「介護技術」はお好きですか?

「介護技術」に思うこと


例えば、CGイラストに携わる人なら、「Adobe」のアプリを使ったことがあるでしょう。

さらに言えば、「Illustrator」や「Photoshop」などで「トレース」をしたことがあるはずです。

トレースとは、下絵を参考にして絵を起こしていく作業で、写真やロゴなどから作成します。

基本テクニックと言えば確かにそうで、ブランドのロゴをデータ化するという作業は、わりと使うのではないでしょうか。

その際、上手いトレースと下手なトレースの違いは、「自然」か否かになるでしょう。

というのも、上手いトレースでは、ロゴを作った人と限りなく同じ場所を「基点」にして、作業するのに対し、下手なトレースでは無駄な所にも「基点」を作り、「不自然さ」を促しています。

ただ、ある程度トレース慣れてくると、それほど難しいテクニックではありませんし、年単位でキャリアがある人なら「合格レベル」以上の仕上がりなるでしょう。

つまりトレースという作業は、美容師さんのハサミだったり、料理人の包丁さばきだったり、それを仕事としていくならできて当たり前で、むしろそこからが「腕の見せどころ」になります。

なぜそんな話を持ち出したのかというと、介護業界にも「介護技術」というものがあって、介護で求められる作業が「介護技術」として確立されているからです。

もっとも初歩的なものを挙げると、「車イスを押す」というのも「介護技術」になるでしょう。

というのも、こみちのように介護未経験なら、介護でよく使われる車イスでさえ扱ったことがないからです。

今になれば、毎日のように車イスを触りますが、当時は見たことがあっても触ったことがなく、どんな風に押せばいいのかさえよくわかりませんでした。

意外とゴツゴツした乗り心地だとか、押す人以上に乗っている人はスピードを感じるとか、いきなり押されるとむち打ちになりそうなほど、首に負担が掛かるなど、知識として理解するためにも経験が必要です。

車イスに関係する介護技術としては、「移乗」が定番です。

車イスに限った技ではないですが、ベッドから車イス、車イスからトイレ、またはその反対など、「移乗」はいろんな場面で使用するテクニックです。

支援が必要な利用者と言っても、その人の体格や運動機能のレベルによって介助方法も異なります。

つまり「移乗」する場合、介護士はワンパターンの介護技術では不十分で、いつように応じていろんな「介護技術」を身につけていなければいけません。

ポイントとなるのは、利用者の負担と介護士の負担、さらに効率性なども関係してくるでしょう。

「移乗」する際のポジション取りや地からの入れ方、さらには利用者の姿勢や安定感なども考慮しなければいけません。

そうなると、「移乗」でも利用者への声掛けが不可欠なことも分かりますし、力任せにどうにかできたということでは不十分なのです。

介護だから簡単という訳ではない!?


恥をかかない介護士になりたいなら、介護現場で使う介護技術をマスターする必要があります。

多くは利用者の身体をサポートするので、食事やトイレ、お風呂に関連したテクニックも豊富です。

積極的に学べる環境が整っていても、1年間で完全にマスターできる人は少ないでしょう。

その意味では、一般的な業務の中で覚えていく場合には、3年くらい必要になると思います。

そこで思うのは、介護だから簡単ということはなく、例えば別の業界で自分が目指したい職業があるのなら、そちらを選んだとしても「一人前」になるのは同じくらい大変です。

逆に興味がないのに、介護士だからと着衣の脱着をマスターしようと思っても、なかなか現場で使えるレベルにはならないでしょう。

というのも、利用者によって身体を動かせる範囲が極端に異なり、身体に力が入って腕や手のひらが全くと言って硬直する人だっているくらいです。

両膝を立てることもできない人は、介護士が意識して膝頭を押さえていないと、足が倒れて思わぬ怪我になったりもします。

プロと名乗るなら、基本テクニックだけでは対応できず、いろんなケースに合わせた介護技術を身につけないと務まりません。

異業種で基本テクニックを身につけたと言えるのは…


例えば、イラストレーターなら指定された条件に合ったイラストをタッチを変えて「3パターン」用意できるくらいのレベルです。

美容師なら、要望を聞きそれに合わせた「カット」を提供できるくらいでしょうか。

そこから次の段階になれば、依頼を熟すだけでなく、効率的に作業できることも求められるようになります。

一方で、美容師や料理人にも言えるのは、客からどれだけ情報を聞き出せるのかもポイントです。

それは「接客スキル」にも含まれますが、介護でいう「アセスメント」ができるか否かで、自分なりの個性が生まれ、さらにサポートにも柔軟性や対応力が付いてきます。

仮にそれくらいのレベルになったら「一人前」と呼べるでしょうし、そこまで来るには並大抵の努力では到達できない領域です。

実際、現場経験者になれば、人の作業を見ればどれくらいのレベルなのか判断できるはずです。

特に技術系の仕事なら、見た目や普段の言動では分からないことも、その人の作業を見れば一目瞭然でしょう。

「妥当なライン」が見えてくる!?


その業界での経験が長くなると、予算や与えられた時間に合わせて、提供可能なサービスの限界値にも気付いてきます。

一食が350円の予算であれば、ご飯とおかず、副菜に汁物をつければこれくらいだろうというラインが見えてきます。

当然、国産和牛のステーキは出てきませんし、本マグロを使った刺し身定食も難しいはずです。

アマチュアの人が予算や時間を度外視して作る料理とは違います。

プロの仕事は、制約中で満足度の高いサービスを提供できるから凄いのです。

安価な材料でも、ひと手間掛けて美味しくできるのは、その料理人が幅広い「テクニック」を身につけた証拠でしょう。

介護現場で施設の設備などはアピールするのは、割にしやすいポイントです。

それよりも、利用者のちょっとした異変や訴えに気づいた細かなサービスこそが「プロ」のテクニックなのでしょう。

つまり、プロのテクニックは、派手さよりも堅実さがあって、「なぜか心地よい」と感じるくらいのサポートなのです。

その介護技術は誰のため!?


ある領域を過ぎると、技術がより限られた場面でしか使えないものになってしまいます。

「こんなテクニック知らないだろう?」

できること、知っていることが主体となり、利用者を想定した技術では無くなってしまったものも少なくありません。

というのも、プロに求められるテクニックは、「気づき」によって提供されたりします。

つまりは、利用者や客の好みを引き出せなければ、テクニックも出しようがありません。

しかし、利用者は多くを語りませんし、信頼関係は数日では築けません。

なので、利用者を想定していない介護技術ほど、どんな時に使えるのか不明なことも多分にあるのです。

その意味では、目新しい技術を学ぶことも大切ですが、本来の目的を見失ってしまうと「コレクター」になってしまいます。

時に技術はもっとシンプルなもので、必要に合わせて組み合わせ、バリエーションを増やせばいいのです。

なぜなら、同じ介護施設と言っても、施設の種類や利用者の状況で必要な技術も異なります。

また、そう考えた時に、介護士が身につけるべき「介護技術」は想像以上に少ないのかも知れません。

しかし、「介護技術」に大きな意味付けをするために、深掘りしているようにも見えます。

時には介護士二人で応対すればいいですし、もうワンステップ加えて行えばいいからです。

使用頻度や安全性まで含めた時に、その介護技術を使えないくらいなら、そこまでこだわるべきものかと感じます。

技術というのは、環境や人員配置などの上にあるものです。

つまり、ゴリ押しで技術に頼るくらいなら、もっと先に見直すべきポイントがあるはずです。

技術は道具にも似ていますが、途中から集めることそのものが趣味になり、元々の目的から離れないように注意しましょう。