中高年が考えるべき「介護」

中高年からの転職だからこそ向き合いたいこと


「介護」という言葉は、本当にさまざまな領域に跨っています。

介護士になる際、初任者研修などで学ぶのは、介護制度の成り立ちを始め、支援の方法や関連した知識などです。

ここに挙げた項目だけでもかなり幅広い分野で、「介護って奥が深いなぁ」と思うことでしょう。

特に中高年から介護の仕事を始める方には、もう一歩踏み込んだ視点に触れて欲しいと思います。

それは、高齢者だって生まれた時から老いていたわけではないこと。

そんなの当たり前だろうと言われるかもしれませんが、その当たり前が「介護」をより奥深いものにしてくれます。

有料老人ホームや特別養護老人ホームなど介護施設に入所するために、今まで住んで来た家を引き払った人も少なくないのです。

つまり、人が二十代三十代と過ごし、仕事にやりがいを感じて、中高年と呼ばれる年代に差し掛かり、さらには定年を目前とすることで、今後の老後生活を維持していくためにもライフスタイルを見直す時が来ます。

さらに言えば、まだ自分が判断できていた頃とは異なり、段々と事実を説明されても適切な判断を下せなくなって来ると、将来のためにもライフスタイルを見直す頃です。

その頃には、要介護認定もされるでしょうし、段々と目の前の視野が狭まるように感じるでしょう。

当初は自宅で配偶者や子どもたちが支援してくれると思っていたかも知れません。

しかし、子どもたちがそれぞれの家庭を持つ頃になれば、たとえ親子でも頼みづらい場合があります。

確かに親しき間柄なので、頼れば応じてくれるかも知れません。

そして、親世代としても自分たちの暮らしは自分たちで責任を持ちたちと思うのでしょう。

なぜに利用者は施設での暮らしに賭けたのか?


もしも、自宅暮らしにこだわる余り、不注意から失火によって他人の暮らしに迷惑を掛けてしまうと、後から取り直せないこともたくさんあります。

そんなリスクを考えれば、安全性の保たれた環境下で「介護」は活用されるべきです。

自宅暮らしに見切りをつけて、施設に入所するのはとても勇気がいることです。

だからこそ、利用者は、どこかで頑なほどのこだわりを持ちます。

ところが、介護士の中には、そんな利用者の態度を心よく思わない人も紛れています。

こだわる利用者にすれば、介護士から責められる根拠がわかりません。

我々中高年の介護士は、目の前にいる利用者をそのまま見るのではなく、その方の暮らしを見させていただくという姿勢が重要です。

そうでないと、利用者と介護士が心通わせられる機会がありません。

このように、「介護」にはさまざまな見方が存在していて、特に中高年の介護士ならば利用者の過去にも注目しましょう。

そして、どのような気持ちで施設を利用しているのかを理解すれば、寄り添い方にも変化が現れます。