職場で起こった「残念」なこと

 夜勤者からの引き継ぎで

その日は、日勤担当でした。

指定された時刻よりも30分早く出勤して、職場に向かうのは「施設の暗黙」です。

夜勤者と早番担当だけでは回せない現場を助けるために、少なくとも10分程度は「サービス」します。

もちろん、同じ時間帯の勤務でも、頑なに指定時刻の数分前にしか現れない介護士もいます。

それは、仕事に対する考え方ですし、個人によってバラツキが出てしまうのは想定の範囲内でしょう。

ただ、正直なことを言えば、夜勤者と早番担当だけで回せないはずはありません。

なぜなら、本当に必要なことを優先すれば、限られた人手でできると思うからです。

頭数が少ない状況で、いつも通りの作業をするのは大変ですが、人手なりに仕事すると考え方を変えれば、何も難しいことはありません。

しかし、今回の問題点はそんなことではなかったのです。

日勤担当が出勤する時間帯は、ちょうど朝食を食べ終える頃で、だいたいが利用者のトイレ誘導と口腔ケアが最初の仕事になります。

誘導すれば自分でできる人もいれば、義歯を外して掃除し、また装着するまで介護士が担うこともあります。

そんな利用者の一人が、衣類を汚染していました。

原因はとても明確で、オムツの装着不良です。

夜勤担当が朝方に行った最後のオムツ交換で、しっかりと確認していなかったのでしょう。

ここで問題なのは「装着不良」ではなく、衣類の交換から身体の清拭を日勤担当の一人に委ねたことです。

夜勤者は定時に帰宅して、残った介護士たちが役割の再分配をしました。

食後には入浴、又は排せつの介助が始まります。

もちろん、そこに至るまでには食器の洗浄や換気、消毒など、いろんな雑務が待っています。

そのすべてをこみち一人で済ませるとしたら、急いで「30分」は必要でしょう。

その後のスケジュールを考えると、出勤してからいきなりハードに仕事を片付けなければなりません。

そんな状況で、衣類汚染した利用者の対応に「日勤担当」が使われたのです。

結果として、こみちは本来2名分の作業を一人で行いました。

そうしなければ、後のスケジュールがどんどん遅れて行くと感じたからです。

「できるか?できないか?」ではなく、「する必要があったのか?なかったのか?」を問いたいのです。

もしも仕事を引き受けた日勤担当が、本来の担当業務に加えて「衣類汚染」に対応したのなら、それは二人のやり取りとなるでしょう。

しかし、「衣類汚染」を受けたことで、その介護士は担当業務を業務から外してしまったのです。

そうなると、取りこぼした作業を他の介護士が行わなければ、「残った仕事」が延々に遅れとなります。

「オムツ交換不良」とは?

