介護と異業種の違いの話

デザイナーに求められる基本


最初にお断りしておくと、全てのデザイナーに当てはまるとは限りません。

しかし、こみちが経験したことですし、介護などの職種にも当てはまってくると考えています。

例えば、あるポスター広告を作ることになったとしましょう。

そこで大切なことは、製作費と製作目的です。

目的がはっきりとしていない作業は、どこかでトラブルになります。

また、予算の決まっていない案件も、後々のトラブルを抱えるでしょう。

多くの場合、この当たりの取り決めはデザイナーの仕事というよりも営業マンの仕事になってきます。

他には、納期や納品方法なども打ち合わせの項目なります。

「当たり前でしょう!」

と思われた方もいるでしょう。そうなんです。当たり前の話です。

でも、このことを改めて理解することはとても大切になります。

というのも、デザイナーという仕事だからと言って、「魔法」が使えるわけではありません。

「何をどんな風にして欲しいのか?」という目的があるからこそ、経験や技術を活かした製作に取り組めるのです。

そして、デザイナーにとっての基本とは、技術的な部分も含まれますが、この現場での流れを理解した仕事の進め方が求められます。

デザイナーに求められる応用


デザイナーとして仕事をしていると、段々と組み合わせを変えて居るだけに感じてしまうことがあります。

それは使っているテクニックや技術に限りがあって、無難な解決法を選択しがちになるからです。

それでも淡々と仕事をこなし続けられるデザイナーもいますし、環境の変化を求めて退職や休職を選ぶ人もいます。

時代も変化していますし、もう業界を離れて何年も経っているので、当時とはいろいろなことが異なっていると思うのですが、「応用」の部分は理解に差が生じます。

ある人は、限界を感じていても「自身の生活」を維持するために仕事を続けるかも知れません。

ある人は、限界を感じたからこそ、より良い製作を目指して自身の可能性を見つめ直したいと思ったのでしょう。

とは言え、製作現場にいるデザイナーは、持ち時間いっぱいまであれこれとアイデアを絞り出して期待を上回る製作に努めます。

それは、クライアントである依頼者からの言葉だけでなく、その奥に隠れいているニーズを感じ取ったからです。

良いデザイナーを定義するとしたら、「良い聞き手」であることが不可欠です。

つまり、応用というのはとても曖昧で、しかしながら奥の深い話でもあるのです。

介護の現場ではどうなのか?


デザインの現場と介護の現場では、少し状況に違いがあるかもしれません。

その最たる部分は、「福祉」という特別な環境が関係していることです。

とは言え、介護も「措置」から「介護保険制度」の見直しを受けて、契約に基づくサービスへと変化しました。

それに伴い利用者の呼び方も「〇〇様」に変わったのです。

よく介護現場で問われることの1つが、「安全」と「ニーズ」の境界線です。

利用者を完全なる対等な相手と考えれば、デザイナーの時と同様に「相手の要望」を具現化することが「仕事」となります。

一方で、利用者の心身状態を組み取り「保護」の観点に立てば、「安全であること」がポイントとなります。

ただ、「安全」という言葉は広すぎて意味が不明瞭です。

介護現場で考えるのは、利用者の生命や健康を著しく害すことがない合理的な配慮になってくるのでしょう。

なぜなら、介護現場で働く介護士は医師のような医学的専門知識を持ちません。

熱が出たり、気分を害したと訴える利用者に、基本的な対応と医療機関への連絡などは可能ですが、それでもできることはとても原則的なものです。

事実、利用者の飲み込み不良による事故には注意が必要で、食べたがらない場合に無理を強いて「誤嚥性肺炎」などを招く事故も少なくありません。

食べさせなければという原則と、生命への危険の境界線はとても難しく、経験の浅い介護士ほど、また平常心を失った時ほど、思わぬトラブルを招きます。

言葉としては、「安全に配慮した利用者に心地よい介護」ができることが理想なのですが、「安全」の担保も「心地よい」に対する具体的な解決法も、唯一無二の方法がある訳ではありません。

例えば、デザイン作業で基本的な流れを決める営業マンの役割を、介護では「ケアマネ」が担います。

先ずは「利用者やその家族」からの聞き取りがあって、そこに医師の助言や提供が望まれる介護サービスを絞り込んで行くことになります。

当然、予算が設定されているので、優先順位をつけながら望むサービスを決めることになるでしょう。

さらに言えば、デイサービスを利用したいと決まった時、自宅周辺にはいろいろな施設がサービスを提供しています。

しかし同じ施設だからと言って、全く同じサービスが提供されているとは限らず、「入浴サービス」や「レクリエーションの提供」など、「項目」から選ぶに過ぎません。

つまり、介護士の人柄や施設内の雰囲気まで含めると、配慮あるケアマネなら利用者の性格や要望に応じてくれるかもしれませんが、機関的に処理するだけの場合には「こんなはずじゃ…」ということも起こり得るのです。

例えば、ケアマネが作成したケアプランに「利用者にとって心地よい環境の提供」という書き込みがあったとします。

それを見た現場の介護士は、「心地よい」の理解に苦しむのです。

または、完全に無視して、現場が考える妥当な支援が提供されるでしょう。

つまり、ケアプランが機能していないことになります。

とは言え、ケアマネを責めるつもりもありません。

なぜなら、ケアマネが利用者を観察できるのは、ある限られた時間に過ぎませんし、ケアマネと言っても全員が医学や看護の専門家ではないのです。

営業マンにデザインの具体的な問い詰めをしても答えられないのと同じで、ケアマネもスーパーマンではありません。

だからといって、「仕方ない」と結論付けてしまうと何も変わりません。

限られた時間と予算の中で、サービスを提供しなければいけない難しさはどんな業界にも言え、どう取り組むのかが大きな課題です。