利用者からの要望もあって
明日にも退所する利用者ですが、周囲の方々には話さないで欲しいと言われています。
介護士という仕事柄、利用者だけでなくその家族からもいろんな話を聞き、時期が来るまで知らない顔をすることも珍しくありません。
記憶が違っていなければ、明日にも退所する利用者がこの施設で過ごした期間は、約2年。
すっかり顔なじみとなり、居なくてはいけないムードメーカーです。
それだけに、事実を知った他の利用者たちがどんな反応を示すのか気になるところではあります。
施設に入所している利用者は、家族からの要望に応じて外出や外泊をしたりもします。
ただ、コロナウイルスの影響もあって、施設でも家族との面会を禁止するなど、なにかと制約続きでした。
実際、他の利用者の中にも、週の何日かを自宅で過ごし、退所に向けた準備を始める方もいます。
また、治療の関係で施設を離れる人もいたり、コロナウイルスで見送られていた様々なことが動き出しました。
介護士として言えるのは、やはり「自宅復帰」が何よりだと思います。
施設での生活は健康的ではありますが、時に介護士としても「自由で良いのでは?」と感じることが起きるからです。
何時になったからどこに集まる。
最近では、体調不良やテレビ鑑賞などを理由にイベントへの参加を辞退する利用者も出て来ました。
以前はもっと強制的で、「少しでも…」と言っては連れ出していたからです。
そんな時に、「自宅ならもっと自由に暮らせるのに」と思うのです。
もっともスケジュール管理に厳しい先輩方も、職務をまっとうする意識が強かったからでしょう。
管理職からの方針転換も影響しているのか、利用者の意思を尊重するように変わってきました。
明日、特に体調に影響がなければ、予定通り退所となります。
当施設での夕食を済ませたら、そのまま自室で朝を迎えることでしょう。
その後は、荷造りの最終確認を済ませて、家族といっしょに卒業です。
新しい施設への入所時期は分かりませんが、移動中には家族とどこかで外食をし、予定に合わせて入所手続きをするのでしょう。
行き先は特養ということなので、時々は外出や外泊もしながら、「終の住処」として余生を送ることになります。
実は行き先である施設が、こみちの通勤経路から遠くない所にあり、施設名を聞いた時には「あの施設なのか!」と思いました。
以前に施設を退所された方もその特養に移ったので、もしかすると「あの老健にいたの?」と意気投合するかもしれません。
自宅復帰を目指す老健の役割として、いろんな利用者のサポートができれば嬉しいことですが、新たな一歩を祝福したいと思う気持ちといっしょに、少し寂しい感覚も起こります。
とは言え、次に来る利用者も予定されていて、「はじめまして」が続きます。
新しい利用者が施設になれるように努めるうちに、1日、1週間もあっという間でしょう。
そうして人は新しい環境に馴染んで行き、「あの頃は…」と不意に以前の暮らしを思い出すのかもしれません。
明日退所される利用者が、「近くまで来たので顔を出しました!」と訪ねてくれたらいいのですが、現実にはそんなことはなく、過去にお見送りした方々同様に「元気で暮らしているかなぁ?」と心の中で念じるくらいしかできません。
「長い間、ありがとうございました!」
笑顔で見送れるように、明日もいつもと変わらずに元気よく仕事をします。
近々、入所と退所が続きそうですが、新たな一歩に加われたらと思います。