介護職の厳しい現実

昇給無しという厳しい現実


先日、施設長と事務長に呼び止められ、急遽の面談となりました。

「もしや、昇給でも?」

そんな期待もしながら、言われるままに会議室へと向かいます。

思い出せば、今の介護施設で面談を受けた時も、先を歩く二人の背中を眺めていたなぁと思い出していました。

「どうぞ!」

席に着くなり、テーブルには査定書のようなものがあるではないですか。

何が書かれているのか気になりながらも、冷静さを装って耳を傾けることにしました。

見える「基本給」を始め、何も変わっていない数字があります。

「実はこみちの働きぶりには感謝しているんだよ!」

笑顔で話す施設長に「はい」を繰り返しながら、同時に「ん?」とも思っていました。

「もう少し給料をアップしたいところなんだけどねぇ…」

慣れたもので顔を見合わし、事務長ももっともらしく頷きます。

「ここに(基本給を指差して)処遇改善費が加算されるんだ。一度、持ち帰っても良いから、サインしてもらえないだろうか?」

何のことはありません。

基本給は、1円もアップしていません。

一方で仕事は年々当たり前のように増加しています。

仕事を平気で押し付けてくる先輩にも反発しないで頑張っているのにと思うと、異業種との大きな差を感じます。

中高年から採用してくれたとは言え、その報酬額は学校を卒業したての初任給にも及びません。

「今の自分を雇ってくれたんだ!」という感謝がなければ、介護施設では働けないでしょう。

まるで、卓球でいうところの「カットマン」みたいなもので、相手の要求をこれでもかと拾い続けるのが役割です。

「それくらいしてよ!」と言いたくなる時も「分かりました!」と答え続けるのは、転職を機に気持ちを切り替えないと務まらないでしょう。

現実から学ぶこと


介護職を探す場合、施設の雰囲気はとても大切です。

というのも、スタッフの質が合わないと、働くのも嫌になるからです。

実際に今の職場にも、以前の施設で働けなくなった人が入職して来て、職場に慣れるところからやり直しています。

触れるべきことではないので、詳しくは知らないのですが、以前は管理職だったらしく、スタッフの管理や仕事を回すことに追われていたと耳にしました。

確かに、新規プロジェクトは忙しいですが、やりがいと達成感を得られます。

もちろん、結果によっては昇給や特別賞与という流れも期待できます。

しかし、介護業界ではそんな仕事はありません。

もともとクライアントがいない業界なので、得られる報酬に限りがあるからです。

どんなに成果をあげても、昇給の対象にならない。

頭では分かっていましたが、実際にそうだと分かると、「みんなはどうやってモチベーションを保っているのだろうか?」とも思いました。

利用者が困るだろうと、厳しい現場でも率先して対応し、さらに本来の業務も当たり前にこなす。

それだけやっても個別の評価はないのですから、先輩たちが後輩の仕事を押し付けてくるのも分かる気がします。

実際問題として、介護業界なら中高年でも採用のチャンスは大いにあります。

しかし、異業種の採用が厳しいのは、入職した時は成果によって報酬額が変わることもある業界だからです。

逆に、介護業界は安定した収入を求める人にとって魅力の職場で、好きで利用者の世話をするくらいの気持ちが必要です。

「自分の技で稼ぐ」というよりも、生活環境の中で一緒の時間を過ごすことに安らぎを感じるくらいがいいのでしょう。