心境に、キャリア形成の奥深さを感じたように思います。
偉そうにしているからポジションが高いわけではなく、もの静かで控え目でも、その人の判断や経験が職場を変えることもあるからです。
そして、新しく入職された看護師が、今の施設でさらにやりがいあるポジションを見つけ、活躍してくれたらと感じます。
(先輩)看護師が、介護施設での楽しいに気づき、介護士との関係や利用者との接し方に新たな変化があればとも思うこの頃です。