介護保険制度が誕生した理由
最近の「初任者研修」や「実務者研修」を受けると、利用者の「自立支援」や「個人の尊重」を学びます。
なぜ、そのような流れになったのかというと、利用者と利用者家族との関係に変化があったからでしょう。
以前、高齢者をその家族で看取ることは珍しくありませんでした。
実際、寝たりの高齢者を10年以上も家族が介護したという話も聞きます。
そして、公的な施設に高齢者を預ける場合、施設が定めたルールに従うことを求められたのです。
そこには、以前ように自宅で高齢者を介護することが大変になった意識の変化があったのでしょう。
多少の条件なら施設のルールに合わせるという家庭が増え、預けられる高齢者はそれまでの暮らしとは大きく異なる「施設のルール」に沿った生活を送ります。
つまり、何時に食事と決まっていれば、それに合わせてフロアーに集められ、予定時間に食事を済ませるような暮らしになります。
その暮らしでは、介護士の方が利用者よりも優先されるものでした。
そこで、「介護保険制度」が誕生し、利用者の「自立支援」や「個人の尊重」を見直すことになったのです。
言い換えれば、それが無視されて来たからこそ、新たに介護士となる人は何度も学びます。
本当に利用者は「わがまま」なのか?
古い時代の介護を知っているベテラン介護士の中には、今でも「利用者」に命令口調で話す人がいます。
一方で、利用者の中には「自分が保険料を支払うお客様だ!」と言う人もいます。
価値観や評価というのは、時代背景や意識によっても異なります。
施設での介護が嫌なら「自宅で見ればイイ」と思っている介護士がいる一方で、介護士も国民であり納税者であり、(40歳から)利用者同様に保険料を支払う義務を負います。
一般的な民間サービスを受ける場合とは、背景が異なることも理解しなければいけません。
しかしながら、「介護」をどこまで認識して、どう高齢者をみんなで見守っていくのかは今後も大きな課題でしょう。
「介護士が見てあげている」で良いのか。「お客様からもっとサービスしろ!」で良いのか。
実はそんなに簡単な話ではありません。
特に、高齢者の中には意識が変化していないつもりでも、状況判断や時系列で考えることが苦手な人もいます。
介護士相手に一方的な不満を言い出す利用者も少なくありません。
中にはそんな利用者に対して「お客様ではなく、見てあげているんだ!」という態度で接する介護士もいるほどです。
そもそも論として、高齢者とはどんな存在なのかを共通して認識できていないことが原因なのでしょう。
老いることが当たり前なら、それを社会全体でどう受け止めるのかを考えなければいけません。
一方で、介護サービスを民間サービス同様に考えれば、受け取るサービスに値する客でなければなりません。
つまり、現行の介護保険制度では、介護サービスを維持するには十分な負担を利用者やその家族が行っていないということに繋がります。
そのような考えは、かつては家族が高齢者を自宅で介護して来たという時代背景があったからです。
しかしながら、介護保険制度の誕生で、社会全体で補うことになったのですから、介護士が利用者よりも高圧的な態度で接するのは望ましくありません。
また、高齢者の中には、同じことを何度も言ったり、要求したりすることがあります。
その部分について、「加齢によるもの」と考えて、「介護サービスの対象」に含めるのか、それとも含めないのか見解が分かれるでしょう。
というのも、介護士がサービスの提供者であるとしても、利用者に使われる存在ではありません。
何度も同じ要求を繰り返した時に、介護士は「それはサービスの対象外です」と言えば、理解できない利用者は不満顔で大きな声を出したり、中には暴れだすこともあるのです。
一般的には、高齢になると「待つこと」が苦手になります。
介護をしていても「お待ち下さい」という言葉に敏感な利用者がたくさんいます。
ことが上手く運ばないことは、年齢を重ねて経験しているので、余計に介護士から言われると「反感」を持ってしまうのでしょう。
つまり、そんな状況をどう社会が受け止めるべきかは、介護サービスの今後を占います。
ただ、実際に介護をしてみると、多くの利用者は介護士に遠慮し、言うタイミングを探しています。
そんな状況を知れば、介護士の方でも快く要望に応じたいと思うでしょう。
実際、利用者の要求に応じ続けるのは簡単なことではありません。
多くの介護士が体力の限界を感じて、途中で横柄な言葉や態度になります。
それは仕方ないことで、それだけ相手の要求に応え続けた結果であり、その介護士の精神的肉体的限界とも言えます。
一方で、ある介護経験者からは、利用者に応じる介護士を「甘い」と評します。
特に以前の介護を知っている人なら、「なぜそんなに介護士が謙るのか?」を感じるのです。
しかし、社会全体で高齢者の暮らし考えれば、できなくなったことをサポートするのが介護の役割なのです。
そして、どこまでそれを補うのかを明確に線引きすることは難しいでしょう。
また、一方では「細やか介護」にも写ります。
なぜなら、自身が高齢者になった時に、介護士がいろいろと手助けしてくれるのはありがたいことだからです。
特に介護というのは、お金さえ支払えば、してもらえるサービスではありません。
「心」や「気持ち」を満たすには、「行為」だけでは不十分だからです。
介護サービスはまだまだ発展途上な業界です。
今後も、介護サービスの在り方を多くの人が議論し、関心を持つことが望まれます。