高齢者の行動

性格を決定するポイント


血液型など、何かと「性格」は私たちの身近なもの。

高齢者の場合も、何らかの共通点を見つけることができます。

その1つが、「こだわり」を持っているかということ。

自分自身を振り返った時、特に「こだわり」を持っていないと思っていても、実はそれがこだわりだったりします。

つまり、最近流行りのルーティーンの類いではなくても、「行動に何らかの傾向がある」ということです。

認知機能に低下が見られると、より日常生活に近いところに「こだわり」が見られます。

ふだんは若い頃の激しい性格は少し影を潜め、代わりに高齢になり身体機能が低下することで生まれた「こだわり」が性格になると感じます。

ベッドに使用している防水マットのシワを声を掛けなければずっと直し続けたり、靴に付いているベルトの締め具合に強いこだわりを示したりと、若い頃にはなかった一面を見ることができます。

介護士が効率的に作業を促すには、この「こだわり」に触れさせないように声掛け誘導することが不可欠です。

しかしながら、無理に避けようとすると、利用者は心を乱して落ち着きを失うこともあります。

「こだわり」を程度に散りばめることがポイントでしょう。

高齢者の行動


若い人に比べて、単発作業における判断力は、加齢による影響が少ないと聞いたことがあります。

実際、介護現場でも、中高年のこみちよりも頭脳明晰な方がたくさんいます。

知識が豊富だったり、社会的な地位が高くて経験豊富な方だったりと、過去のエピソードを聞いてみれば「凄かった人」なのだと分かります。

そんな方を含めて、高齢者になると若い頃よりも「視野が狭くなる」ようです。

物理的な視野だけでなく、物事を考える際の「エリア」と同様です。

通常、「物事をシンプルに考える」というアドバイスがあるように、無駄に枝葉を広げて考え始めると収集がつかなくなって不安や動揺を集めます。

その意味でも、高齢者は若い頃と比較して物事の思考回路が狭まりやすく、結論までのステップが減少するようです。

我慢することが苦手となり、「すぐにしてください!」とか「待たされたから帰って来た」という話を聞きますが、「思ったらすぐ」が増えてきます。

介護現場でも、この「すぐ」に悩まされます。

「すぐにお茶を入れてください」

「ちょっと待ってね」

「待てません! すぐに! すぐに!」

「〇〇さん、わがまま言わないでください!!」

こんな攻防が介護現場では繰り返されています。

親世代の高齢者でも


「疲れているなら、休み休みすれば良い!」

仕事が休みの時など、久しぶりに実家に顔を出すと、物が散乱しています。

昔はそんなことがなかったのですが、「どこに置いたのか忘れてしまう」や、「片付ける手間が面倒」という意識が高まるからのようです。

そこで、散乱した物を代わりに片付けてしまうのは止めましょう。

物が見つからなくなり、むしろ迷惑行為だからです。

だからと言って、片付けを強要しても、なかなか行動に起こせません。

感覚的には、30分から1時間程度が一回の作業時間で、その後に同じくらいの休憩も必要です。

一回で全部するよりも、少しずつ作業を計画的に進めることがポイントなのです。

ところが、これまで勢いで仕事をしてきた人は、人が変わったように怠け者になることがあります。

膝が痛い、目が疲れるなど、何かと理由をつけて動きたがりません。

そんな傾向が情緒されないためにも、「一緒に計画する習慣」が大切なのです。

そして、自分がする時よりも何倍も時間が掛かりますが、「遅い!」とか「早く!」と急かしてはいけません。

施設で働く介護士にも2パターンいて、声掛けを増やして利用者に促すケースと、利用者から作業を奪い介護士が済ませんてしまうケースがあります。

奪ってしまえば簡単ですが、そのうち利用者はさらに運動機能が低下して寝たきり状態へと向かうのです。

一方で、まだ頑張る高齢者もいます。

簡単に済ませるべき状況でも、若い頃と同じくらいこなそうとして、疲労感を強めたり、作業後の散らかり具合が大変になっていたりします。

「もう少し抑えたら?」

そんな声掛けをしても、「こだわり」となって止めようとしません。

唯一の解決策が、代わりに「同じ作業」をしてあげることなのです。

愛犬の散歩をする場合、リードをつけて散歩すれば良いのではなく、時間は何分以上、用足しは何回以上、と「こだわり」があるのです。

「少しくらい少なくても良いんじゃないの?」

しかし、それを受け入れることが難しく頑に嫌がります。

最後には「だから任せられない!」と怒るほどです。

それだけ散歩に労力を使うなら部屋の片付けをと思う時も、「視野の狭まり」が影響するのか、「こだわり」だけが強く現れます。

「早くして!」

「しているでしょう!?」

そんなやり取りで高齢者はストレスを溜め、介助する家族も介護疲れに陥るのかも知れません。

認知機能がある程度低下すると、視野の狭まりもあって、こだわりが日常生活の一部になります。

しかし、そこに至るまでは「こだわり」が増すけれど、行動が伴わない状態になり、介助する家族にすると大変な時期かも知れません。

介護士として勤務する場合には別の仕事で気を紛らわせることもできるますが、自宅介護の場合にはずっと向き合うので、高齢者の心理を介護研修などで学んでもいいでしょう。