介護士の意識が変われば「介護現場」は変わる!

そもそも「Yesマン」になれるか?


介護経験者の中には、利用者との関係を重んじるあまり、「Yesマン」になることを嫌う人がいます。

利用者からの要求を鵜呑みにするのではなく、例えばその人の「ケアプラン」に照らして判断を下したいと思うからでしょう。

介護保険制度の構成を見ると、介護士の存在は利用者から遠い位置にいて、両者の間には「ケアプラン」があります。

つまり、介護現場では、一見すると利用者からの要求に応じることが介護士の仕事に見えるのですが、あくまでも利用者は介護施設を利用するうえで「どのようなサービス」を受けたいのか決定し、入所しています。

介護士の方は、ケアプランに合わせた介護サービスを提供することが求められています。

つまり、介護現場でよく目にする利用者からの要求も、「介護保険制度」の構成を見る限りでは、介護士の介護観で判断するのではなく、「ケアプラン」や「施設の方針」に合わせるべきなのでしょう。

それを理解した上で、「Yesマンになれるのか?」と問い掛けているのです。

利用者の要求を100%応じるには、介護士の体力と介護力が不可欠です。

通常業務で求められるスピードが「100」だとすれば、「200」でも足りないかもしれません。

何が言いたいのかというと、介護士自身が「Yesマン」になるのは簡単なことではなく、これまで利用者との主導権争いを理由に拒んでいたつもりでも、フタを開けてみれば「Yesマンになりきれない」だけだったのです。

逆を、Yesマンになれるだけのスピードと対応力がある介護士ほど、利用者の要求に対して慎重に判断できるようになります。

なぜなら、すべての要求を滞りなくこなせる介護力を持ち合わせているのですから、「今は我慢しましょう」と利用者に説明した理由は、自分が大変だからではなく、利用者のことを思っての判断だからです。

例えば、こみちの勤務する介護施設の同じ部署に配属された介護士の中で、「Yesマン」になれる人は数名です。

しかも、1勤務8時間換算での話です。

これが16時間の夜勤となれば、自身の体力とも相談して、どこかで利用者の要求を拒むことになるでしょう。

例えば、こみちがオムツ交換の作業に入り、10名分を終えて後片付けしている時に、その作業を既に終えて別の仕事に取り掛かっている介護士がいます。

一方で、まだ5人分を終えた所で、そのあと30分以上も掛かる介護士もいるのです。

もしも、そのタイミングで複数名の利用者から頼まれ事が入ればどうなるでしょうか。

こみちよりもスピードがある介護士なら、要求に応じられるでしょう。

一方で、オムツ交換に忙しい介護士は、「あとでいいですか?」とか、「待っていてください!」と答えるしかありません。

つまり、処理速度が遅ければ、必然的に利用者の要求を拒むしかできないのです。

利用者が満たされる「ポイント」とは?


要求に応じてもらえた時には、利用者も笑顔になるでしょう。

それ以外無いのかというと、「じっくりと話を聞いてもらえた時」も同様に心が満たされます。

さらに言えば、自身の些細な変化に気付いて、介護士が寄り添ってくれた時にも満足します。

もっと他にもポイントはあるのですが、これらのことを忙しい介護現場で行うには、介護士のどんな心構えが必要でしょうか。

介護の研修などでは、「寄り添い」や「共感」という言葉で重要性を教えられるのですが、介護現場に出ると間違えた行動をしてしまう介護士も多いのです。

その一つが、本来行うべき仕事を放棄して、利用者の話し相手になること。

利用者の気持ちを和らげる手段として、話し相手になることはとてもいいと思います。

しかし、それによって仕事を放棄し、別の介護士が負担することになったとしたらどうでしょうか。

仕事を放棄してしまう介護士の多くは、ノルマとなった仕事を規定時間内でどうにか終わらせられる介護力の人です。

一方で、規定時間の半分で終え、別の仕事に移れる介護士なら、空き時間を上手に使って利用者の話し相手にもなっています。

つまり、仕事として、1つの大きな括りと捉える介護士ほど、仕事を処理するスピードが遅くなります。

早く処理するためには、事前に手順を考えながら、どこで何ができるのかを踏まえています。

つまり、このタイミングでコレを一緒に処理してしまおうと、仕事をこなすだけでなく、処理方法にも意識を持っているのです。

現時点で、まだ手付かずの大きな仕事が3つあったら、どんな順番で手をつけて行くと速いのか考えて、もしも別の介護士がフォローに来たら、どの仕事を手伝ってもらいたいのか的確に指示できます。

