介護施設の日常
介護士として介護施設で働いていれば、一定期間ごとに「入所と退所」を経験するでしょう。
こみちの勤務している介護施設でも、「入所と退所」は頻繁にあって、特に大所帯となる部署では日に何人も入れ替わることもあります。
介護の仕事を始めたいと思っている未経験の方は、少し想像してみてください。
新しい職場に行くことが決まり、そこでみんなと馴染めるだろうかと不安に思うことを。
その気持ちは施設に入所する利用者なら誰でも感じることで、「これから何が始まるのか?」と不安になるものです。
まして、一人ではトイレにも行けない利用者なら、「誰にお願いすればいいのか?」「いつ頼めばいいのか?」も分かりません。
そんな時に「待ってください!」と強い語気で言われたりすれば、その次はなかなか言い出せないでしょう。
「気になることがあれば、いつでもどうぞ!」
そんなひと言が、どれだけ利用者の気持ちを和らげられることでしょう。
入所したばかりの利用者ほど、最初に関わる介護士の立ち振る舞いを敏感に観察しています。
突然の退所!?
これもこみちの勤務する施設でよくあることです。
こみちが勤務する施設が老健ということもあり、いろんな利用者が入所してきます。
身体的な問題を抱えている場合もあれば、精神的に落ち着かない場合もあります。
程度こそさまざまですが、誰だって同じことで、不安になったり寂しくなったりすれば、いつもとは異なる態度になってしまいます。
こみち自身が感じのは、「利用者のことを避けてしまうと相手もそれを感じ取るということ」です。
介護だからではなく、人間関係に共通する法則とでも言えるでしょう。
つまり、何か言われたら嫌だなぁと思い、用事が済むと利用者の元をさっさと立ち去れば、利用者は「何だか嫌われているかも」と思うのです。
そのことで不安を感じれば、利用者は落ち着かない素振りを見せたり、言葉がきつくなったりするでしょう。
それがまた介護士を遠ざける原因になるとしたら、悪循環になってしまいます。
応対を間違えると、利用者は施設の生活に馴染めずに「退所」を希望することもあります。
事実、休日明けに出勤すると、居るはずの利用者が「退所」していたということもあるでしょう。
一方で、容態急変し病院に搬送される利用者も一定数います。
系列の病院に搬送されることもあれば、利用者が指定する病院に行くこともあります。
数日の場合には利用者が使用している居室をそのままにしておくこともあるのですが、中には一度荷物を運び出して「空室」に戻してしまうこともあるでしょう。
現場で働く介護士としては、なぜ「退所」になってしまったのかを聞けないこともあります。
これまでにも居室で最期を迎えた利用者を何人も見届けていますが、人の人生本当に突然で、「生きていられるなら、その時を満喫する方がいい」と感じます。
特に高齢者場合には、調子が悪くなってしまうとその後の状態が予測できません。
「先週まであんなに元気だったのに…」
本当にそんな感じで、利用者は変わっていきます。
だからこそ「一期一会」だと思いますし、今できることを「今」してあげることに意味があるのです。
明日や来月、一年後はもうどうなっているのか誰にも分からないからです。
ついこの前も、居室の出入口に掛かっていた入所者のネームプレートが白紙になっていました。
その人は体調が悪くなり、搬送されたままになっていた利用者です。
ベッド上で寝返りすらできませんが、話しかければ応えてくれますし、「天気がいいですね!」とか「寒くないですか?」と尋ねれば、意思表示してくれる方でした。
数日後には新しい入所者を迎えて、退所となったその人がその後どんな風に暮らしているのかも分からないままでしょう。
もちろん、上司に聞けば教えてくれるでしょうが、その事実を知ったからと言って、何かが変わる訳ではありません。
介護士としてできるのは、担当できる時に精一杯のサポートをしてあげることなので、こみちは自分から根掘り葉掘りは聞かないようにしています。
しかし、それほど「退所」は突然にあることで、誰かの人生に関わる機会はあるようでないものです。
健康を取り戻し、自宅での生活を取り戻した利用者もいれば、別の施設へと移って行った利用者もいます。
いろんな未来があって、介護士はその一瞬に関わる仕事なのです。