「ダメ!」ではなく「こうしましょう!」を伝える
いろいろな利用者から聞くには、「自宅に帰りたい」という帰宅願望です。
その理由として、施設での生活が「ダメ」という制限の多さにストレスを感じているというもの。
実際に介護士の対応を見ていると、施設サイドで決めたスケジュールを基に、利用者を支配するような声掛けが多いことです。
その最たるものが「ダメ!」という意味合いの言葉でしょう。
利用者にしてみれば、ダメと言われると理由も分からずに行動を中止するか、逆に騒ぎ立てて要求を押し通そうとするしかありません。
そんな利用者の態度を見て、さらに「ダメ」を連発する介護士や、騒いでも放置する介護士も結構います。
そこで、利用者に「ダメ」を伝える時には、代案を準備しましょう。
「あと30分、お待ち下さい」とか、「この作業が終われば大丈夫ですよ」という具合に、利用者の要求を否定して終わるのではなく、「今、できない理由」とともに「どうなればできるのか」を伝えましょう。
騒ぐには理由がある
利用者が騒ぐ原因にはいくつかのパターンがあります。
要求してことが叶わなかったケースの他に、介護士とのコミュニケーション、利用者自身のこだわりが関係していることも注意しましょう。
このようなケースで実際にあったものとして、トイレを済ませた利用者の手を洗わなかった男性介護士がいました。
介護士の言い分は、「利用者が手を使う場面はなかった」というものでした。
しかし、習慣としてトイレと手洗いをセットに感じる利用者は、たとえ手を使わなかったとしても「手を洗いたい」と思うのです。
「トイレで手を洗わないなんて!?」と思うかもしれません。
ですが、「首にタオルを掛けて欲しい」と訴えた利用者に対して、「必要ない」とか「タオルが見当たらない」という応対はしていないでしょうか。
ある意味で、利用者の行動を介護士の良識や常識で判断してしまうと、いろいろな場面で利用者の生活スタイルに合わない衝突が起こります。
利用者にすれば、何度も訴えることになり、結果として騒いでいるように見えるでしょう。
また、何かをして欲しいのではなく利用者が介護士とコミュニケーションを取りたい場合も考えられます。
車イスを使う利用者の場合、大半の時間を決められた場所で過ごすことになります。
「テレビの前だから?」「お茶を用意しているから?」「本や新聞を読むことができないから?」
介護士の思考として、その利用者は「何もできない」と思い込んでいるのです。
しかし、そんな風に見えたとしても、人は心の中でいろんな感情を持って生きています。
笑顔で「おはよう」と声掛けされれば、声や表情で表現できなかったとしても「嬉しく感じる」と思います。
逆に、何も言わないからと素通りすれば、寂しい気持ちや疎外感を持つかもしれません。
「また、大きな声を出して!!」と利用者を怒る前に、「いい天気ですね。体調は悪くないですか?」というような会話をしてみましょう。
もしかすると、それがきっかけで「騒ぐこと」を止めるかもしれません。
どこまで詳しく説明するべきか?
ある利用者から「この施設は何も説明してくれない!」と言われました。
その人は、別の介護施設で数年生活した後に移動して来ました。
「今、〇〇時です。あと30分したらオムツ交換に伺います。ただ、順番で行うので、5分前後はズレてしまうこともあります」と伝えることにしたのです。
すると、「時間を教えてもらったから、待つのも楽になった」と言ってもらえました。
ところが、「今は〇〇時です。あと10分したら起きましょう。起きたら体操して、〇〇時に昼食になります」と言った時に「あまり細かく説明しないでください。頭が混乱してしまうから」と言ってくれました。
こみちが感じたのは、利用者は「伝達事項」を介護士との「コミュニケーション」と考えていて、利用者自身の心準備を兼ねているとことです。
つまり、分からないのだからと介護士が無言になったり、一方的な強制をしてしまうと利用者は感情を乱されてパニックに陥るでしょう。
また、これだけ詳しく説明したからと介護士が思い込んでしまうと、利用者はフレンドリーな気持ちにはなれずに、説明されても孤独感に浸ります。
介護士の仕事を「提供すること」と捉えてしまうと、利用者によっては「不満」を感じるでしょう。
むしろ、実際のサービス提供は全体の一部に過ぎず、告知や観察、言葉の選び方や目線の置き方など、さまざまなポイントが含まれます。
特に、介護士にもタイプがあって、得意とする利用者の傾向があります。
それは、介護士自身の性格や接し方に特徴があるので、利用者のタイプを選ぶのでしょう。
しかし、接し方に柔軟性のある介護士であれば、対応できる利用者の種類も格段に増え、苦手なタイプの利用者であっても程よい距離感で応対できるはずです。
そのためには、単純に介護サービスを提供する意識ではなく、利用者の呼び方や声掛けする時のトーンや視界への入り方など、利用者の観察と通じて試行錯誤できる必要があります。
利用者をお客様だと認識し、まるで一流ホテルやレストランにいるような応対がいい時もあれば、どこか気さくで親しみやすい距離感と言葉使いで接する方がいい時もあるでしょう。
また、利用者の親心をくすぐるようなスタンスで、おっちょこちょいな介護士になるというのも例外的ですが、有効な方法です。
声掛けする時に共通して言えるのは、利用者への信頼と誠実さを感じさせることでしょう。
正確性が問われる時もあれば、笑顔が求められることもあります。
その時々で何を求めめられているのかを判断し、できないことや分からないことを程度に処理してしまわないことです。
「しっかりと確認してお答えします」という誠実さが、利用者を安心させます。