ところが、そんな流れをイメージしないで、利用者の脇に陣取り、10分も20分も雑談している介護士がいたら、どうでしょうか。

仕事が終わらないでしょうし、一緒に仕事をしたくなくなるはずです。

つまり、利用者の心地よい環境を作りたいなら、何よりもノルマをこなせる介護士になることです。

今しなければいけない仕事が何かを考えて、それに則した行動ができるようになれば、どこで利用者とコンタクトするべきかも分かります。

そうなる前に、利用者の要求に応えようと考えるから、どっちつかずの介護サービスになってしまうのです。

介護現場での経験として、利用者は本当に忙しい介護士を知っています。

なぜなら、どんな介護士も暇な時や忙しい時があって、どんな行動をしているのか利用者が意外と観察しているからです。

「待ってください!!」

それほど忙しくなっていない状況でも、キャパが少ない介護士はすぐに「予防線」を張ります。

「どうしましたか?」

利用者の要求に耳を貸し、その内容と処理時間を考えて、「〇〇の後ならできますよ。だいたい20分後です」と言えば、利用者も無駄には騒ぎません。

逆に騒いだとしても、リカバーできる目算があれば、要求を先に処理することもできるでしょう。

結局は介護士の処理速度がポイントになります。

問題は介護士のモチベーション!?


こみちは中高年なので、介護士以外にもいろんな仕事をしてきました。

これまでの最高で時給6000円というケースもあります。

しかし、6000円でも、3000円でも、1500円でも、750円でも、こみちはこみちで、仕事の完成度は変わりません。

では何が違うのでしょうか。

それは、「約束」の度合いです。

つまり、時給6000円をもらって働く場合、相手は一定水準以上を完成度を期待します。

しかも約束の日時までに1分1秒も遅れてはいけません。

3000円になれば、もう少し緩くなり、1500円や750円はさらに緩くなるのです。

ということは、もしも今、「時給〇〇円ですよ!」と言われたとしたら、それが今の評価であり、期待値なのです。

「これくらいの縛りに応えてくれるだろう」と判断されたことになります。

その上で、モチベーションというのは、相手の期待を感じて、さらにハードな条件で契約を更新したい心の動きです。

相手からの期待を全く感じることができない場合、その仕事をやり切る気持ちも萎えてしまうでしょう。

それでも、契約や約束だからと、最後までやり切るのは、自分のこだわりでありプライドです。

介護士として働いて感じるのは、施設は低コストでの運営を目論んでいます。

つまり、ある決められた人件費の中で、事故などを回避して安全に介護サービスを提供したいのです。

そのためには、介護力が不可欠で、介護士としてどれだけ「期待」された以上の仕事ができるのが問われています。

しかしながら、施設勤務の介護士で時給3000円を超えるケースは一般的ではありません。

なぜなら、利用者が提供した費用がそれに見合っていないからです。

そうなれば、介護士として、より質の高い介護とは、一流ホテルマンのような上品でスマートで、でも客との距離は見失わないような接遇ではありません。

その人が一人でトイレに入って出るまでに感じる手間を省き、危険を回避しながら、その人らしく生活できるようにサポートすることです。

大きな違いは、想定された価値観を以上のサービスをするかどうかということ。

介護士の場合、利用者の求めた以上のサービスに時間を掛けるよりも、より多くの利用者の要求に応じることが重要なのです。

精神的に不安定な利用者なら、それに応じた寄り添いが必要ですが、自分の時間を楽しみたい利用者に時間を掛けて話し掛ける必要はありません。

「おはようございます!」

「宜しければお使いください!」

短時間で、気持ちのこもった接し方ができれば十分なのです。

しかし、介護士の中には、話が長かったり、要領を得ない会話をする人がいて、掛けた時間の割に内容に乏しいことも多かったりします。

その時間が長い人ほど、時間給は下がってしまうでしょう。

例えば、時給換算で3000円を超える報酬を得たい人は、介護士でも現場を離れて「管理者」になることをオススメします。

常勤スタッフとなり役職をもらうことや、イベントを企画して施設向けにパフォーマンスを行うなど、何かを管理運営することに意識を向けるべきです。

そのために、介護現場をどれだけ熟知するつもりかは個人の判断になりますが、現場主義を貫くだけでは3000円を超える報酬はかなり高待遇だと感じます。

少しでも報酬をアップさせたいなら、夜勤を頑張ることや、年末年始などの人が少ない時期に仕事をするなど、現場主義の介護士でも働き方を工夫しましょう。

中高年から介護士に転職して、常勤スタッフとして声が掛かるのも大変になってきました。

事実、30代の介護士で常勤スタッフを断られ、パートスタッフとして働く人もいます。

なぜ、パートスタッフなのかを分析すると、夜勤ができるほどの介護力が無いことや、期待以上の仕事ができないからです。

仕事を回せないことで、誰かが指示して現場をリードしなければいけません。

そうなった時に、常勤スタッフにはある一定の期待があり、それに見合っていなければ介護士と言っても「常勤スタッフ」を断られることはあり得ます。

常勤スタッフとパートスタッフでは、年収ベースで50万円から100万円くらい差があるでしょう。

その差は、「期待値」の差で、何をしなければいけない時間なのかを察し、期待以上の介護力でこなすことが求められます。