こみち、事故報告書を書く!
介護施設で働いていると、「事故報告書」がサッカーの「レッドカード」みたいなインパクトに感じます。
すでに介護職経験のある方なら分かってもらえると思うのですが、介護は完全なるNOリスクではありません。
一瞬の目を離すした隙に、利用者が転んでいたというケースも十分に起こり得るからです。
今回、こみちが事故報告書を書くに至った経緯ですが、朝の定時に行う排せつ介助で各利用者の部屋から部屋へと移動していました。
なぜかフロアーにも利用者がいるのに、介護士の姿がありません。
大丈夫かなぁと思いながら次の部屋に入るのを躊躇った瞬間でした。
テーブルの下でモゴモゴと動いている人影に気づき、急いで駆けつけると利用者が倒れ込んでいたのです。
「◯◯さん、大丈夫ですか?」
意識もはっきりとしていて、呼び掛けにも反応があります。
しかし、転倒でどこかを打っていることも考えられます。
周囲を見渡しても、見守り担当の介護士はどこにもいません。
「ちょっと待っていてね!」
床に尻もちをついたままの利用者に言い聞かせ、無線で看護師を呼び出します。
「◯◯さんが自分のテーブル近くで倒れています!」
しばらくすると、看護師だけでなく、見守り担当の介護士も何事かとやって来ました。
「◯◯さん、どこに行ってたの? 利用者が倒れていたよ!」
「こっちもちょっと…急いでいて」
コロナウイルス対策で始まったアルコール消毒をしていたらしく、手にはスプレーとタオルを持っています。
「他の人は?」
「さぁ〜」
言葉を失ったというか、気力が抜けました。
「こみち、事故報告書出しておいてね!」
バイタルを取り、利用者の身体を確認して、とりあえず異常はないとのことで看護師がその場を去って行きました。
「ネェ、ネェ、大丈夫??」
見守り担当の介護士が、呑気な様子で利用者に話しかけています。
しばらくして
利用者が転んでいたというニュースが、入浴介助をしていた先輩たちの耳にも届きました。
「何で転倒させたの?」
「イイエ。排せつ介助中に移動していたら、倒れ込んでいるのを発見したんです」
「じゃあ、見守り担当は?」
「知りません。フロアーには誰もいませんでしたよ!」
「何でなのよ!」
以前にも報告した馬の合わない例の先輩です。
迷惑そうな表情で、まるでこみちが悪いような様子です。
「みんな忙しいんだから。分かるよね!?」
「ちょっと待ってくださいよ。転倒させたのではなくて、倒れ込んでいたのを見つけたんですよ!」
「でも、発見したんでしょう?」
「もうイイです」
「(事故)報告書書いてね!」
「出しました!」
「あら、そう」
最近の分担量
こみちの担当業務はどんどん増えています。
今まで3つだったのが、1つ減って2つ増えたような感じです。
なので日勤帯の出勤になると、朝食の食器類の片付け、洗い物、テーブル拭きはもちろん、利用者の口腔ケアやトイレ誘導、さらに排せつ介助、その後には飲み物の準備と起こし作業。最近では、アルコールによる消毒作業も追加されました。
ひと息つく暇もなく、約2時間は動きっぱなしです。
見守り担当になると、入浴や排せつ介助に該当しない利用者を見守りします。
多い時には2人や3人で行うこともあります。
最近、見守り担当になることはありません。
なぜなら、排せつ介助ができない介護士が見守り担当を任されるからです。
本来は、どんな作業もみんなが修得していて、順番に担当すれば良い話です。
しかしながら、できないから簡単な仕事を。それで「見守り」。そして、今回の事故。
そして発見したこみちが、報告書を書き、改善策として「見守り担当が側を離れないこと」と書くのです。
でも、見守り担当の介護士は、そんな報告書も自分のこととは感じないので、「大変だなぁ」と思うのでしょう。
介護の仕事とは?
介護は、支援が必要な利用者を支えることです。
しかしながら、どう支えるべきか、どうして支えが必要なのかを全てのケースで教えることはできません。
ある程度は、自らが考えて行動し、経験を積むしかないでしょう。
ところが、こみちの施設でもそうですが、仕事を見つけて熟す人と、言われないとしない人の差が激しいのです。
手取り足取りサポートして、「オムツ交換を覚えていただく状態」です。
メモも取らないし、自分で工夫や下調べもしない。
「難しい!」「できない!」「大変!」
そう言われてしまうと、教える方も大変です。
どこの施設も同じようなものなのでしょうか。
利用者のためにもっと質の高い介護をという以前に、意思疎通ができる介護士が不足しています。
介護スキルの目安
もっとも簡単な介護は、利用者と話をすることです。
しかし、初心者と経験者で大きく差が生じるのも、実は会話部分でしょう。
経験者は、利用者の健康状態や気分、さらに会話の流暢さなど、日々の変化も同時に確認しています。
次に目指すのが「移乗」となります。
立つことができる利用者から、全く立ち上がれない利用者までいるので、どんな人でも対応できるまでには「トランス」の基本をマスターしなければいけません。
初任者研修などでは、「重心」や「ボディーメカニクス」などを学び、基本をマスターします。
その後、オムツ交換が入りますが、体位変換を理解していないと上手くできないでしょう。
オムツ交換が苦手な原因は幾つか考えられますが、その一つが利用者の身体をしっかりと動かせないことが理由です。
学校で学生同士が行う実習とは異なり、「横を向け!」と言って横には向きません。
利用者との会話をして、意思を伝えることがポイントです。
そして、身体を動かすためには、「テコの原理」や「ボディーメカニクス」などを活用しなければいけません。
オムツ交換ができない介護士は、その前作業さえも十分にできないはずです。
会話、体位変換、オムツ交換ができるようになると、初めて「入浴介助」を担当できます。
つまり、ストレッチャーでの入浴介助ができるようになるまでは、まだまだ介護スキルで覚えることがあるはずです。
歩ける利用者の入浴なら、転倒さえ気をつけて、サポートできるかも知れません。
しかし、自立はもちろん、身体に強張りや麻痺がある利用者になると、車イスからストレッチャーに乗り移るのも細心の注意が必要です。
表皮が脆い利用者では、肌と肌が擦れただけで表皮が裂けてしまいます。
どこに力を入れれば良いのか考えながら、動かない身体を隅々まで洗います。
こみちもまだまだな部分がありますが、ようやく一人で担当出来るまでになりました。
それに比べてば、少し立位が不安定な利用者のトイレ誘導も楽に感じるのです。
どこまでで良しとするかは介護士の志1つかも知れませんが、せめて老健で介護士をするなら、平均的な利用者のトイレ誘導くらいは入職して1ヶ月くらいでマスターして欲しいです。
「こみちが行きます!」
こみちの場合、入職1ヶ月はそう言って、次から次へと利用者を誘導していました。
まず大丈夫と自分でも思えるようになった頃には、排せつ介助も担当できました。
入浴介助が始まったのは、入職して4ヶ月くらいだったでしょうか。
半年後には、今とほとんど作業内容が変わっていません。
ただ、スピードや精度という意味では違ってきて、1時間あたりに熟す作業内容が変化しています。
また、それらは介護技術の話で、今は利用者の傾聴や寄り添いに力を入れていて、認知症の利用者と会話したり、気難しい利用者と打ち解けたり、介護の魅力を日々感じているところです。