介護には「限界」がある!?
介護士を仕事としているこみちとしては、介護の質にも関心があります。
自立支援という立場から、施設で暮らしている利用者の「ライフスタイル」を尊重したいとも思っています。
普段から、あれこれと介護のことを考えて、どうすればもっと満足してもらえるだろうかと思いながら、フロアー内を楽しく駆け回っているのです。
考えたくないことでもあるのですが、事実なので情報を共有しましょう。
介護士が行う介護には、必ず「限界」があります。
なぜ、それをここで明言したのかというと、例えば今できる介護サービスが80点で、今後の努力によって90点を超えて100点。さらには110点も目指せると思いがちです。
しかし、どうやら実際は、努力を重ねることで80点が90点まで上昇し、その後は努力や工夫をしても、91点までが大変で、まして92点はもっと大変だと感じます。
つまり、どう頑張っても100点にはならず、99点が限界値なのです。
点数化すると、イメージは伝わりやすくなりますが、介護サービスとして具体的には想像し難いかもしれません。
そこで、もう少し掘り下げるとすれば、我々介護士が介護施設で働いているのは、全稼働時間の多くても30%〜40%程度ではないでしょうか。
単純に一回の勤務を8時間とすれば、24時間の1/3に相当します。
週に7日働くわけではないので、月計算すると30〜40%くらいに落ち着くでしょう。
この数字が何を意味しているのかというと、入所している利用者からすれば、それぞれの介護士は半分も一緒に過ごしてはいないのです。
しかも勤務中、一人の利用者とずっといることはないので、どうしたって自宅で家族を介護するような「きめ細やかな介護」はできません。
担当になった時に、誠心誠意その人に合った支援を提供することができれば上出来でしょう。
介護を深く考えることは有意義だけど…
自宅介護とは異なる介護士による施設介護。
こみちが介護士として働く前から気になっていたのは、「どんな介護」を提供すればいいのかということ。
でも、全部を叶えることなどできなくて、どこかで利用者に我慢してもらったり、事情を説明して了承してもらうケースも出てきます。
ただ、介護士の中には、施設が定めた規定のサービスだけしか行わない人もいて、そんな人を含めて施設全体の「介護力」となります。
体力には自信があったこみちですが、8時間勤務を終える頃には足が前に出なくなるほど疲れ果ててしまいます。
「もうこれ以上は支援してあげられない!」と、終盤になってもお願いが絶えない利用者をみて、本気で葛藤しながら「あと一回!」「もう一回!」と頑張ってみるのです。
多分、異業種で働いていたら、そこまでしなくても大丈夫ですし、もしもそれだけ頑張ったなら報酬もアップしているでしょう。
60代を過ぎてからも働ける職場を探して「介護士」を見つけたわけですが、確かに70代でも現役の介護士はたくさん働いていますし、中高年の方が末長く働ける職場を探しているなら介護業界はオススメです。
しかしそのことと、介護サービスの限界とは話が違います。
実際、困っている利用者を見て、対応できない(しない)介護士を見つけて、こみちはいつも葛藤します。
「それしかできない!」というのも現実であり、もう少しだけ質を高めることもできるのも事実。
でもそれだって限界がない訳ではありません。
ある利用者が入浴を終えてフロアーに戻って来ました。
「寒い。寒い」と訴えています。
確かに珍しく半袖のパジャマ姿で、でも本当に寒そうということではなさそうにも感じます。
すると、ある介護士が「何?どうしたの?」と利用者に声掛けします。
「寒いからいつもの上着を着させてください!」と訴える利用者に、「寒くないでしょう!」と困り顔の介護士。
その時、少し離れた場所にいたこみちは、その利用者がとてもこだわりの強い人で、普段とは異なる格好に戸惑っていると想像していました。
しばらく別の作業をしてフロアーに戻ると、その利用者が冬場に着そうな厚手の上着を、しかも首もとまでしっかりボタンをして座っています。
「脱がせてください!」
こみちに気づいて、訴えて来ます。
「いつもの長袖にしますか?」
「いつものにしてください!!」
厚手の上着を脱がせることにしました。
すると高齢者の介護士が近づいて来て、「寒いだの、暑いだの、本当にわがままな人だ」と口にします。
こみちは特に返事もしないで、利用者を連れてその人の居室へと向かいました。
介護とは何か?
寒いか暑いかではないですよね。
まして、訴えたことで「わがまま」と言われるのはちょっと違う気がします。
さらには、なぜ利用者が訴えたのかを観察する気持ちがないと、行うべき支援方法も見つかりません。
居室で半袖のパジャマを脱がせた時に、ちょっと信じがたい状況に気づきました。
その利用者は今さっき入浴を終えたばかりで、半袖のパジャマを着せられて戻って来ました。
ですが、下に着ていた肌着は長袖で、半袖パジャマでは不格好なので上腕まで袖をまくりされていたのです。
パジャマを脱がせなければ、利用者が寒いと訴えてくれなければ、きっとその日だけでなく、次の日も袖をまくったままだったでしょう。
もしも後で着替えさせるつもりなら、フロアーに戻った時に伝言だってできたはずです。
着替えの準備をする時に間違えてしまうのは注意不足ですが、その失敗を隠してしまうのはどうかと思います。
何が言いたいのかというと、いつも介護サービスは正常に提供されるとは限りません。
介護の限界値どころか、介護士によって不適切な行為になってしまうこともあり得ます。
そう考えると、介護サービスを質を上げて提供するには、個々の介護士もそうですが、施設として、組織としてのまとまりもなければ難しい課題と言えそうです。