オムツ交換には手順があります。

こみちも新人の頃は、その手順ばかりを追っていました。

しかし大切なのは、現場で回避したい「歯止め」としてのオムツ交換です。

具体的には、汚物をオムツから漏らさないことが大原則なのです。

では「オムツ交換不良」がなぜ起こったのですしょうか。

理由としては、夜勤者の担当業務が多過ぎて、朝方になると疲労も蓄積し、回しきれないのかも知れません。

もしくは単純にオムツ交換の手抜きや根本的な取り扱いミスでしょう。

実は過去に尊敬していた大先輩の介護士が行ったオムツ交換の後、こみちが交換した時に「衣類汚染」を見つけました。

足の付け根部分がしっかりとカバーされていないことで、できてしまった隙間から漏れ出したのです。

そんな経験があって、施設での研修だけでは学びきれないことを悟り、自分自身でもいろいろと試行錯誤しながら交換の方法を身につけました。

事実、職場にいるある看護師のオムツ交換は完璧で、新人の頃に頼み込んで見学させてもらったこともあります。

「形」として、これなら失敗しないという目安ができたことで、逆を言えば「これでは不完全」というのも分かりました。

そんな経験から、今回の「装着不良」は、ちょっと大きな問題ではないかと感じるのです。

それは単純に夜勤者の失敗ということではなく、もっと言えば介護士のスキルや仕事への取り組み方、さらには働き方まで見直すべき状況とも感じます。

失敗を誰かがカバーするというのでは、ひと息つくこともできないで全力を出し続けるしかない介護士がいつかは潰れてしまいます。

介護スキルからマネジメントへ

仕事ができる介護士が離脱すると、さらに現場は総合力を失い、一気に質が落ちて行くでしょう。

それを避けるためにも、施設の上役が問題点を見つけ出し、改善しなければ介護施設は成長しません。

実のところ、こみちが求めていた「介護スキル」を身につけるという目的はそろそろ達成したように感じます。

そして、意識が組織力やマネジメントに向いています。

そんな風に考えると、「今の介護施設」はそろそろ限界を迎えていると感じています。

なぜなら、改善する意欲を感じないばかりか、マネジメントの必要性にも気づいていないからです。

ある意味で介護士になる人は、現場仕事が好きなのかも知れません。

また別の人は介護そのものに興味はなく、マネジメントや経営が好きなのでしょう。

それでは介護施設の運営は上手くいきません。

でも、実際にその両方を経験するのはとても大変で、何度も「何も知らない新人」になる覚悟が必要です。

まして40代以降になり、未経験の業界に足を踏み出すのは、誰にでもできることではありません。

そして、現場の雰囲気に馴染むだけでなく、施設としての未来像をイメージして、自分や職場のスタッフにどんな経験が必要なのかまで考えるとなれば、さらに覚悟が伴います。

最近、現場仕事を回すことにはかなり慣れました。

その一方で、施設の運営や取り組みを考えると、現行の方法で良いのか疑問にも感じます。

特に、メインテーマに掲げていなかった「もくろみ」が、現場のスタッフを働き辛くしているなら、思い切って「断捨離する」ことも考えるべきなのです。

人の出入りが激しい職場ほど、守るべき「想い」とそれに後付けした「副産物」を混同するべきではありません。

特に介護現場では、何をサービスのモットーとするのかを明確にしなければ、現場の介護士はただただ忙しいスケジュールに追われるだけです。

でも意外に思うかもしれませんが、「それにも気付いていない経営者」っているんです。

それは、「経営」しか知らないとか、「介護」の経験しかない人が、そのまま「介護施設を運営してしまう」からです。

経営者のスキルを見極めるポイント

まず、「夢を語る系」の経営者は、部下が若い世代でないと続きません。

ベンチャー企業などでは有効ですが、中高年の多い職場ではモチベーションが保てません。

中高年の人は、仕事に夢を重ねる人もいますが、将来の福利厚生を見据えて働いている人も少なくありません。

そんな世代の人を従業員として招くつもりなら、「数字系」の経営者がオススメです。

数字系の経営とは、予算の金額をベースに、経営がどんな配分で行われているのか具体的に示す方法です。

介護現場でいれば、「時間」を取り入れた仕事の割り振りとなるでしょう。

何時までに施設で予め指定したポイントをクリアして行くという方法で、スタッフの労働時間をどう使うべきかを詳細に組み込むのです。

こうすることで、大きな飛躍は望めませんが、役割分担がはっきりするので、中高年の人には働きやすいはずです。

さらに、モチベーションを向上させる意味で、仕事に付加価値を設け、それをクリアできれば加算給が支払われるという流れにします。

方法は無限にあるのですが、このように組織を構成する年代や意欲を見据えた構成を練り、経営に組み込むことができれば、何も考えない時よりも結果につながりやすいでしょう。

その意味では、現場で動けない人の経営は、どうしても理想論的な手法に陥ります。

特に介護現場では、利用者の心を掴めない人は、長い時間を掛けないと心の距離も縮まりません。

それだけ、時々現場に顔を出すだけでは補えないのです。

自身がそんな状況にいると知り、行動できる人はいい経営者になって行くでしょう。

しかし、表面的な接し方を続けるタイプは、一見すると腕利きの経営者にも見えますが、肝心なニーズを探る時に大きな失敗します。

もちろん参謀次第ですが、その場合、参謀自身が経営者にならない理由も大切でしょう。

現場ができる参謀なら、そのまま経営者になっても不思議ではないからです。

いずれにしても、じっくりと現場に顔を出せない経営者には限界があるでしょう。