介護現場から離脱するために
介護職として採用される理由は、介護現場の人手不足が要因でしょう。
特に男性スタッフは、育児経験や家事経験に長けた女性に比べて研修で身につけなければいけないポイントが増えるでしょう。
また、介護現場で働くスタッフのほとんどが「介護保険制度」による「介護報酬」から給料を支払われていることです。
制度の性質上、介護度によって定められた定額の報酬が、施設の売り上げとなり、さらにスタッフの給料へと流れていきます。
つまり、一般的な企業とは「稼ぎ方」が異なります。
それは、成果を上げる働き方をしたスタッフがいても、内部調整されて給料アップに繋がらない問題を引き起こします。
我々が介護士として働き続けるには、身に付けたスキルをどう活用するべきか真剣に考えなくてはいけません。
その一つの選択肢が、「介護現場からの離脱」なにのです。
「OJT」では限界がある!?
介護現場では、新人教育を実践の中で教えることも少なくありません。
現場を体験しながら仕事を覚えられるので、より個別的なケースを身につけることになります。
一方で問題は、経験の少ない介護士にとって、その場その場の対応に追われ、「介護の基本」ができないまま日々の業務に追われてしまうことです。
それは、別の施設に移動した時、「なぜにそんな支援方法を?」と指摘されて気づくことでしょう。
初任者研修や実務研修で、介護の基本スキルを身につけます。
卓上の知識から始まり、利用者役をしてくれるクラスメートを相手に移乗などの基本を体験します。
しかしながら、実際に介護施設で働いてみると、さまざま点で不足した知識や技術があることも事実です。
その間のズレをどう補っていくのかが、新人教育の役割でもあるのです。
少し本題から脱線しますが、介護施設には本当にいろんな人が働いています。
介護に興味を持って来た人も、介護しかなかった人も、本当に入職理由は幅広いものです。
それだけに、言って伝わる人や、一緒に何度かしてみて理解してくれる人、何を言っても動かない人など、スタートラインさえ異なります。
それだけ異なる人を施設は教育するのですから、「OJT」という現場で覚えるスタイルになってしまうのでしょう。
では、「OJT」でどんな状況になるのかというと、現場主義となり、先輩のコピーをしてしまいます。
何も問題のない施設であれば良いのですが、どこの施設でも改善点を抱えているはずです。
しかしながら、根本的な問題解決に取り組むことができずに、小手先の修正になってしまうのは、施設の目指す介護報酬が末端のスタッフまで浸透していないからです。
施設が掲げる方針は、時に現場にそぐわないこともあります。
注意したいのは、「経営者は現場を理解していない!」と意思決定が分断されることではなく、「何がどう問題なのか?」を話し合える環境整備なのです。
そのためには、施設サイドも「介護のイロハ」を経験しておくべきです。
また、介護現場が全てではなく、「経営」や「組織作り」に介護職も興味を持つべきでしょう。
「介護現場が好き!」というスタッフがいますが、「介護保険制度」からの「施設の役割」まで理解して、「現場作り」に活かすことも不可欠です。
利用者の訴えを威圧してしまうような介護をするのは、「現場が好き」なのではなく、それを黙認する環境に甘んじているだけです。
そうなれば、いろんな面で達成できない施設の役割も出て来て、結果的に介護現場が向上心のない職場になります。
良いスタッフほど、そんな環境にモチベーションが保てなくなり、残るのは我が道を行く人ばかり、そうなってしまうと施設サイドも大掛かりな改善ができずに評判だけを落とすことになるでしょう。
介護職の未来像
これから、または現職として介護職を続ける人は、「介護福祉士」を目指しましょう。
よく、「介護福祉士」になっても給料が上がらないという人がいます。
それが本当だとすれば、「介護保険制度」に頼り切った働き方を続けるからです。
というのも、介護福祉士は国家資格で、介護系のスペシャリストでもあります。
実際に、介護福祉士の資格を得ると、研修を受けて「介護の講師」にもなれます。
初任者研修を受けた人なら、教えてくれた「先生」がまさに「介護の講師」です。
未経験だった頃に感じた不安ややりがいなどを後輩となる方々に紹介できるのは、これまでにはなかった方向性でしょう。
さらには、施設サイドが抱える問題点に着目し、現場で使える「介護の基本スキル」をレクチャーする仕事も未来がありそうです。
オムツ交換などの介助を分かりやすく新人介護職に説明することや、スタッフ間の連絡を密にするインカムの導入。
さらに、作業の進み具合を視覚化できるアプリケーションなど、まだまだ介護業界には手付かずの問題点が山積されています。
前回の記事で、介護福祉士と宅建士のダブル資格による可能性に触れてきました。
同様に、介護福祉士をベースに、新たな資格や技術を加えれば、我々中高年もまだまだ可能性を広げることができそうです。
つまり、介護職が介護現場を唯一の仕事先とするのも1つですが、「介護福祉士」を活かして未来を切り開くことも可能なのです。
前回も触れましたが、ここが「初任者研修」や「実務者研修」ではちょっと厳しくなります。
理由は、「介護現場」を知るだけでは不十分で、介護職はオムツ交換だけ出来れば良い存在ではないからです。
もしも介護スキルを1年経ってもマスターできないと感じたら、「方法」を誤っていると疑いましょう。
介護福祉士を受験できる3年の実務経験の後半2年は、利用者との関わりやスタッフとの距離感など、介護施設特有の問題を見つけ出す期間に使いたいからです。
そうすることで、介護福祉士を取った後に主体的に行動できるようになります。