現役介護士が考える「理想の介護施設」

 「理想の介護施設」を考える発端は「生きる」に気づいたから


少し唐突なことですが、こみちが「当たり前」に考えていたことが、別の人には「当たり前」ではなかったことがありました。

もちろん、そんな経験が無かった訳ではありませんが、今だからこそ「ポイント」にするべきだと感じるのです。

現役の介護士を含め、これから介護施設で働いてみたいと思う人にとって、「生きるとは?」何でしょうか。

テーマが壮大過ぎて、「私はこう思う!」とひと言では伝えられないかもしれません。

ですが、「生きる」を考えないことには、介護は始まらないとこみちは思っています。

実際、介護施設を利用している高齢者にとって、今日と明日はまるで別物です。

さらに言えば、「1年後」と言う時間の長さは「永遠」と同じ意味を持つかもしれない程です。

つまり、我々が思う「今日の介護」が、その利用者にとって最後のサービスとなることだって無いとは言えません。

だからこそ、「生きる」と言う意味や意義を介護士一人ひとりが考えることはとても大切になります。

介護士のスキルをどう評価するのか?

介護施設で働いてみると、介護士は「作業スピード」と「利用者のコントロール」を重要視しているように感じます。

例えば、オムツ交換を何分で終えられるのか、寝たいと思っている利用者をいかに起こせるかとかが挙げられます。

しかし、オムツ交換のスピードは、毎日していれば十分に想定内の時間で終えられます。

と言うのも、オムツ交換で求められる処理は、長く経験しているとある一定範囲に収まると分かるからです。

臭いや利用者の様子を見ただけでも、だいたいの工程がイメージでき、それなりの準備をして取り掛かるので、予定時間内に収まるのです。

つまりは、見通しが立つので、それ以上スピードアップさせる必要もありません。

と言うことは、5分で終わることを自慢する介護士と、5分20秒だった介護士で、どれだけの差が生まれるのかは、もう誤差の範囲でしかないでしょう。

仮に6分だったとしても、次の作業にワンテンポ早く取り掛かれば、1分などあっという間に補えます。

そして、利用者をコントロールすることに関しても、高圧的な態度で臨む介護士と、信頼関係から応じてくれる介護士では、利用者の幸福感や満足度はまるで違います。

「従うこと」は、「生きる」に似ていて、浅く表面的な領域でも考えられますが、何度も失敗を経験して悟ることができた場合もあるでしょう。

余談ですが、20代の働き方が自分目線だとすれば、30代になり部下を持つと相手目線になります。

それによって、仕事に対する考え方や話し方、目標設定の仕方など、自分だけで思っていたことを、世代の異なる相手と一緒に考えることが結果的に自身の成長に繋がります。

つまり、「自分だけ」と言う価値観は簡単の成立するのですが、「相手目線」で考えて行動するのは難しいことなのです。

だからといって、介護士が利用者に強要してしまうと、利用者は窮屈さを感じますし、今日と言う1日がとてもつまらないものになるでしょう。

何より、明日や1週間先だってどうなるか分からない状況なら、1秒だって詰まらなく生きたくないはずです。

利用者に「待っていてください」と言って、人によっては怒り出すことがありますが、それこそ、我々の1分と利用者の1分が同じではない証です。

こみちとしては、「生きる」を充実させるために、手間や苦労するのはアリだと思っていますが、利用者は無駄を省いて生活したい人たちだと感じています。

つまり、自分で歩きたいと望む利用者には、大変でもしっかりとしたリハビリを受けてもらい歩けるようにサポートすればいいのです。

しかし、車イスを使いながら、自分らしい生活範囲内で暮らしたいと言う利用者には、「歩く」とは異なった「幸せ」を介護士も一緒に見つければいいはずです。

「生きる」は介護士だけでなく、利用者やその家族も考えることで、これ必要となるものを自分で選べるようにしたいのです。

そうなった時に、少しくらい作業スピードが早くても、「生きる」を軽んじている介護士では利用者に幸福感を届けることもできないでしょう。

ただオムツ交換してくれた。

それだけでは、利用者の生きるに響かないのです。

つまり、なぜオムツ交換するのか。その時に声掛けがどれだけ重要かを感じられることで、単純作業ではなく「生きる」ことに寄り添えます。

主人公になれる介護

例えば、利用者が主人公になれる介護施設があったら、どうでしょうか。

飲み物を飲む時も、お茶やジュース、コーヒーに牛乳など、利用者の好みで選択できたり、施設が好みに合わせて飲み物を提供する心づかいがあれば、主人公になれるでしょう。

もちろん、時には選択しないで施設主導で任せられることもポイントです。

その際も、利用者の好みに反映したもので、時に考えたこともなかった選択肢ということが重要です。

例えば、中高年の方でピアノの習いたいけれど、下手で笑われないか心配になる人もいるでしょう。

しかし、先生が寛大で、指導が丁寧で親切なら、笑われないかという気持ちはすぐになくなり、ピアノを弾く楽しさや奥深さに意識が向きます。

つまり、先生が自分のスキルを見せびらかしたり、利用者の失敗をからかってしまったりすると、利用者は興味があってもやる気を失います。

そこは介護でも同じで、失敗やできないことを指摘する必要はありません。

できたことや上手になったことだけを積極的に誉めてあげれば良いのです。

そうすることで、利用者が主人公の介護施設ができてきます。