介護の原点に立ち返る!?
目や耳が不自由になり、車を運転することができなくなったら、どんな風に生活スタイルが変化するでしょうか?
先ずは単純に行動範囲が狭くなるでしょう。
そして、生活に不可欠なスーパーマーケットや銀行、病院などがどれだけ近くにあるのかも重要です。
また、介護サービスを受けるのであれば、相談できる窓口も徒歩圏内にあると便利です。
そう考えた時に思いつくのが「サービス付き高齢者住宅」のような存在でしょう。
特別養護老人ホームや有料老人ホームのように、「住処」としての役割を起点に介護サービスを求めるのではなく、自身の暮らしにサービスを利用するような感覚です。
本来なら、地域社会が一丸となって、「〇〇さん、元気にしてる? これ作ったんだけど…」などと言ったコミュニケーションがあれば、少しくらい生活力が低下しても助け合って生きていくことができます。
しかし、共存には難しい一面もあって、限度を超えた「付き合い」にまで発展してしまうと、生活のし易さがむしろ低下してしまうでしょう。
つまり、介護施設であれば、どんなサービスをいくらで利用できるのかが明確なので、余分な気遣いも不要です。
都心暮らしのように、多種多様な生き方が絶妙な距離感で共存し、欲すればどこかに適したサービスを受けられるという場合には、「都市型」社会が便利です。
しかし、要介護3を過ぎると、望む暮らしぶりにも変化が現れ、「自分らしさ」以上に「当たり前の暮らし」を維持したいと考える状況になってきます。
「当たり前の暮らし」とは、生活に欠かせない食事や排せつ、入浴などを適切に受けられる状態です。
そのためには、室内である程度自由に動き回れることが必要です。
さらに、手順や記憶、計算もできないと困るでしょう。
加齢によって段々と機能の低下が見られると、それを補う工夫が求められます。
公的な介護サービスを筆頭に、地域社会で受けられる支援、または隣近所の住人からのサポートを含めて、見直すべきポイントがいくつも出てきます。
最寄り駅から徒歩3分の好立地!?
よく介護施設の紹介で使われるフレーズに、「好立地」や「看護士の待機」、「宅食サービス」などが挙げられます。
なぜなら、高齢者の暮らしで先ず気になるのは、支援を受けやすい環境でしょう。
駅から歩いて行ける距離なら、配偶者だけでなく、子どもや孫たちも気軽に訪ねて来られます。
また、健康状態の不安から、看護士といつでも連絡が取れると安心感につながります。
時々は自分でも料理をしたいけれど、必要な時には気軽に宅食サービスを受けられると日々の家事負担も軽減されるでしょう。
さらに言えば、地域交流があって、顔馴染みの住人たちと笑って過ごせる場所があると生活にハリが生まれます。
実は、これらのこと、以前の地域社会で当たり前に行われて来たものです。
社会が変化し合理化される中で、複数世帯の同居よりも核家族化が進み、介護もサービスとして受けるようになったのです。
「病院まで乗せて行くよ!」
そんな声掛けが生活の一部でしたが、介護士の誕生によって「職業」となりました。
ある意味で介護施設は、かつての「社会の姿」を再現しようとしています。
高齢者の行動範囲に合わせて、館内だけで多くのサービスや催しを受けられます。
そう考えた時、施設を建てるうえで、アピールするべきポイントも明確になって来ます。
一方で、限られた空間に以前の地域社会を再現するのですから、完成度を落とすしかない部分もあります。
例えば、庭先や農地を借りて行う「家庭菜園」で、季節の野菜を収穫して食べたりするのは、施設内だけで担うのは大変でしょう。
映画館や遊園地、紅葉の見える露天風呂なども、再現するのは困難かも知れません。
また、同じ食事でも、お気に入りの板前さんがいる店で、談笑しながら料理に舌鼓を打つというのも、案外とできないでしょう。
ライフスタイルは本当にさまざまで、暮らし方や生き方を一つにまとめることは難しいものです。
その意味では、どうしても介護施設ですべてを満たすことは出来ず、多くの方に満足してもらえる項目と、個別に対応できる項目とに分けて、施設なりのアピールポイントを整理しましょう。
もちろん、利用者の介護度や経済力も考慮しなければいけません。
なぜなら、必要不可欠な支援と豊かに暮らすための支援は基本的に異なるからです。
施設分譲にして、利用者に所有権を持たせられれば、入居に際して多額の一時金を受け取ることができます。
施設運営を賄う意味でも大きなポイントでしょう。
しかし、分譲化するには利便性の高い地域であることも不可欠です。
都市部でまとまった土地をいかにして手に入れられるのかも施設運営のポイントでしょう。
まとめ
地域社会を一つの介護施設で補うことは難しいはずです。
本来なら地域での取り組みが求められるのでしょう。
また、抱え込まないことでコストを抑えることもできます。
自宅での生活をできる限り維持するために、「介護」をある一部の者たちだけで解決するよりも、広くみんなで取り組めば個々の負担も最小限になるでしょう。
加齢による心身機能の低下を踏まえ、介護施設を増設するよりも、地域社会の活性化が求められます。
さらに言えば、高齢者介護だけでなく、少子化問題や人口減少など、長期的なサポートが欠かせない項目にしっかりとみんなで協力することが必要です。
介護施設の役割も二極化し、終の住処として安心して暮らせる場所となる一方で、自宅での生活に復帰して地域の中で自由に暮らせる場所を担います。
特に、さまざまな年代の人が安心して暮らせる社会を作ることを「介護」の原点にしてみるのもありでしょう。