寄り添い方を見つけるには?

高齢者だからと言って特別なことはない!?


相手との距離を縮めるには、こちらに「敵意」がないことを伝えることから始まります。

そこで思いつくのは、「笑顔」なのです。

自然な笑顔であればあるほど、相手からも「敵意」を感じさせることはないでしょう。

特に注意したいのは、自分が思っているよりも「笑顔」が作れていないこと。

無表情だったり、つまらなそうな表情をしているものなのです。

そのためには、口角の端をしっかりと持ち上げるように意識して、顔全体を動かすように心がけましょう。

顔の筋肉を動かしていない人は、日ごろからストレッチしない人同様に、筋肉が柔軟性を失っていて、「笑顔」と分かっていてもできないものです。

相手に「敵意」を感じさせないためには、距離感がポイントです。

特に利用者の視界は狭く、正面だけということも少なくありません。

後ろや横から声を掛けても、思ったような反応が得られないのは当然なのです。

また、利用者の視線よりも下から距離を縮めることもポイントです。

視野の関係もありますが、上から見下ろされる感覚は「威圧」を感じやすく、「敵意」につながるからです。

慣れてしまえば、基本を無視しても利用者は心を開いてくれますが、「信頼関係」を感じとるまでは「基本」に従うのが無難でしょう。

これらの内容は、介護や医療だけでなく、接客業全体に言える基本だと思います。

例えば、営業マンが無表情ということは先ずあり得ませんし、「笑顔」ではないことをアピールポイントとするなら、とても高度な技術です。

高齢者と言っても、人によってライフスタイルも好みも異なります。

社会一般同様に、介護士の性格や特徴を見て心開いてくれることも少なくありません。

基本事項として、利用者も介護士に対して距離感を縮めようとしてくれます。

そこには、介護士自身の「人間性」が問われてくるでしょう。

カラオケを使ったレクリエーションで、70代80代の方が耳にした曲を介護士が歌えば、それもまた「人間性」をアピールすることになります。

高齢者にとって、歌を上手く歌うことはすべてのポイントではなく、共感のきっかけに過ぎません。

つまり、「その曲、知らない!」という態度を示すよりも、レクリエーションで使用する曲を介護士自身が覚えることが「寄り添い」のきっかけになるのです。

これは、営業マンがよく使うテクニックの1つで、「ゴルフ」や「お酒」、「子ども」「車」など、相手も関心を寄せやすい話題をある程度揃えておくことで、両者の距離感は縮まります。

意外に根強い話題としては、出身地や卒業校です。

特に同郷だったり、過去に近い場所で暮らしていたなど、地名や建物などの共通認識が心を開くきっかけになります。

いわば、寄り添いとは、ラジオのチューニングのようなもの。

相手からのアプローチがつかめない時は、ノイズしか聞こえて来ません。

しかし、介護士がアプローチ方法を変化させて相手からの信号を見つけられると、急に鮮明な声となって届きます。

現場経験のある人なら認知症の利用者が懸命に何か話してくれる状況に遭遇したことがあるでしょう。

その時に見せる利用者の表情はとても豊かです。

「何を言っているのか分からない!」という表情で接するよりも、相手の表情を真似しながら「そうなの?」「どうして?」といろんな投げかけをしてみましょう。

その際に特徴的な言葉が聞き取れたら、今度はその言葉から連想する「形容詞」をベースに投げかけてみます。

「魚屋でねぇ〜」

「美味しいねぇ」「サンマ好きですよ」「よく行きましたか?」

興味深いもので、ここには存在しない利用者だけが見ている景色を垣間見ることもできるからです。

ある利用者は施設に入所する以前、お店を営んでいたそうです。

その経験が利用者にあるので、来客からの注文を「店員である」介護士に教えくれます。

「キチンとしてね」

「メモしておきました」

周囲からすると二人が何をしているのか分からないかもしれませんが、利用者と介護士が「共通認識」で繋がったことに他なりません。

営業マンが営業成績を残せるか否かは、この「共通点」を見つける幅とスピード感です。

客が知りたがっていることを見過ごして、いつまでも世間話を続ければ、チャンスを失います。

かと言って、いきなり売り込みを始めれば、「結構です!」と拒絶されるでしょう。

介護の仕事では、他職種でも用いる技を幅広く必要とします。

そう考えると、介護の仕事は奥が深く、自分磨きにもなるでしょう。

この前、ある利用者との共通点が、その方の息子さんと同じ学校だったこと。

通っていた年代もコースも違うのですが、一気に心を開いてくれました。

さらに、好きな作家や小説なども寄り添い方の幅を広げるポイントです。

いずれにしても、すべての話題を網羅する必要はありませんが、いくつか自分の持ちネタを作ることで、アプローチのきっかけにしましょう。