最近の介護現場で感じること
こみちが勤務している介護施設では、今でも利用者家族が居住スペースまで入ることができません。
ただ、最近になってテレビ電話を使った面会を実施しています。
それでも規制前とは異なり、親しい家族に会うことができないので、どこか利用者の様子を見ていると落ち着きが失われたように感じます。
実際、利用者の中で施設生活を喜んでいる人にあったことがありません。
これまで暮らしていた自宅と比べるのですから、当然のことかも知れませんが。
介護経験者の方でも見解が分かれること
ある少数の利用者が、短時間に何度もトイレに行きたいと訴えます。
こみちは、時間が許す限りその要求に応じています。
トイレ誘導が必要な利用者は、尿意が便意に自覚があるものの、単独で歩行することが難しい人に多い介助です。
つまり、トイレ誘導する利用者は、リハパンや布パンツを使い、オムツは使用していません。
とは言え、介護士が介助する場合、歩行が難しい利用者ですから、トイレで立ったり座ったりという動作は、とても事故のリスクが高い場所です。
中には、自分一人で便座に座ることが難しい利用者もいます。
場合によっては、オムツに切り替わる微妙な状況ですが、できる限り自分らしさを維持する意味でも日中はリハパンなどを使い、トイレを利用します。
未経験者の方に分かりやすい例えばを示すなら、10キロ入りのお米を20回持ち上げる程度の労力が伴います。
つまり、10分ごとにトイレ誘導するということは、その度に米袋を持ち上げるのと同じです。
実際、女性の介護士は、利用者からのトイレ誘導を拒む傾向にあります。
それだけ大変な労力を伴うからです。
そんなこともあって、持ち場を離れた時に利用者と介護士で言い合いしている場面に出くわします。
介護士はさっき行ったと言い、利用者は漏らしてしまうと言うわけです。
ただ、注意したいのは、毎回のトイレが「尿意」ではないこと。
利用者の中には毎日排便がある人もいますが、便秘気味の人もいて、時に座薬を用いています。
利用者がトイレを訴える時、前回は尿意で、今回は便意ということもあり、実際に立て続けに誘導したことで自然排便できたということも多いのです。
また、テレビ番組の選局や音量など、好みは人それぞれです。
それだけに利用者同士で些細な違和感から口論に発展してしまうこともあります。
今までなら、どちらかが引いてくれたのですが、コロナウイルスの影響なのか、日頃のストレスもあってフロアのあちこちでちょっとした言い合いが見られます。
リモコンを放さない利用者がいるかと思えば、勝手にチャンネルを変えてしまう利用者がいたりして、介護士がきちんと応対しなければ、フロア内が騒然としてしまいます。
そんな状況になると、それまで静かだった利用者までが、「うるさい!」などと言い出して、さらに騒動が大きくなります。
介護士は何を提供するべきか?
施設介護の原理原則は、介護保険制度になります。
言い換えれば、ケアマネが作成する「ケアプラン」とも言えるでしょう。
そこには、利用者の現状に合わせていろんな目標やサービスが示されています。
しかし、施設介護に於いては、介護士の仕事が個々の利用者にどれだけ合わせられているのかは難しいところです。
例えば現実的な話として、心身機能の向上を目指した介護リハビリを個別の利用者に提供することができるでしょうか。
一人の介護士が数名を担当するのは、現状のスケジュールに照らして厳しいと思います。
また、心身機能が向上したことで得られる改善があるとしても、「自宅復帰」のハードルは想像以上に高いものです。
そうなると、利用者のリハビリが何のために行われているのか、改善を目指したものというよりも、現状維持を継続することだったりします。
老健は自宅復帰を目指した施設ですが、実際に自宅復帰できる利用者の多くは3ヶ月未満の滞在であることに気づきます。
つまり、老健そのものでは十分な機能回復が期待できないことになり、自宅復帰を目指すのであれば、入所時に明確な目的とリハビリや生活環境を含めたプランニングが不可欠です。
1年を過ぎた長期利用者の多くは、老健から特養や有料に移ることを望んでいて、施設内の生活も無理のない淡々とした生活スタイルとなります。
好きなことや趣味がある利用者は自分の時間を持ちますが、利用者の多くは三度の食事と定期のトイレ、入浴や整容を除けば、時間が過ぎるのを待つばかりです。
こみちの配属先であるユニットでは、利用者にできるだけ話しかけるようにしていて、何時間も一人ぼっちで過ごすということはありません。
しかし、他部署では、利用者に対する介護士の割り振りが少なく、利用者同士が同じテーブルを囲み、目を閉じていたり、遠くをぼんやり見つめていたりするなど、脇を通る時に少し寂しそうに感じます。
ユニットでも、担当する利用者が2倍になれば、どうしてもスケジュールの進行が優先されて、利用者との雑談に時間は割けません。
ある意味、安全性は高い施設での生活ですが、利用者とし心が満たされるのかはとても微妙な話です。
施設の環境や装備、食事のバリエーションも重要ですが、介護士の気配りがどこまで行き届いているのかで、入所する利用者の快適さは大きく異なるでしょう。
介護士にも異変あり!?
コロナウイルスばかりとは言えませんが、体調を崩して休職中になった介護士が増加しています。
こみち自身も、増加する負担で、疲労感が強く残っていますし、以前は二人で担当していた業務を一人で賄うことも多くなり、以前のように利用者と話す時間がありません。
ある利用者を見て、以前よりも心を閉ざしていると感じるのも、それだけ接する機会が減り、一人で過ごしてもらう時間が長くなっていると思います。
口論が勃発するのも、現状を考えると当然かも知れません。
それだけ利用者はストレスを溜め込んでいて、発散するチャンスを探しているのでしょう。
体調を崩している介護士の中には、現状を察して無理を押して出勤する人もいますが、翌日は休職に戻ったり、出勤した日の途中で帰宅したりと、なかなか大変な状況です。