男性介護士が期待されること

性別は個性!?


数少ない経験に基づいて考察すると、介護に向いているのは圧倒的に「女性」の方です。

作業の細やかさや、僅かな違いに気づく点は、性別からくるのか、これまでの経験値によるものなのかは別にしても、「男性」とは異なる特徴でしょう。

こみちの施設においては、エキスパートと呼ばれるランクは女性たちで占められていて、男性でトップはその下のランクに数名、さらにその下にまた数名という具合で、介護の知識と技術の面では「女性」が現場を動かしているのが現実です。

特に入浴支援に関しては、女性入居者に対して「男性介護士」が担当することはほとんどなく、こみち自身も「男性」を担当しています。

ただ、トイレ誘導やオムツ交換などでは男女の区別はないので、男性介護士も全てを担当します。

そう考えると、仕事のしやすさは女性介護士の方が適していることが分かるでしょう。

男性介護士でも仕事はあるのか?


こみちが介護の仕事に興味と期待を寄せた時、「自分でも働けるだろうか?」と思いました。

その原因の一つが、利用者から受け入れられるのだろうかという点です。

中高年になったこみちは、どこにでもいる「オッサン」で、たとえ笑顔だったとしても相手が受け入れてくれるのか心配でした。

そう思った背景には、転職活動を通じて「年齢」を意識することが増え、自分に自信がなくなっていたこともあります。

しかしそんな心配は全く不要です。

利用者の多くは、笑顔で接すると同じように微笑んでくれますし、以前も記事で紹介しましたが「こみち、ちょっと!」と呼んでくれる利用者も増えていったからです。

結局、男性介護士であっても、溶け込もうと努力すれば、それにキチンと応じてくれる環境があるので、「男性だから」と余計な心配をする必要はありません。

男性女性ではなく、1人の介護士として

こみちの場合、いくつか自分の得意を見つけました。

先ずは他の介護士が苦手としている利用者にも積極的に接したことです。

他の介護士が接すると、「うるさい!」とか「イヤ!」とかどちらかというとネガティヴな発言が多かった利用者がいます。

そこで、「おはようございます!」とあいさつするところから始め、「いい天気ですね!」などと話を膨らませていきました。

「嗚呼、貴方なの? ナニ?」

いつも不機嫌だった利用者が、少しだけ受け入れてくれた瞬間です。

「飲み物をお持ちしたんですけど」

「何?」

「牛乳です。温めますか?」

「どっちでもいいわ。置いておいて」

「ハイ。温めて欲しい時は声を掛けてくださいね」

何かをする度にに同じようなやりとりができるようになって、その利用者の気持ちにも触れられるようになっていったのです。

しかしながら、他の介護士とは相変わらずの状況でした。

中には、「もう勝手にしてください!!」とさじを投げてしまう介護士がいるくらいです。

まだ介護士としての技術は未熟だったこみちですが、その利用者との関係に於いては「少しだけ関係」を築きつつありました。

今では、「イヤ!」と言われても全く気になりません。

なぜ、そんな言い方をするのかも分かっていますし、心から拒絶しているのではないからです。

「牛乳がイヤなら、お茶にも替えられますよ。どうしましょうか?」

「お茶がいい! やっぱり牛乳!」

「分かりました。牛乳を置いておきますね。お茶が飲みたい時は教えてください」

貴重な体験


こみちの勤務する施設には、いくつものエリアがあって、それぞれのエリアに利用者がいます。

エリアを超えて利用者が行き来することはほとんどなく、介護士同士もまた共同で作業するのは大きなイベントで同じ担当になった時くらいです。

そんな中、こみちが配属エリアを出ると、別エリアの利用者が廊下に居たりします。

「こんにちは!」

4個を通り過ぎる時に声を掛けていくのですが、ある時「ちょっと…」と声を掛けられました。

「どうしましたか?」

車いすの方なら、横にしゃがみ、見上げるように尋ねるのはいつも同じです。

「あのね…」

そんな言い方で、いろんなことを話し出します。

それは本当に不思議なことで、1人の利用者がそうすると、別の利用者が別の場所で同じように接してくれます。

名前くらいは知っていても、詳しい既往歴や家族関係も把握していない利用者たちですが、施設内での暮らしの中で、こみちの存在が「変化」になりました。

エリア外の利用者との接触は、その担当者への配慮もあって、遠慮する部分も出てきます。

しかしながら、わざわざ出入り口付近で待っていてくれたりすると、「こんにちは!」くらいは交わします。

「こみちさん!!」

「〇〇さん!」

たったそれだけにことなのですが、介護士となったこみちに「第一歩」です。

仕事としての「介護」はまだまだ分からないものの、こみちが描いていた「介護」を出してみたことで、利用者との関わり方が良くなりました。

音痴なこみちがMCを!?


レクリエーションも介護士の仕事です。

「今日は何日でしょうか?」

「すっかりと季節も春めいて…」

そんなフレーズで、利用者の前で話す機会も介護士になって増えました。

前職の関係で人前で話すのは嫌いではありませんが、こみちは「音痴」なのです。

カラオケが苦手だったりします。

でも、毎回、みんなと一緒に歌うようになり、声もしっかりと出るようになりました。

さらに言えば、昔の歌をYouTubeで検索して、耳に覚え込ませても来ました。

寝言で歌っていたほどです。

カラオケを楽しむ場合、曲をかけて担当終了ということもできます。

しかし、こみちはみんなの前で一緒に歌うようにしています。

誰も下手とか音痴とか言いません。

面白がって笑ってくれます。

何よりもこみちに歌を教えようとしてくれる利用者も現れます。

本来なら、介護士はお手本にならないといけないのでしょう。

しかし、「できないなら教えてもらえばいい」と発想すれば、利用者にとってやる気を引き起こすきっかけになります。

「さっちゃんはね。さちこって言うんだ本当はね…」

あの独特の盛り上がりは、本来のレクリエーションのスタイルではないはずです。

みんながワイワイと騒いでくれるのは、介護士となったこみちが見つけたやりがいでもあります。

本格的な介護士がする時とは異なる雰囲気で、利用者と楽しめるのも「介護職」の魅力でしょう。

利用者はこみちの両親くらいの年代です。

こみちを見ると親心が湧いてくるのかもしれません。

それでも良いと思うのです。

立派な介護士も必要ですが、助けたくなる気さくな介護士も必要だと思っています。

男性だから、中高年だからと思う必要はありません。

貴方の介護士デビューを待っている利用者がいるはずです。